100万人が悩む「適応障害」、休むことを肯定し支え合う職場づくりを
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 5月以降、天皇陛下の即位に関連する行事など多くの公務に取り組まれてきた皇后・雅子さまが9日、56歳の誕生日を迎えられた。

 集まった人たちからのお祝いの声に笑顔で応えられていたが、そのご体調を心配する声もある。皇太子妃だった2004年には、前年より体調を崩されていたことについて、ストレスによる「適応障害」と診断され、以来、療養を続けられてこられた。

 今も続けられているという適応障害の療養。この1年の感想を綴った文書では、ご自身の体調について「陛下をお傍でお助けできますように健康の一層の快復に努めながら、皇后としての務めを果たし、陛下とご一緒に、国民の幸せに力を尽くしていくことができますよう努力してまいりたいと思っております」と触れられている。

 宮内庁の医師団は9日、「皇后陛下には、依然としてご快復の途上にあり、ご体調には波がおありです。そのため、大きい行事の後や行事が続かれた場合には、お疲れがしばらく残られることもあります」と現状を説明した上で、「即位に関する行事など、お勤めに取り組まれたからといって過剰な期待を持たれることは、今後のご快復にとって、かえって逆効果となり得る」としている。

100万人が悩む「適応障害」、休むことを肯定し支え合う職場づくりを
拡大する

 厚生労働省によると、適応障害とはストレスによって抑うつ気分や不安、体調不良など情緒面や行動面で障害が生じる病気だ。「行動面:暴飲暴食、無断欠席、無謀運転やけんかなど攻撃的な行動」「情緒面:憂鬱さ、不安感、焦燥感、怒り」といった徴候・症状があり、全国で100万人が悩んでいるといわれている。

 LITALICO社長室の鈴木悠平チーフ・エディターも、適応障害の当事者だ。ネットメディア編集長と営業マネージャーを兼務していた去年5月頃、体調を崩した。ストレスへの拒否反応から「オフィスに向かうだけで疲れる」「ミーティング前に動悸がする」「咳が出る」といったサインが表れるようになったのだ。

 「精神障害や発達障害を扱うメディアを担当していたこもあり、気をつけたほうがいいなと思っていたが、動悸が出るなど明らかな症状に自分でも気付くくらいになったので通院した。週末に副業で別の場に行った時や家族と過ごしている時には咳が出なかったので、原因はすぐに分かった。仕事が結構ハードだった時期だったので、ベースとして疲れていたと思うが、直接のトリガーは担当していたプロジェクトだ。色んな方々の間に立って調整することの難易度が高く、負荷がかかっていた」。

 適応障害と抑うつと診断を受けた鈴木氏は、すぐに上司や同僚に相談して業務を分散、仕事の負荷を減らした。さらに今年4月からは部署を移り、より働きやすい環境にいるという。「僕の場合、抑うつ症状も強く出ていたので抗うつ薬を処方され、今も寝る前に1錠飲んでいる。症状はだいぶ和らいできたが、生出演したことで、明日に疲れが残ってしまうかもしれない」。

100万人が悩む「適応障害」、休むことを肯定し支え合う職場づくりを
拡大する

 ZOZO執行役員の田端信太郎氏は「過去にこういった症状が出た部下を持ったことが何度もあるが、責任感が強く、真面目な人がなりやすかったりするので、“外れてゆっくり休め”と言うことで本人が落ち込むのではないかと感じ、難しかった。また、症状のことをどこまで共有するかも悩ましかった。知らない人からしたら、体調に波があって出社できないことも、“あの人なんなんですか”となってしまう」と明かす。

 鈴木氏は「人によって感じ方も違うので難しいが、僕が思うに、本人の様子をよく見る。“これが正解だ”ということで周りの人も焦るというよりは、“今自分にできることはある?”“今日はちょっと早く帰ったら?”みたいな、そういう関わり方でもいいと思う。日頃からの職場の文化作りだと思う。また、マネジメント側としては、本人が言っている報告だけでなく、客観的な日報などで、“この仕事の時だけすごくパフォーマンスが違う”など観察することが大切だ。僕のチームの場合、色々な事情を抱えているメンバーがいたので、出勤時に業務の予定だけでなく、今日の体調や気分を共有してもらっていた。結果、お互いにフォローし合うような文化ができていたので、僕自身も相談しやすかった」と話す。

 「たまたまミスマッチでしんどくなってしまったというところがあっただけで、仕事内容や一緒に働いている人たちのことはすごく好きだ。チームのスタッフが“悠平さん大丈夫ですよ。休んでいてください”と言ってくれて、すごく頼もしかったし、妻に“色々心配かけるかもしれないけど、周りにも相談しながらやっていこうと思う。なるべく休む”と報告すると、一言“はなまる”と返事が返ってきた。自分の状況を開示すること、休むということを肯定してくれたのですごく救われた。また、発症した後、noteに自分のことを書いた。すると大学の同級生から7、8年ぶりに“お前勇気あるな、実は自分もだ”と連絡をくれた。やはり、弱い人だと思われるのではないかと感じて、周囲に言ったり頼ったりすることにブレーキをかけてしまいがちだ」。

100万人が悩む「適応障害」、休むことを肯定し支え合う職場づくりを
拡大する

 エッセイストの小島慶子氏「私は2人目の子を産んだ後で不安障害という精神疾患になった。会社も理解をしてくれて、通院しながら仕事に復帰したが、中には“心が弱い人がなると思っていたので、小島がなるとは思わなかった。意外”みたいに言う人もいた。誰にでもなる可能性はあるというと驚かれた。悪気はないと思うが、言われると結構ショックだった。また、皇后さまについても、“今日は体調が良い”というような報道はやめるべきだ」とコメント。

100万人が悩む「適応障害」、休むことを肯定し支え合う職場づくりを
拡大する

 クリエイティブディレクターの三浦崇宏氏も「会社を経営している立場からすると、いかに周りが理解し、サポートしてあげられる体制を作るかが大切だと思った。“お前は大丈夫だろう?"など、良かれと思ってかけた言葉がプレッシャーになってしまうこともあると思う。鈴木さんについても、“意外だな”って思った人もいただろうが、それを表に出さずに、“休むあなたを肯定します”と支え合う環境が作れるといいなと思った。やはり外部の環境に影響される病気である以上、皇后さまについてこのように語ること自体、決していいことではないと思った」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:「適応障害」誰でもなり得る病気の実像

「適応障害」誰でもなり得る病気の実像
「適応障害」誰でもなり得る病気の実像
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(5枚)