今月13日、タレントのつるの剛士が「#保育士免許取得への道」として自身のツイッターに投稿した画像。そこには保育士資格を取得するための「保育士試験」のテキストや問題集が映っていた。
ところが翌日、自分には受験資格がないことが判明したつるのは、「5児父親、ウルトラマン変身の資格、チャギントンお兄さん歴10年、すくすく子育て司会歴3年、育休取得経験2回、それでも1991年3月31日以降の高卒者は受験資格がないのか」と嘆きのツイート。「ただでさえ保育士不足なのに」「もっともっと個々のスキルを活かせて皆が幅広く活躍できる社会が理想だなあ」と訴え、17日、通信制の短大に通うことを宣言した。
■「試験制度に違和感がある」
21日のAbemaTV『AbemaPrime』に生出演したつるのは「住んでいる神奈川県藤沢市は環境に恵まれているし、自分のブレーンにはプロフェッショナルなスキルを持っている方もいる。そこで少子化が叫ばれている昨今、ちょっとでも力になりたいと思い、園を立ち上げられたらいいなと思った。作るだけなら保育士資格は要らないが、せっかくなので自分も勉強して保育士になれれば、その分だけ見られる子どもの人数も増える。だからチャレンジしようと思った。もちろんウルトラマンの話などは冗談で、ネットニュースに取り上げられたことで話が大きくなってしまったが、通信制の短大を卒業すれば幼稚園教諭二種と保育士資格がいただける。3年かかるが、勉強する」と話す。
一方、保育士試験の受験資格は、大学・短大を卒業していること、高校卒業でも保育科ではなかった場合は保育施設での2年以上・2880時間以上の実務経験が必要となる。つるのが1994年に高校を卒業する3年前に変更された基準だった。また、合格率は2016年では25.78%、2017年では21.60%、2018年では19.74%となっており、決して簡単なものではないようだ。「妻は1993年に服飾系の専門学校を卒業しているが、学校教育法に基づいた学校なので、特別な勉強をしていなくても受験資格がある。保育の専門的な勉強をしていない大卒も同様だ。僕はそこに違和感がある」。
今回の問題を聞いた現役の保育士たちからは「私の周りにも頑張って働いて実務経験を得ようとしている方がいる」「大学を卒業していない方が保育士になりたいと思った時にぶち当たる壁の一つだろうなと思う」「育児経験もあるし、子ども関連のイベントにもたくさん出ているから、普通の人よりもすごい保育士になりそう」と理解を示す声もある一方で、「もうちょっと難易度を上げた方がいいのではないかという話をしたこともある」「育児と保育は違う」「保育士は命を預かる仕事なのに保育士を軽視している」「保育士不足は受験資格の問題ではなく待遇の問題」という意見も見られる。
また、子どもを預けている親たちの中からも、「やっぱり基礎的なところは勉強してきてから来てもらいたい。経験がもちろん豊富な人にはいてもらいたいとは思うが、やはり基礎があってこそだと思う」(乳児・11カ月の母、30代)という声が聞かれた。
ツイッターのフォロワー数が約50万に上る現役保育士のてぃ先生は「難しい問題だが、社会的評価というか、預ける側の安心感という意味で、大卒や短大卒の方を評価する人も大勢いる。また、プロとして対価をいただく仕事で、子育てとは責任の大きさが違う。例えば、ご家庭の中で“こんな子どもに育てたいよね”という話はしたとしても、“3月の誕生日までにこれができるようにしよう”“これができるためにこれをやろう”というような計画を組むことはないのではないかその点、やはり保育士はそれぞれの成長や発達を理解し、さらに促すための計画を年間、月案、週案、日案に下ろし、それに則って遊ばせている。ただ単に遊んでいるだけの仕事ということは大きな誤解で、そこが世間一般の皆さんに認知されていない」と話す。
その上でてぃ先生は「受験資格そのものは緩和してもいいと思う」との見方を示す。「逆に言えば、合格率の割に保育士の養成学校を卒業すれば保育士になれてしまうという部分がある。僕は保育士養成学校で資格を取ったが、授業中は僕も周りも寝ていたし、入るのも卒業するのも難しいということはない。その状況が果たして正しいのかという問題はある」と指摘した。
「弁護士ドットコム」GMの田上嘉一弁護士は「司法試験の場合、大学を出ていない場合はもうひとつ試験を受けなければならないが、そこを突破すれば二次試験が受けられるというようになっているので、同様の仕組みが保育士にもできないだろうか。さらに言うと、大抵の資格はペーパー試験を受け、その後に実技だ。会計士や裁判官のように、試験を先に受けて“保育士補”のような形になり、その“補が”取れるのに2年間実務を要するという方がリスクも少なく、意味があるのではないか」と指摘した。
■試験にハードルがある一方、“潜在保育士”の問題も…
保育の現場に目を向ければ、保育士資格を持っていながらも保育士としては働いていない、あるいは辞めてしまった“潜在保育士”の問題もある。保育士の勤務者数はほぼ横ばいなのに対し、この潜在保育士は増加傾向にあり、2016年時点で登録者数139万人に対し、勤務者数は45万人、潜在保育士の数は93万人に上る。
また、保育士による事件も報じられている。福岡県宗像市の認可保育園では副園長が園児の頬を叩く、トイレで背中を押して転倒させてケガをさせたなどとして逮捕された事件があった。神奈川県横浜市の認可外保育施設では、複数の園児に暴力をふるった男性保育士が論旨解雇に、山口県下関市の認可保育園では、複数の保育士らが園児を叩くなど体罰を行い、市が臨時監査に入るケースも起きている。
2018年度の東京都保育士実態調査によれば、保育士を辞めた理由(複数回答)では(1)職場の人間関係(33.5%)、(2)給料が安い(29.2%)、(3)仕事量が多い(27.7%)、(4)労働時間が長い(24.9%)、(5)妊娠・出産(22.3%)となっている。
てぃ先生は「せっかく保育士になっても1年も経たずに辞めてしまうことはざらにある。だから保育士を増やすよりも保育士がいかに辞めないかという方向を考えないといくら入れても意味がない。“先輩の姿を見て覚えなさい”というスタンスなので、何がわからないのかもわからないまま2年目を迎えたり、ノートや計画表など基本的に手書き、修正テープを使ってはいけなかったりと、特に若い先生たちは非効率的な部分に納得がいっていないということもある。職員間のいじめなど、保育とは関係のない部分で、マネジメントのスキルを持った人を置かなければ解決しないと感じる問題もある」と実情を訴えた。
つるのは「これまで保育士の方々と雑誌の対談などでお話させていただく機会があり、様々な現状、難しさなどについては何となく知っているつもりだった。保育士さんの待遇や潜在保育士さんの問題についても知っていた。それでも僕の今回のツイートで、やはり保育の現場というのは大変なお仕事だということを、皆さんの熱のこもったコメントで気づけたので、いい機会になった。これから何ができるか模索していきたい。とにかく、育休も含めて、子どもへの投資は絶対に将来につながるということ。その中で自分に何か変えられるようなことがあれば」と想いを語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:「保育士になりたい」つるの剛士が激白
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