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 「マジンガーZ」の地下格納庫兼プールの見積もりを本気で作り、コンテンツとして公開する。実在の企業・前田建設工業で広報グループが取り組んだ実話を映画化。突拍子もない話に、最初は冷めていたドイ(高杉真宙)ら社員が、やがて日本の建設の技術力の高さを知り、次第に社会人の本気を見せる。そんな物語を牽引するのが、最初に「『マジンガーZ』の格納庫を作っちゃおう!」と言い出すグループリーダーのアサガワだ。部下たちを巻き込んでいくハイテンションな上司・アサガワを演じたのは、TVドラマ「G線上のあなたと私」での演技も好評のおぎやはぎ小木博明。高杉真宙、岸井ゆきの上地雄輔、本多力らが集った現場の雰囲気などを聞いた。

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――『前田建設ファンタジー営業部』は実話で、書籍化もされています。このお話はご存知でしたか?

小木:知らなかったです。ただ、架空の建築物の見積もりを出すという内容を聞いて、おもしろいなと思いました。で、お話をもらったとき、いろいろ調べたんです。前田建設って、でっかい会社なんですよね。国内でダムも作ったり、海外で、たとえばベトナムのホーチミンで地下鉄を手がけたり。これは俺だけが知ってるんですけどね(笑)。それは冗談だとして、とにかく「こんなところでもやっているんだ!」と思いました。 

――お仕事前には、深く下調べをするタイプなんですか?

小木:仕事関係なく、興味があっていろいろ調べたんです。まず、『前田建設ファンタジー営業部』とタイトルだけ聞くと、意味がわからないじゃないですか。それから、「アニメに出てくる建築物を受注したという設定で予算を出す」プロモーション内容を知り、お金があるところなんだろうな、とか思いながらも(笑)、 この会社は他に何をやっているんだろう? といろいろ調べたわけですね。

――最初に脚本を読まれたときはいかがでしたか?

小木:ああ、おもしろいなーと。このプロジェクトを立ち上げた人の熱量もすごいけれど、彼らの熱意に負けて、社内の違う部署の人や、社外の人も協力してくれるんですよ。

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――アサガワたちは、掘削専門のヤマダ(町田啓太)や機械グループのベテラン社員フワ(六角精児)などの社内の技術畑の人たちはもちろん、社外の人たちの協力を仰ぐんですよね。他社のキャストも高橋努さん、濱田マリさん、鶴見辰吾さんと豪華でした。

小木:そうそう。いろんな人が協力してくれる。そこがいちばん重要な部分で、感動的だと思うんです。好きなんですよね、実話でこういう話。 

――小木さんは、実話がお好きと聞きました。どういうところがお好きですか?

小木:理想は「ドラえもん」の映画。実話じゃないんだけど(笑)。 「ドラえもん」の映画って、もともと仲が悪かったキャラクター同士が仲よくなるじゃないですか。そういう実話が好きですね。まさにこの作品がそうですよね。仲が悪いというわけじゃないけど、言うなればライバル関係にある他社の人も協力してくれる。後半に向けてのその展開がいいですよね。目的に向けて、ひとつになったときがやっぱり楽しいんです。しかも、実話ですからね。おもしろさに一個乗るものがあります。

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――小木さん演じるアサガワはテンションが高い役です。小木さんはアサガワのモデルになった前田建設の広報グループ長・岩坂照之さんにもお会いされたと聞きました。演技への影響はあるのでしょうか?

小木:影響はまったく受けてないですね。岩坂さんは、すごく物腰が柔らかい親切な方でした。素の状態でお会いしていますし、お仕事されているときにどうかはわからないんですが…。僕が演じるアサガワのテンションが高いのは、僕や監督の勝手なイメージです。みんなを巻き添えにして連れてくる、そんな役どころです。

――こういったハイテンションな役は演じやすいですか? それとも難しいですか?

小木:難しいのかな、どうなんだろう。この作品を手がける英(勉)監督とは、以前、コントバラエティ「SICKS~みんながみんな、何かの病気~」(テレビ東京、以下、「SICKS」)でご一緒しました。そこでの僕の役は、テンションが高くて熱血でどうしようもないテレビディレクターだったんですよ。今どきありえないようなパワハラなディレクター。その役のイメージで、今回、アサガワ役を僕に依頼してくれているのかなと思って、テンション高めにいきました。

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――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

小木:現場はもう…初日は最悪ですよ(笑)。みんなあまり仕事をしたことがないメンバーなんです。上地君はバラエティ番組によく出ているけれど、そんなに一緒になったことがなくて、2言、3言ぐらいしかしゃべったことがないんじゃないかな。(岸井)ゆきのちゃんは「SICKS」で一緒だったけれど、同じシーンをやることはほとんどなかった。本多(力)君とは、この作品と同じく上田(誠)さん脚本の「雨天中止ナイン」(テレビ東京)でちょっと絡んだくらい。そのうえ、みんな人見知りでね。映画って、クランクイン前に神社にお参りに行くんですよ。お参りする前、ちょっと早く着いたら、知らない人たちが黙って下を向いて座っていて、誰もしゃべらない。その後、本読みがあったけれど、そこでも「じゃあ、現場でよろしくお願いします」って終わって。

――最初は皆さん硬くなってしまうんですね。そういったことは多いんでしょうか。

小木:「SICKS」みたいなコント作品だと、お笑い芸人が中心で、そこに役者さんが何人か出演するという感じですよね。僕にとってはちょっとしたホームグラウンドなんです。ただ、映画やドラマでは、完全にアウェイだから。俺も人見知りするしね…。

――そのアウェイな雰囲気はどこかで打破されたのでしょうか?

