北村匠海と芳根京子がW主演声優を務めるアニメーション映画『ぼくらの7日間戦争』が12月13日(金)より全国公開する。本作の原作は1985年に刊行され、1988年には宮沢りえ主演で実写映画化もされた宗田理のベストセラー小説「ぼくらの七日間戦争」。北村は歴史マニアで学校では目立たない存在の鈴原守役を、芳根は守が片思いしている幼なじみの千代野綾役を演じる。大人たちとの“7日間の戦争”で大きな成長を遂げる少年少女を演じた二人に、本作への思いや、自身の子ども・学生時代について語ってもらった。
北村匠海、思春期の学生に「ちょっとだけ大人の僕らが手を差し伸べられたら」
ーーオファーが来たとき、脚本を読まれたときのお気持ちを教えてください。
北村:原作の小説は、学生のときに図書室にあって、すごく好きな作品だったんです。みんな読書感想文に書いたり、学校でも流行っていました。なので今回主演をやらせていただけると聞いたときは、昔好きだった小説の映画化に携われると思ってすごく嬉しかったです。同じように、ちょっと悶々とした学生時代を過ごしている思春期の学生さんたちに届けられたら嬉しい。脚本を読んでもそのように感じました。そんな子どもたちに向けて、ちょっとだけ大人の僕らが手を差し伸べられたらいいなと思います。
芳根:わたしは原作を読んだことがなかったのですが、今回映画をやらせてもらうにあたって、前作の実写版の方を拝見させていただきました。今回だったらSNS、実写版の映画だと校内暴力など、作品の作られた時代がすごく見えるな、と思いましたし、現代はこういう時代なんだと改めて感じました。そのときのリアルを描いている作品だなという印象です。
北村:その時代を切り取っている印象がありますよね。ここから先も長く愛されて、時代とともに新しいものが生まれるかもしれないですね。
ーーお二人が演じたキャラクターの魅力はどんなところだと思います?ご自身との共通点はありますか?
北村:守とは歴史が好きなところから一緒です。僕も学生時代は世界史を専攻していました。彼の気になる子を目の前にしたときにあたふたしちゃう感じとか、なんとなく自分が馴染めていない感じがする、というちょっとしたもやもやを抱えている感じは、僕も学生時代に経験したことがあるし、周りとは違う、孤立している自分を感じてしまう。それがこの映画の中で、7日間の戦争をしていく上で、素敵な仲間と出会って、自分を見つめたり、周りを見渡してみたりすることで、成長していく姿を演じられたのは嬉しかった。そう思うと自分と重なる部分は多いかもしれないです。理解できる部分が多かった。
芳根:みんな等身大の高校生で、この作品ではきっと誰もが通る悩みが描かれていると思う。綾が本音を言える仲間に出会えたことが、わたしはすごく嬉しい。私もそういう友達に出会えたことをきっかけに自分の世界が広がっていったという経験があります。なので、ちょっと年齢が上のお姉さんとして「よかったね」って微笑ましく見れました。7日間という期間は短いけど、彼らにとってはすごく大きな人生の7日間。それに立ち会えたことが嬉しく思いました。
芳根京子、初声優に四苦八苦「まず台本の読み方がわからない」
ーー声の演技をするにあたって準備したことや難しかったことはありますか?
北村:今回はプロの声優さんに混じってアフレコさせていただきました。僕らは固定のマイクがあったんですけど、皆さん4本のマイクで代わる代わる演じていました。一回に回すカットが長かった。
芳根:一回自分が遅れると、もうついていけないみたいな(笑)。わたしは台本を開いたときに、これまで見てきた台本とは違ったので、まず読み方がわからないというところから始まって、初心者もいいところで、台本の読み方から教えてもらいました。映像を見てると追いつけなくなっちゃうし、台本を見ててもずれちゃう。そういう初歩的なところからちゃんと教えていただいたので、不安をできるだけ解消でき、自信をもって本番に臨ませてもらえたと思います。あとはもう自主練。掴むまでは大変でした。掴んでくると、ちょっと楽しみながらできたのですが、前の段階のときは不安で「どこを見ていればいいでしょうか?」「いつ言えばいいですか?」くらいの感じでした(笑)。
ーー普段のお芝居との違いは?
