「世界文化遺産を燃やした犯人は朝鮮半島人or在日朝鮮人」「普通の日本人ならやらないような半島人によるバチ当たりな寺神社放火」
首里城の火災に日本中が悲しみに包まれる中、SNS上に書き込まれたデマ。このような言説を含め、中国人や韓国人、あるいは政権を批判するメディアや言論人などに対しヘイトともいえる誹謗中傷を繰り返す人たちを「ネット右翼」、通称「ネトウヨ」と定義し、厳しい対応の必要性を求めるのが、自身も“元ネトウヨ”だという文筆家の古谷経衡氏だ。
11日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、古谷氏の議論をベースに、ネット右翼の問題とその対策について考えた。
■「ネット右翼」とは何なのか
まず、古谷氏の想定する「ネット右翼」について詳しくみていこう。
古谷氏は「世論調査をすると、中国や韓国については4~6割くらいの人が嫌っているという結果が出るが、それらの人が直ちにネット右翼だというわけではなく、“保守系言論人”と呼ばれている人たち、要するに歴史修正主義者によるデマと差別の塊のようなSNSや動画の意見を無批判にコピペし、拡散する存在がネット右翼だと考えている。彼らは“普通の日本人だ。右でも左でもない”と主張し、“ネトウヨ”と言われると怒り、“ネット保守”と言われると喜ぶ」と規定。
また、「2012~2013年にかけて独自に調査した結果」だとして、番組が街で取材をしたときに聞かれた「無職、メガネ、ハゲ、デブ、ムッチャ髪長い」といった人物像を否定、独自のネット右翼像を次のように描写する。
「彼らは後から知った“ネットde真実”を他人にも教えなければ日本が良くならないという、強烈な使命感でやっている。そして中国人、韓国人に対する人種差別的な発言を恒常的にしているというのも重要な点で、実際に韓国、中国に行っている人はほとんどいない。15年くらい前まではデブのワーキングプアが時間を持て余しているというイメージを持たれていたが、僕の会った範囲ではそういう人が全然いない」。
こうした見方に対し、ひろゆき氏は「高齢者の中には差別的な意識のないまま、国籍を一括りにして“何とか人”という言い方を日常的にしているもいる。子ども向けのアンパンマンも勧善懲悪だし、水戸黄門も勧善懲悪だが、外国人さえいなければ日本は夢の国になるんだと信じてしまっているという部分があると思う。だから八つ当たりというよりも、危機感を感じて、今の状況を良くしたい。そのために敵を倒す、戦うということなのではないか。そして、“正義”を主張して日本の足を引っ張っている人も多い気がする。貿易を盛んにした方が経済的には良くなるのに、韓国人の旅行客は来なくていい、というようなことをネット上に書いている」とコメント。
その上で、「中国や韓国に向かうのは、勝てると思っているからじゃないか。本当の右翼は独立を目指して、六本木にある米軍基地を還せなどとアメリカを相手にする。でもネット右翼はアメリカに勝てないことが分かっているので、自分よりも下にいこうとする。自民党が好きなのも、政権を持っていて強いから。正義とは別に、単に仲間がいる、多数派だから、ということでそういう思想になっている」とも話した。
夏野氏は「ネット右翼というのは自分を安全な場所に置いて“弱い者いじめ”をしている人だと思う。これが左の場合、政権と闘わないといけないが、“安倍総理はすばらしい。天皇陛下はすばらしい”と言いつつ、“悪いのは外にいる中国の人だ。韓国の人だ”というのは反撃が少ない。また、イギリスなどの移民排斥の運動とすごく似ていると思うのは、将来期待のある人は国を開いて富ませて、自分の生活を良くしようとする。一方で将来不安のある人は、海外の人がこれ以上来たら俺の仕事が取られると考えて防衛的になる。むしろ戦っている感じがせず、不満のはけ口にしているだけのように思う。そして、団塊の世代は圧倒的にリベラルが多いが、結構いい加減なことも言っているし、彼らがいい日本を作ってきたのか?という疑問と反動が、若者にネット右翼側にいく理屈を与えているような気がする」と話した。
そんなネット右翼の影響力について夏野氏は「こういう特集をしていて言うのもなんだけど、ネット右翼なんて大して力を持っていないんだから、取り上げること自体がバカバカしいことなのかもしれない。うちの奥さんも変わらず韓国ドラマを見ているし、韓国アーティストの日本での売上げもすごい」と話した。