小木:初日もほとんど誰もしゃべらなかったなあ…。それで、さすがに上地君が痺れを切らしたんです。「何、この空気!?」って。「小木さんは年上なんだから、こういうところはリードしないとダメだよ。しゃべりづらいんだから、小木さんから行かないと!」って。上地君はおバカタレントと呼ばれているだけあって、やっぱり明るいんですよね。僕、48歳なんですけど、自分が年上という感覚がないんです。ついつい忘れちゃうんですよね。自分から勇気を出して話しかけて、上地君が間に入って場を盛り上げてくれて…。2日目ぐらいからは、和気あいあいになりました。全部、上地君のおかげですよね。

――どうやって話しかけたんでしょう?

小木:「次、何のシーンだっけ?」とか、「今、押してる?」とか。いちばん話しかけやすい本多君から打開して、じょじょに輪を広げていきました。

撮影場所もよかったんですよね。撮影のほとんどは、実際の前田建設のオフィスで行われました。会社だから、楽屋がないんです。だから、みんな同じ場所にいなきゃいけない。撮影初日はみんなちょっと距離を置いて座っていたけれど、2日目からは固まって座るようになりました。そこからは、空き時間に俺の練習に付き合ってもらったりして、仲よくなっていきました。楽屋があるスタジオでの撮影だったら、みんな閉じこもっちゃうから…おしまいですよ。

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――作品は、「うちの技術でマジンガーの格納庫を作っちゃおう!」とアサガワがみんなを巻き込むテンポがよいシーンから始まります。あのシーンも最初のほうで撮影したのでしょうか?

小木:最初のシーンは、撮影が始まって何日か経った後に行ってくれたんです。声がバッと出ていて、テンション高いでしょう。監督も考えてくれたんでしょうね。みんなと輪ができて、コミュニケーションが取れた後だから、やりやすかったです。撮影の最初のほうだったら、おどおどしながらやっていたと思います。ちっちゃい声でね。

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――「フィクションに出てくるものを実際に作るとしたら」という映画の内容にちなみ、小木さんが実際に作ってみたいものを教えてください。

小木:なんだろう…。何を考えても「ドラえもん」の道具っぽくなってしまう。「どこでもドア」とか。部屋にあったらいいですよね。でも、飛行機に乗るのも好きだからね。ああいう面倒くささがないと、旅行も楽しくないしさ…。なんだろうな…手袋、手袋に何かあってほしいな。

――手袋に機能をプラスするということでしょうか?

小木:そうです。「この手袋をはめれば、絶対寒くない!」みたいな機能があるといいですよね。夏用のTシャツを着ていても、その手袋をしていれば真冬でも寒くないんですよ。そうしたら、冬に南国へ行くときも、夏の洋服で行けるんですよ(笑)!  

――たしかに、手袋を外すだけで南国仕様になりますね! この映画を小木さんと同年代の方におすすめするとしたら?

小木:会社にちょっと疲れたり、夢をなくしたり、やる気をなくしていたり…。いろんな人がいると思うんです。先が見えないと思っている方でも、ひとつ何か好きなものを見つけて打ち込んでいけば、おもしろくなってくるかもしれない。まわりも賛同して、会社内でおもしろい動きができるのかもしれない。そんな気持ちにさせてくれる作品です。サラリーマンの方も、入社したときは、何か夢をもっていたはず。そういう初心を忘れないでいてほしいですよね。俺も映画の撮影が始まるときは、ちょっとめんどうくさいと思いながら現場に行くわけです。でも、やっていくうちにどんどんハマって、おもしろくなってくる。みんなと作品を作っていくうちに、 どんどん絆も深まって、最終的には撮影が終わることが寂しくなってくるわけじゃないですか。そして、最後にはこうやって作品ができあがる。いい仕事だなと思うわけです。最初はみんなめんどうくさいんですよ。きっと英監督だってめんどうくさかったはず(笑)。この作品が、何かを始めるきっかけのひとつになれればいいですよね。

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ストーリー

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アニメの世界から発注を受けたという設定で、「マジンガーZ」の地下格納庫兼プールの建設設計と見積もりを本気で作る――。ダム、トンネルなどを作ってきた実在の企業・前田建設工業での実話を映画化。

ある日、前田建設広報グループのドイ(高杉真宙)は、「うちの技術で、『マジンガーZ』の格納庫を作っちゃおう!」と上司のアサガワ(小木博明)から無茶ぶりされる。当初、グループ内で乗り気だったのはアニメ好きなチカダ(本多力)のみ。冷静でドライなドイ、やる気がないエモト(岸井ゆきの)、優柔不断なベッショ(上地雄介)は、戸惑いながらも「架空の建造物の見積もりを作る」無謀なプロジェクトに取り組むことに。やがて、土質担当のヤマダ(町田啓太)、機械グループ担当部長のフワ(六角精児)をはじめ、社内外の協力者が現われ、プロジェクトは熱を帯びていく。

(c)前田建設/Team F (c)ダイナミック企画・東映アニメーション

テキスト:仲川僚子

写真:mayuko yamaguchi

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