北村:普段実写でする芝居よりも、多少オーバーにしています。何かに気づいたり、ため息をつくのも、声だけなので、普通にやったらすごくのっぺり感じてしまう。プロの声優さんの声を間近で聞きながら、現場で学びました。こんなに声出しているんだ、って間近で感じられました。普段僕らが実写の映画を撮るときは、僕らが絵を作らなきゃいけないんですけど、今回はもうできている。「どういう感情でどういう表情で言っている」という答えがすでにあるから、芝居するときとはアプローチが逆なんです。普段はこういう気持ちかなと想像して体で表現して言葉にするんですけど、(声優は)逆算しなければいけないというのが今回の発見で、難しかったです。
芳根:やはり体を動かしながら表現をするということに慣れてしまっているので、動かずに声だけでというのは、すごく繊細だなと思いました。言葉で伝えないと!と思うと、力んじゃう。そこは初心者にはすごく難しかったです。普段は、自分がメイクして衣装を着せてもらって、見た目から気持ちに入れる部分があるんですけど、今回はそれが全くないので、自分がどれだけ綾に寄り添えるか。もちろんお芝居で学んだことを活かせましたし、今後今回の現場で学んだことをお芝居の現場でも活かしたいとも思いました。すごくいい機会をいただけました。
芳根京子、北村匠海と初共演で「DISH//」のアルバムを購入
ーー劇中で綾が「遅れてきた反抗期だね」と言われるシーンがありましたが、お二人には反抗期はありましたか?どんな学生でしたか?
北村:表立ってはなかったです。ただ静かな反抗をしていました。中学生のとき、芸能活動をしていたので、毎週木曜に演技レッスンがあったんです。そこで帰りが遅くなるのに連絡しないとか。そういう静かな反抗です(笑)。
芳根:かわいい(笑)。
北村:ちょっと心配させる、みたいな(笑)。『ぼくらの7日間戦争』という作品で描かれている、子どもVS大人という気持ちは、すごくわかる。僕はそれを表立っては出せなかったんで、反抗期でちゃんと言葉にできる人たちは逆にすごいなと思っていました。
ーー今も落ち着いたイメージがあるのですが、子どもの頃からそうだったんですね。
北村:ませていたのかもしれません。大人ぶっていたところはありますね(笑)。
芳根:わたしも感情の揺れが少ないタイプで反抗期らしい反抗期はなかったです。小学生のころ日曜にサザエさんが始まると、明日からまた学校が始まるんだって思ってちょっとイライラしていたくらい(笑)。兄には立派な反抗期があって、喋らなくなっていました。そのときの親の辛そうな顔を見ていたので、それが反面教師になりました。わたしもあまりものを言えない子どもだったんですけど、中学生になって部活を始めたり、ちゃんと気持ちを伝えられるようになって、明るくなっていくと同時に、親ともどんどん仲良くなっていきました。
ーーお互いの印象はどのようなものでしたか?
北村:まっすぐで素敵な方だと思います。そして声がすごく綺麗。びっくりしました。僕はアニメーション映画が好きでよく観ているんですけど、『おおかみこどもの雨と雪』の宮崎あおいさんの声を聞いたときと同じくらいの衝撃を受けました。芳根さんの声はみなさん、褒めていました。本当に素敵です。
芳根:えぇ~!嬉しい!
北村:今回が初共演だったんですけど、実写のお仕事も一緒にやってみたいです。
芳根:今日でお会いするのが3回目とかで、まだ全然知らないんだろうなと思うんですけど、でも隣で聞いていて、「守が喋っている!」と思っていました。北村さんは多才な方だなという印象でしたし、ご一緒して、やはり器用に、監督に言われたことに対応してらっしゃる。素敵だなと思いました。あと……初めてご一緒するにあたって、アルバムを買いました。聴かせていただきました(笑)。
北村:すみません、なんか(照)。
芳根:素敵でした!
ーーこの機会に、お互いに聞きたいことはありますか?
芳根:えーっと……好きな食べ物はなんですか?
北村:(笑)回鍋肉が好きです。
芳根:回鍋肉!!!……新たな一面です。
北村:お休みの日は何をしてらっしゃるんですか?
芳根:お休みの日はいろんなことをしてるんですけど、必ず誰かに会います!
北村:一緒。
芳根:あら。本当ですか!?共通点を見つけました!