箕輪厚介氏は「権力に寄るか権力を批判するかの違いだけで、ネット左翼=ネトサヨも根っこにある“心のマグマ”みたいなものは同じではないか。年収が多ければ勝ち組なわけではなくて、これから自分が伸びると思えなかったら不幸せだということだと思う。こんなことを言うと批判を浴びるだろうが、アイデンティティを感じられないとか、人生に充実感を得られていないといった不満のはけ口をリツイートなどの簡単な手段に求め、快感を得ていることには変わりないと思う。バカは差別するか陰謀論のどっちかだ。僕も炎上すると“ほら、安倍の犬が”言われる。本当に恥ずかしい、クソみたいな人間だということで終わりだ」とコメントした。
■「吐き気がするようなものが堂々と流通している」
実際、奈良県安堵町では11日、ヘイトスピーチを書き込んだとして増井敬史町議(61)が辞職勧告されている。増井町議のFacebookには「極悪非道の在日Korean。両足を牛にくくりつけて、股裂きの刑に」といった書きこみがなされていた。
番組が取材した、グッズ関連の会社を経営している佐藤さん(仮名、60)は、ネット右翼的な投稿や記事を毎日50回以上リツイートしている。「このバカさ加減をみんなに広めてやろうみたいな。ビジネスの中でも韓国絡みの仕事をするとろくなことがない。約束を破るわ、逃げるわというのが実際にあるので、どうも好きになれない」。さらに、「それまでタブーとされて表に出てこなかった在日特権みたいな話がネットで出てきて、韓国人・朝鮮人が怖いという、ピュアな日本人が感じていた“恐れ”が出てるんじゃないかなと」と主張した。ただし、リツイートした投稿が事実かどうかの確認はしていないという。「あ、これ韓国じゃんと思ったらリツイートするだけ」。
こうした状況を踏まえ、古谷氏はネット右翼的な言動に対する法的な規制の必要性を強く主張する。個人としても、該当するアカウントの凍結を目指して個別に通報するなどの運動を展開しているという。
「確かに5年くらい前にも“ネトウヨ黙殺論”はあったし、僕もそう思っていた。しかし現実には名誉毀損訴訟があり、法務省がヘイトスピーチ撲滅週間を実施し、ヘイトスピーチ対策法もできた。もう司法も行政も黙って放置しておくわけにはいかないという流れだ。ネット右翼は数としても大体200~250万人くらいいると推定していて、決して無視できない。今日は韓国、明日は中国、明後日は靖国、その次は東京裁判、その次は従軍慰安婦…と回転寿司のようにネタが回っているので、そのうち飽きて出ていってしまう人もいるが、それでも大気の循環のように何年も前の動画を見て、入ってくる人が同時にいる」。
さらに「書店で保守系雑誌を見てみと、“韓国人は嘘つき民族だ。中国人は5000年前から嘘つきだ”というような、吐き気がするようなものが堂々と流通しているし、新聞の広告にも堂々と載っている。そして高齢者がこれを読む。異常だと思うし、だからバカバカしくて、そういう業界とは縁を切ったこういうものが言論だとは私は一切認めない。本当の右翼はアジア主義者だったり、国粋主義者だったりする。それで言えば、私は今も右翼だ。ネット右翼はただの差別主義者だ。誰とは言わないが、与党の国会議員の中にもデマや差別的発言をしている。今は個別に名誉毀損なり侮辱罪でやっていくしかないのかもしれないが、ヘイトスピーチ対策法を発展させて、公の場で本邦出身以外の人に対するヘイトスピーチをした場合は罰を与えるということをしないといけない」と強調した。
一方、西村氏は「別にどんな政党、政治家が出てきてもいい。ただ、その時に人種差別だったり、ヘイトだったらダメだというだけの話だ。ただ、法律でやるのは難しいので、そういうのは恥ずかしいという文化を作っていくべきだ」と話す。「TwitterもFacebookも、アメリカの法律の下で運用されている会社だし、YouTubeの場合は広告媒体として価値が重要なので、広告主が逃げるから制限が強いだけ。日本人にできることは、“そういうことは恥ずかしい”という文化を作るくらいしかないと思う」。
三浦氏も「規制するとなると、どうやるんだ、どこまでやるんだ、というのことが問題になってくる。誰かが誰かの表現の自由をコントロールし始めてしまうと、あいちトリエンナーレ問題にように、それぞれが様々な尺度を適用してしまうし、ひいては言論の自由を狭めることにもつながってくる」と懸念点を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:”ネット右翼”とは?古谷経衡をゲストに迎え考える
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