お笑いコンビ、野性爆弾・くっきー!の快進撃が止まらない。くっきー!といえば、白く塗った顔に有名人の顔を描いた“白塗りモノマネ”をはじめとする独特のネタが人気を博し、Instagramで大物アーティストや人気俳優が絶賛するなど、瞬く間に話題に。2019年には画家として描いたアート5作品がニューヨークで約1100万円の値がつき、ロックバンド・ジェニーハイではベースを担当するなど、今も芸人だけでなく多岐に渡るジャンルで才能を発揮しているが、約22年間、彼が売れない時期を過ごしていた事実はあまり知られていない。
過激なネタで客やスタッフから反感を買っていた過去の反省を踏まえて、今の若手芸人に贈る、くっきー!流のアドバイスとは?
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――ご自身がブレイクするまで約22年間、過激なコントや芸風でファンやスタッフの反感を買ってしまったそうですね。
くっきー!:もし芸人を大きく2つに分けるとしたら、漫才師のような正統派と、僕やリットン調査団さんのようなマニアックな芸で勝負する、2つの流派があって。僕たち野性爆弾のようなコンビって後者で、売れるまでめちゃくちゃ苦労するんです。だから、芸人になってバチバチに売れたいんだったら、後輩には「芸風はちゃんと選んだほうがええよ」って言いたいですね。
僕らの流派って「売れないのが基本」と思うくらいでちょうどいい。この芸風で売れる奴なんて「あと何十年経っても(僕ら以外に)他に出てこないかもしれない」と僕が思っているくらいです。
――くっきー!さんの持ちネタの代表作といえば白塗りモノマネですが、その中で特に印象に残っている人はいますか。
くっきー!:コブクロの黒田さんですね。黒田さんの白塗りメイクをInstagramにあげたとき、とにかく反響が大きかったんです。しかも、その画像を黒田さんが自身のInstagramのアイコンに使ってくれて。ほんまに飛び跳ねるくらいうれしかった。僕の超主観ですが「モノマネを芸として認めてもらえたのかな」っていう実感がありました。
――1月6日放送の「しくじり先生 俺みたいになるな!!」では、くっきー!さんの過去の“しくじり”を振り返っていますが、収録を終えていかがですか?
くっきー!:僕が熱い話をしているとき、オードリー・若林が目をウルッとさせながら聞いてくれていましたね。収録もすごく楽しくやらせていただいて、予想以上にスタジオが盛り上がってうれしかったです。
――今回、“生徒役”として登場した次長課長・河本準一さんとは同期なんですね。
くっきー!:河本とはNSC(吉本総合芸能学院)に入所した当初から仲は良かったんです。NSCではまずグループごとに分かれていろいろやるんですが、河本はそのとき一緒のグループで。僕らの付き合いって実は長いんです。
――くっきー!さんと河本さんのミニコント、スタジオは大ウケでした。
くっきー!:芸人同士で昔からの仲だと、お互いどうしてもふざけたくてウズウズしちゃうんでしょうね(笑)。今回はウケたからいいかもしれませんが、たまに周りを置いていきがちにしてしまうこともあるので、自分でも悪い癖だなと思います。
今日も僕らがミニコントを始めたとき、一瞬変な静寂に包まれた瞬間があったじゃないですか? あれは、けっこうキツいです(笑)。
――収録では、くっきー!さんの数々の伝説(?)を振り返りましたが、師匠である宮川大助・花子さんのコラ画像を無断で作っているときはどんな気持ちだったのでしょうか?
くっきー!:コラ画像って、画的に師匠をいじるわけじゃないですか? そこで1番アカンのって、その師匠をいじったギャグで滑ることなんですよ。だから、弟子としては超真剣で。本気で笑いを取りにいくつもりでやっていました。
実は、体のサイズ感に対して「頭のデカさはこのくらいのパーセンテージでええかな?」って綿密に計算してるんですよ。師匠のコラ画像を作っているときは、数学に近いことをやっている気持ちでしたね。他にも、オール巨人師匠にバチギレされたり、平和ラッパ師匠に大嘘の相談でバチギレされたり。大先輩であるチャッソさんをいじったりしていましたが、滑るのだけはダメだと心に決めていました。
――大先輩である師匠をいじるのって、ハードルが高くないですか?
くっきー!:世間では「先輩や目上の人をいじらないほうがいい」っていう空気がきっとどの職業にもありますよね。少し大げさな言い方になってしまうんですが、芸の中で僕が師匠をいじったことによって、ある意味新しいポジションを開拓できたんじゃないのかなって思っていて。
若手芸人と大御所芸人の間って大きな壁があるんですよ。その今まで大きな壁があったところで、架け橋のような存在になれたらいいなって。僕のような存在が新しい扉を開けて、次にいかないことには、師匠も嫌やろうなと思うんです。
――くっきー!さんが“先輩愛”に溢れているのがよく分かりました。2019年12月に宮川花子さんが多発性骨髄腫(ガン化した細胞がさまざまな症状を引き起こす病気)を公表されましたが、花子さんにはお会いしましたか?
くっきー!:この前(※取材日は2019年12月中旬)花子師匠と仕事でお会いしたとき、車いすだったんですよ。だから「師匠、大丈夫?」って聞いたら「大丈夫。首いわした(痛めた)だけやから」って元気に振る舞ってはりましたよ。
もちろんめちゃくちゃ心配ですが、師匠は前も大きな病気をして、そこから復帰した強い方。僕は花子師匠は必ず復活すると信じています。それに、後輩から見ても師匠がへこんでいるところは想像できないですから。
(Text:近藤加奈子)