北村匠海、7日間の休みで行きたいのは名古屋のサウナ!?
ーー7日間の戦争、冒険を描いた作品ですが、お二人も過去にそういったことはありましたか?
北村:小学生の頃、サッカーの試合があって自転車で行ったんです。僕の両親は共働きだったので、友達のお父さんが面倒を見てくれていたのですが、その日は試合が終わってもお父さんの姿がなくて。自転車の鍵もお父さんが持っていたので、大雨の中、友達と自転車を引きずりながら道もわからないまま家に向かいました。海でも入ったのかってくらいビショビショになりました。途中で自転車屋を通り過ぎたときに、自転車屋のおじさんが「どうしたん!?」って鍵を壊してくれて、そこから漕いで、なんとか帰りました。なんとか辿り着いたら、顔面真っ白のお父さんが帰ってきて、初めて大人が怒られているのを見ました(笑)。コンビニで立ち読みしていたらしいです(笑)。
芳根:それはなかなかの冒険ですね!!
わたしは小さいとき人見知りだったんです。親から離れられなくて、児童館とかに行っても遊べない。行くのは楽しみにしていたらしいんですけど。歌いながら児童館に行くくせに、ついたら人と目を合わせようともしない。ボールが転がってきても見過ごすくらい、友達と遊ぶことができなかった。あまり覚えてないんですけど、当時の自分にとっては、きっとそういうことも全部戦争だったんだろうなと思います。
ーーお二人が今、7日間自由な時間をもらえるなら?
北村:四泊五日は旅行には行きたい。フィンランドに行きたいです。サウナに入りたい。サウナーなんです。
芳根:サウナー多いですね!私も最近通い始めました!
北村:名古屋の栄に日本で一番フィンランドのサウナに近いサウナがあるんですよ。
ーーお二人が今、7日間自由な時間をもらえるなら?
北村:四泊五日は旅行には行きたい。フィンランドに行きたいです。サウナに入りたい。サウナーなんです。
芳根:サウナー多いですね!私も最近通い始めました!
北村:名古屋の栄に日本で一番フィンランドのサウナに近いサウナがあるんですよ。
芳根:フィンランドのサウナって何ですか?
北村:サウナ室があって、そのあと雪山や湖に突っ込むような(笑)。フィンランドはめちゃくちゃ寒いからめちゃくちゃ気持ちいい。……なので、名古屋の栄に行きます。栄に1週間泊まって、手羽先食べて、朝サウナでも行きます(笑)。
芳根:めちゃくちゃ近くなった!(笑)わたしはやりたいことがいっぱいあるタイプなので、細かく刻むと思います。旅行に行きたいけど、それこそ箱根とかにして一泊二日とか。この日は誰と会う、この日は家族と会う、この日は自分の趣味に使う、とか、毎日違うことをして過ごしたいと思います。
北村:すごい充実するね!
ストーリー
いつもひとりで本ばかり読んでいる、鈴原守。片思いの相手は、お隣に住む幼馴染の千代野綾。しかし綾は、一週間後に議員である父親の都合で東京へ引っ越すことを迫られていた。「せめて、17歳の誕生日は、この街で迎えたかったな」。やり場のない綾の本音を聞き、守は思い切って告げる。「逃げましょう……っ!」。
綾の親友・山咲香織をはじめ、明るく人気者の緒形壮馬、ノリのいい阿久津紗希、秀才の本庄博人までもがこの逃避行に加わり、駆け落ちを夢見ていた守は拍子抜けするが、特別な夏の始まりには違いなかった。もはや観光施設にも使われていない古い石炭工場を秘密基地に、ただ7日間、大人から隠れるだけのバースデー・キャンプ。それは、少年たちの精一杯の反抗。だがその夜、工場に潜んでいたタイ人の子ども・マレットと出会ったことで、事態は想像もしなかった方向へ向かう。不法滞在で入国管理局に捕らわれかけていた所を間一髪助けると、はぐれた家族を探しているのだと、守たちに打ち明けた―。
2日目の朝、今度は武装した入国管理局の職員が、マレットを連れ去りにハンマーを振りかぶり工場へ突入してきた。
守は、仲間たちの協力のもと、敵の撃退作戦を決行する!
テキスト:堤茜子
写真:You Ishii