多数いる料理好きタレントの中でも、「料理芸人」として真っ先に名前が挙がってくるのが、ロバート・馬場裕之だ。小学生のころから食に対する興味関心が高く、こだわりの趣味として料理をしていたが、番組出演をきっかけにさらにレベルアップ。時折、テレビ番組で映し出される自宅のキッチンは、多種多様な調味料、調理器具で溢れている。「塩は何十種類かありますね。旅行に行ったら、お土産売り場で見るのは塩です」と、コレクターばりに集めている。芸人以上に料理人らしい馬場の「料理本気度」を聞いた。
馬場が食に興味を持ち始めたのは小学生のころ。とても純粋な「空腹」を満たすためだった。今でも、好きなものをお腹いっぱい食べるために料理をするのは、これがルーツかもしれない。
馬場 朝ご飯や給食だけじゃ足りなかったんですよね。間食しようにも、お小遣いはそんなにもらっていなかったし。だからお菓子を食べるというより、自分で食べ物を探していたんです。最初は本当につつじの蜜とかから始まって、むかごを取ってきたりして。ある日、家に大根があったから丸かじりしていたら、夜のおかず用だと母親に怒られて(笑)。氷を大量に食べても満足感がなくて。それで、のびる(ねぎの一種)を探してきて、茹でてしょう油をかけて食べたのが、最初の料理だと思います。
自宅でぬか漬けを作るような母親だったせいか、馬場少年にも料理心が芽生える土壌はあったようだ。今度は、母親が留守の間に、ある実験を始めた。
馬場 麻婆豆腐のパッケージの裏に書いてある材料とか見て、自分で勝手に配合して作ることもしましたね。実家は結構調味料とかストックしていたんですよ。今から30年ぐらい前に、豆板醤とかあんまり普及していなかった気がしますけど、うちにはありましたからね。それ使って、いろいろと料理はしました。
その後、相方である秋山竜次に誘われ、吉本総合芸能学院(NSC)東京校に入るため上京。デビュー、ブレイクした後も、料理は趣味として続けていた。テレビ番組の出演をきっかけに、仕事としての料理も始めたが、今でも唯一無二と言っていい大好きな趣味だ。何年もかけて買い揃えた大量に、数々の調理器具。効率を考えていくうちに、どんどん充実した。
馬場 塩は何十種類かありますね。旅行に行くと、ご当地のキーホルダーとか集める人がいるじゃないですか。ああいう感覚で塩を買うんですよ。沖縄行ったら沖縄の塩、離島に行ったら離島の塩。お土産売り場で見るのは、まず塩ですね。お気に入りは沖縄・屋我地島の塩です。
味の違いを細かく感じ分けているというわけでもないが、食事の度に塩を変えてみるというのが、実に楽しいそうだ。塩だけでなく、調理器具もコレクター。旅行カバンの中には帰りになると、決まって土産の調理器具も入っている。
お笑いにはほとんど関係ない料理だが、そのおかげで山本博、秋山竜次の2人を、お笑いファンとは違った層に見せられることがうれしい。また、お笑いの現場でも「こいつ、お笑いやってないんで」とツッコミを受けることで、笑いを取ることもできるようになった。
馬場 料理関連で相方と共演できたり、自分の番組に来てもらったり。還元できているというか、3人で料理関連の仕事ももらえているので。視聴者層も違いますからね。料理やっているからこそ、ふざけられることもありますから(笑)。
ある時期から、トレードマークであった緑色の髪をやめ、ピアスも外した。「もうしないですね。料理には絶対に合わないですから」と笑った馬場は、大好きな料理の話を最後まで笑顔で語り続けていた。