キャラクターとリアルライブがリンクするメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!」(以下、バンドリ!)のアニメ第3期「BanG Dream! 3rd Season」が好評放送中だ。作中に登場する多種多様な楽曲を手がける音楽クリエイター集団「Elements Garden(エレメンツ ガーデン)」の中心人物として足かけ5年にわたり「バンドリ!」と共に歩んできた音楽家の上松範康氏に、第3期にかける思いを聞いた。
―改めて「バンドリ!」に関わるようになったきっかけを教えてください
上松 「ブシロード」の木谷(高明)さんから「音楽が要になる企画があるから、総合プロデュースをしていただけないか」と声をかけていただいたのが始まりでした。木谷さんとは以前から付き合いがあったんですが、そのときから「Elements Garden」を非常に高く評価していただいていたんです。
ちょうどその頃、僕自身が原作を務めるコンテンツが大きくなり始めていて、音楽だけをプロデュースしているコンテンツが少なかったんですね。そんな状況で音楽制作者としての上松を信頼してくださったのがとても嬉しかったので、その気持ちを絶対に形にしようと「バンドリ!」の音楽に関わらせていただくことになりました。とはいえ最初は木谷さんと僕しかいない状況だったんですが(笑)。
実はその頃、経営者としての仕事の割合がとても増えてきていて、作曲に費やせる時間が少なくなっていたんです。でも「バンドリ!」に携わるようになって、自分の作家としての部分が「Elements Garden」の一部としてすごく大事だと会社全体で改めて認識して、今は曲を書くことに集中させてもらっているのがすごくありがたいなと思っています。「バンドリ!」は自分を作家に戻してくれた作品ですね。この効果はまさに第3期から発揮されると思います。
―音楽と女の子を組み合わせたコンテンツはたくさんあります。その中で「バンドリ!」の強さはどのような部分だとお考えですか?
上松 ファンとスタッフの距離が一体化していて、すでに「ONE TEAM」になっているところが「バンドリ!」の強さだと思っています。例えばスマホ向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」でお知らせを出した時、ツイッターに「運営さん休んで」とよく書き込まれるんですが、これが他のコンテンツと全然違うところかなと。
―そのぐらいファンの方がスタッフの頑張りをちゃんと見てくれているんですね。
上松 「ユーザーファースト」を意識しているコンテンツは多いんですけど、「バンドリ!」はファンとスタッフが同じ方向を向いて同じ頑張りをしているんです。これが非常にうまく回っていて、お互いのモチベーションに変わっているんですよ。
―「バンドリ!」ではキャストの皆さんが実際にバンドを組んでライブ活動をしていますが、簡単なことではありません。
上松 あるライブの前に、愛美さんがフリーズしてしまったことがあったんです。泣いているのか、泣いていないのか分からない表情で固まってしまったんですよ。愛美さんってすごく吸収力があるので、周りの方の話を全て吸収できるんですよ。でも全部の言葉を聞くと矛盾が生じる。それで固まっちゃったんじゃないかなと。
それに対してかけてあげられる言葉が無いんですよ。「先輩がやってきた歴史でこういう事があったんだよ」と言ってあげられないもどかしさがすごかったです。愛美さんがパイオニアで、誰も先の道を行ったことが無い。愛美さんを中心に「バンドリ!」が始まって、それに続く人が出てきて道が出来ていく。コロンブスのような人たちにどう指導するのかって、本当に難しかった。
でも、そういう状況を乗り越えてきたからこそ、愛美さんは強いんです。全部を吸収した上で「バンドリ!」を背負って「ブシロード」を背負って、マザーズ上場の鐘を鳴らしたんですから(笑)。だからこの第3期を彼女や仲間たちがどう表現するのかがすごく楽しみです。
ただ、ファンのみんなはそこに続く人たちにも愛美さんと同じレベルを求めてくる。後に続いてくれる人たちもそれを分かった上で挑戦してくるんですよ。振り落とされちゃいけないって。「ONE TEAM」っていうのは、本当にそこですね。キャストのみんなが頑張って乗り越えてくるんだったら、スタッフたちも全力出すしかないじゃないですか(笑)。
―ひとり、太い幹みたいな人がいると周りのメンバーも必死についていこうとするんですね。
上松 あとね、幹が倒れないようにみんな守るんですよ。これがまた泣ける。だから僕も『バンドリ!』のライブで、たまに泣いているんですよ(笑)。これはラグビーで試合前に肩を組んでる時点で泣いちゃうのに近い。だからラグビーで泣いているシーンを見た時、「バンドリ!」に似てるなぁ、ファンも同じように感じてくれているんじゃないかな、と思えるんですよね。
(C)BanG Dream! Project