2020年1月より放送・配信開始となったアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、『マギレコ』)。原作となるアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか☆マギカ』)は、願いを叶えた代償として「魔法少女」となり、人知れず人類の敵と戦うことになった少女たちの希望と絶望を描いた物語で、劇中の衝撃的な展開が話題を呼び、2011年の放送当時から現在に至るまで根強い人気を誇っている。
ゲームに引き続き、アニメでも環いろは役を麻倉もも、七海やちよ役を雨宮天、由比鶴乃役を夏川椎菜が務める。3人が人気作『まどか☆マギカ』のイメージをどう受け止め、外伝『マギレコ』でどう表現したのか。第1話放送直前に話を聞いた。3人の口から揃って出てきたのは、『まどか☆マギカ』らしい、独特の“心地いい気持ち悪さ”だった。
――実際に出来上がった『マギレコ』のアニメをご覧になっていかがでしたか?
麻倉もも(以下、麻倉):最初に見た時には映像の美しさに驚くばかりでした。アフレコ段階ではどのような映像になるのか想像しきれていなかったんですけど、完成したアニメを見た瞬間に、これが『まどか☆マギカ』の世界観なんだとストンと腑に落ちたというか。
雨宮天(以下、雨宮):想像していたよりもずっとおどろおどろしく、『まどか☆マギカ』独特の気持ち悪い流れを組んだゾワゾワ感やドロドロ感が、一見何気ないようなシーンからも感じられて。
同時に、他の作品にはない心をモヤっとさせるような違和感や、常に何かが起こるのではないかというザワザワした感じにある種の嬉しさも覚えました。
――『まどか☆マギカ』特有の“心地のいい気持ち悪さ”というか。ファンとしては、あの世界観に「戻ってきたな」という感覚になるかもしれないですね。
夏川椎菜(以下、夏川):私も『まどか☆マギカ』を中学生の頃に見ていた時に感じていた“違和感が当たり前に存在する恐怖”を『マギレコ』の第1話から感じて。これぞ『まどか☆マギカ』であり、これぞシャフトさんの作品だなと思いました。
違和感の種類も、自分が普段の生活で感じるようなものとは質が違うというか。例えば、動くものがあったとして、それが明らかにおかしい動きをしているのだけど、登場人物や他の人はまったく意に介さず、当たり前のように生活をしている。その光景を見て、まるで自分が「異世界に迷い込んだのではないか?」と錯覚を起こすような。
でもその違和感や恐怖には、心地のいいある種の中毒性があるから、ずっと見ていたくなって。ひとつひとつの事象に「何か理由があるのではないか?」と考察をしたくなるんですけど、きっとそれは『まどか☆マギカ』の世界では当たり前のことで。逆にアフレコの段階で映像が完成してなかったことに助けられたのかなと。
もしもその違和感が私たち役者の目で分かってしまったら、キャラクターたちはそれを感じていないのにも関わらず、感情が乗ってしまうような気がして。
――強烈な世界観だからこそ、無意識的に役者がそれに引っ張られてしまうというか。他にアフレコで印象的だったエピソードや掛け合いはありますか?
麻倉:『まどか☆マギカ』の現場を第1話から知っているキュゥべえ役の加藤英美里さんがいらっしゃったので、それが心強かったですね。何よりも「キュゥべえだ……!」という感動が大きくて(笑)。
加藤さんご自身も数年ぶりにキュゥべえを演じるということで、音響監督さんと「当時のキュゥべえの声はもっと高かった」という私ではわからないようなところで微調整をされていて、すごいなぁと思っていました。
雨宮:私は梓みふゆ役の中原麻衣さんとの掛け合いが多かったんですけど、やちよとみふゆの会話は一度始まると結構長く続くシーンがあって。
みふゆはどこに気持ちの芯があるのかわからないような喋り方で、掴みどころがなく、余裕を感じさせるキャラクターなのですが、その一方で、やちよは必死になったり、動揺したり、どんどん追い詰められていくという対照的な描かれ方をされていて。その対比は印象深かったです。
夏川:私はやちよとの掛け合いが印象的でした。鶴乃としては、やちよのことを「師匠」と呼ぶくらいに彼女のことを慕っているんですけど、過去のことが原因でたまに冷たく当たられる時があって。そういう時に、鶴乃の表情がフッと変わるんです。そこに鶴乃の弱さが垣間見えるというか。
それはゲームでは見られなかった表情の変化や気持ちの動きだと思うので、やちよとのやり取りは鶴乃の内側を表現する上で大事なシーンだなと感じます。
――最後に、アニメを楽しみにされている皆さんへメッセージをお願いします。
麻倉:今回のアニメには、ゲームの大事なハイライトがギュッと詰め込まれているので、アニメで初めて『マギレコ』に触れる方は、ゲームをプレイしていただくことでより深い部分を楽しんでいただけますし、ゲームをプレイしていらっしゃる方は、「こんなことがあったな」とエピソードを振り返っていただけるかと思います。
映像も本当に素晴らしく、背景の隅々まで凝って作られているので、そういったところも含めてぜひ楽しんでください!
雨宮:ゲームの収録の時から様々な展開にドキドキハラハラしていましたが、今回アニメで実際に相手と掛け合いをすることで、同じセリフであっても、乗せられる気持ちの量が変わりました。
ゲームをプレイしていただいている皆さんには、より立体的にキャラクターのことを感じていただけると思いますので、OPテーマの「ごまかし」と共に楽しんでいただければ嬉しいです!
夏川:私もひとりの『まどか☆マギカ』ファンとして放送を楽しみにしていたのですが、『マギレコ』の第1話を見た時に「ずっと待ってた……!」という気持ちになったんです。
『まどか☆マギカ』の物語の続きを見たい、ずっとこの世界観に浸っていたいというあの頃の感覚が呼び起こされたので、『まどか☆マギカ』を楽しんでいらっしゃった方には必ず刺さる作品になっていると思います。
また、キャラクターの心の動きも今回絵がついたことで、ゲームよりも繊細に描かれています。そういったアニメでなければ見られない要素にもぜひご注目ください。よろしくお願いします!
インタビュー・文:吉野庫之介
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