今月7日、JR新宿駅で駅員に暴行したとして60歳男性が逮捕された。テレビで伝えられた男性の職業は「自称テレビディレクター」だった。この自称報道を受け、実際のテレビディレクターからは「ただでさえ怪しい仕事がさらに怪しくなった」「この自称に悪意すら覚える」など不満の声が上がっている。
日々のニュースにおいて、わざわざ自称をつけてまで職業を伝える必要はあるのか。かと思えば、「職業不詳」で済ませるケースも散見される。そもそもなぜ、「自称」という形での報道が行われるのか。テレビ朝日の元社会部記者でAbemaTV『Abema的ニュースショー』のプロデューサーを務める羽根哲哉氏は「あなたは誰? となったとき、警察は本人の供述だけで発表しているわけではない。免許証のような公的書類を確認したり、勤務先に問い合わせたりして、嘘を言っていないか確認している。自称がつくのは、それが出来ていないときだ」と説明する。
しかし、この自称には問題もある。先月27日、京都市東山区の路上で四条大宮に向かっていたバスの前に突如飛び出して停車させ、車体を蹴るなど走行を妨害した男。事件当時酒に酔っていたこの男は「止まった方が悪い」と話したというが、警察の調べに対して「自称京都大学8年生の男子大学生」を名乗っている。
これまでに数々の「自称」が報道されてきたが、数年前に窃盗の容疑で逮捕された男は、取り調べから法廷に至るまで人気歌手で俳優の「福山雅治」を名乗って通した。その男は「ぱっと思いついた名前だった。新聞などに名前が載るのが恥ずかしくて偽名を使った」と釈明したというが、最終的に所持品の製造番号などから身元が割り出されている。この「自称」報道について、街の人からは「ほんとかな? というのはある」「ちょっとやばそうな気がする」などの声が上がっている。
一連の問題について元ロイター記者で国際ジャーナリストの山田敏弘氏は「結局本人が何者か判明した時にはニュースになっていない。その結果、ネット上に自称だけ残ってしまうので、怪しさがある。海外では名前だけなので、自称をとって実名にすべきだ」と主張した。
▶映像/肩書「自称」報道に国際ジャーナリスト「実名報道を」
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