1月23日より放送スタートするアニメ「BanG Dream! 3rd Season」では、女子高生バンド「Poppin'Party(:以下ポピパ)」が武道館のステージを目指す。お互い競い合う中で見えてくる。それぞれのキャラクターの夢に対する想い――。キャラクターたちの繊細な心情描写が第3期では楽しめそうだ。
まるで実在するような生き生きとしたキャラクターたちが、「BanG Dream!」プロジェクトの大きな魅力のひとつと言える。第2期に続き、「BanG Dream! 3rd Season」を手掛ける柿本広大監督が、キャストやスタッフが一丸となってキャラクターの魅力を高め合う舞台裏を明かした。
―制作発表会では、「第1期ではPoppin'Party結成、第2期ではPoppin'Partyの絆の深まる様子をお届けしましたが、第3期では、Poppin'Partyが夢のひとつを叶えるために努力する話を描く」とお話をされていました。
柿本 第3期もポピパの皆さんが主軸の物語です。相変わらず香澄が引っ張っていくんですが、メンバーそれぞれの夢への想いを描いていければなと思っています。このアニメはガルパやリアルバンドのトピックをサブテキスト的に入れ込みながら、さらに1話数につきシナリオを1.5本分くらい書いて頂いていて、それをガッと圧縮してまとめるという方法で作っているので、すごく内容が密になっています。今回は、RAISE A SUILEN(レイズアスイレン、以下:RAS)についてとか、今までのシリーズで宿題的に残っている要素に一度全部の決着をつけるつもりで作っているので、さらに濃密な内容になっていると思います。
―アニメで武道館を描くにあたり、現地に取材も行きましたか?
柿本 Roselia、RAS、ポピパの出演TOKYO MX presents「BanG Dream! 7th☆LIVE」 3DAYSライブのとき、運営スタッフの皆様に無理を言って日本武道館の中をいろいろ見せてもらいました。観客が誰もいないステージにも立たせて頂いたりもしてみて…。考えてみたら、僕は日本武道館のステージに立った経験があるんですね(笑)。実際は取材ということでリフトの仕組みとか、アンプの位置などばかりチェックしていましたが(笑)。
―「BanG Dream!」は、漫画や小説、スマートフォン向けゲーム、リアルライブとさまざまな展開がされているメディアミックスプロジェクトです。大型プロジェクトの一貫としてアニメを制作する面白さはどこですか?
柿本 多くの作品では、アニメや漫画など主導するところに他が合わせる形でメディアミックスが行われるように思います。一方、バンドリ!ではチームごとのこまめな意見交換によって、いろんなアイデアがいろんなところから出てきて実現されるんです。たとえば、アニメで描ききれなかった部分をゲームの方で扱って頂いたり、、リアルバンドのライブを生かしてキャラクターの振り付けが決まったり……。キャストの方々の人柄をキャラクターにフィードバックさせるようなこともあります。
―キャストの人柄をキャラクターにフィードバックする、とは?
柿本 例えば、マスキングは最初もっと不良っぽいキャラクターとして作っていたりしています。でもマスキング役を演じる夏芽さんとキャラの感じを打ち合わせていく中で、「夏芽さんは、お話する前は金髪でドラムもすごくてカッコいい印象だったのに、話してみるとえらく可愛いことしか言わない」ということが面白く感じて、マスキングも強面だけど可愛らしい子になっていきました(笑)。レイヤ役を演じるRaychellさんも、ライブ前におにぎりを握ってきたりするというエピソードを聞いたり、ファンから「RASの母」と呼ばれていると聞きまして、もともと孤高の超絶ボーカリストというイメージだったところに「すごく頼れる」とか「実は面倒見がいい」といった要素が加わりました。
逆にパレオ役を演じる倉知玲鳳さんは、キャラクターに没入するタイプの役者さんなので、あえてパレオを極端なキャラ造詣にすることで、倉知さんにガッと入り込んでいただくのが面白いんじゃないかと考えました。チュチュが帰国子女というのも、紡木吏佐さんが英語堪能だから生まれた設定なんです。物語の上ではトラブルメーカーっぽい立ち位置になりがちなチュチュですが、紡木さんの声が入ることによって、13歳相当の子供っぽさと、子供離れしたゆるぎない信念を併せ持つ子になってくれて、キャラクターとしても一筋縄ではいかない、面白い形になったと思います。
―気づいたらニヤリとする設定ですね。
柿本 キャストの方の話でいうと、湊友希那役の相羽あいなさんは自分で振り付けを考えて、その参考動画まで撮影して提供してくれました。 紡木さんも振り付けを考えてくれましたし、ここまでいろいろな部門の方々がモチベーション高く協力してくれる企画というのは、本当に幸福だなと思います。
―「BanG Dream!」というプロジェクトに多くの関係者が真摯に向き合っている理由はどこにあると考えていますか?
柿本 アニメに関して言えば、できるだけ皆さんのキャラクターへの思いやアイデアは実現するように意識しているので、やりがいを持って協力していただけるのかもしれません。ですが、それ以前に全員がキャラクターに対する認識をブレずに共有していることが大きいんじゃないかと思っています。作品やキャラクターのことを真剣に考えた上でのアイデアが、アニメの血肉になっているんです。
―いろいろなアイデアをフィードバックさせていく、アニメの制作現場もライブ感がありますね。
柿本 それは3DCGだからこそ可能な部分もあるのかもしれません。手描きアニメと比較すると3DCGはスタッフの人数もミニマムですし、あとからの変更も比較的ききやすい……って言うと、他のスタッフから怒られちゃうかもしれませんが(笑)。でも「作品の為に臨機応変な対応ができるように、常にかかとを上げて待機している」みたいな空気はスタッフのみなさんからいつも感じています。
―なるほど。他にバンドリ!の現場で共通しているマインドのようなものはありますか?
柿本 繰り返しになってしまいますが、やはり音楽とかゲームとか各部門のスタッフ、キャストの方々の全員がキャラクターの人格をしっかり理解している。その共有度が高い現場だと感じます。様々な現場の大勢の人々をキャラクターたちが繋いでいる印象ですね。「キャラクターたちが実在するように扱っている」と言うと変かもしれませんが……。
―取材冒頭で柿本監督が「ポピパの皆さん」と発言しているのが印象的でした。監督にとって彼女たちは本当にリアルな存在なんだなと。
柿本 そうなんです、はい(笑)。いちキャラクターというよりも、“演者さん”を魅力的に見せるという気持ちで制作しているかもしれません。
【原田イチボ@HEW】
(C)BanG Dream! Project