第3期も好評の青春ガールズバンドアニメ「BanG Dream!」(以下、バンドリ!)。この作品で第1期から全ての楽曲をプロデュースしているのが、音楽クリエイター集団「Elements Garden(エレメンツ ガーデン)」だ。その代表を務める上松範康氏に、年長者として「バンドリ!」メンバーたちに向ける思いを聞いた。
▶本編:青春ガールズバンドアニメ「BanG Dream! 3rd Season」
―アニメ「BanG Dream!」が第3期放送中です。ここまでの手ごたえはいかがですか?
上松 そうですね。「想像通りになっていない」のが想像通りといったところでしょうか(笑)。
―色々大変なこともあったと思います。
上松 本当に……演者もスタッフも関わるみんなが苦悩しながら、様々な出来事を乗り越えています。ただ、もう歌って弾ける声優は当たり前、っていうのが「バンドリ!」なんですね。その「当たり前」をどうやってさらに自分らしく表現していくか、っていう段階にみんながたどり着いていると思います。
今後は他も続いてくると思うし、そうなった時にじゃあ元祖「バンドリ!」はパイオニアとしてどうするか、というレベルでみんな戦いを挑んでいるんじゃないかなと。キャストさんの成長は若さもあって本当にすごく早いので、41歳の僕も振り落とされないように経験を生かさなければいけないと思っています。
―上松さんもキャストの方々を長く見守ってきました。
上松 キャストさんと話していると、確かに娘みたいな感覚になっていますね(笑)。正直、彼女たちの姿を見ていると「自分でこうやりたい」という感情が生まれないんです。それはきっと子供に対する気持ちに近いですよね。あなたの人生なんだから自由に生きなさい、と無理に押し付けない。
そういう「バンドリ!」の世界は木谷さんやスタッフのみんなで作ったものなんですけど、走り出している子たちにそう思えるのは親心なのかもしれませんね。でももし本当に彼女たちの父親だったとしたら、高校生の女の子が夢を持ってバンドに打ち込んで、青春を突っ走っている姿にたぶん驚かされると思うんですよ(笑)。逆に言ったらそれくらい大きなこと、大人が想像できないような素晴らしい視点で動いてくれているんじゃないかなと思います。
―実際に「バンドリ!」に影響を受けた若い女性のコピーバンドも生まれています。
上松 いやもう嬉しすぎるけど、「バンドリ!」の曲はムズいよ?(笑)。申し訳ないけどそんな簡単にできるものじゃないんですよ、って言いたいんですが、結構みんな上手く弾くんですよね(笑)。
誰も挑戦してこないだろうという気持ちだったんですけど、やっぱり若さには全てを簡単に越えてしまうような才能があるんだなって思います。実際に愛美さんは歌って弾いて笑顔で役を演じながらカメラ意識してファンにも応えて……全部やれていますからね。微笑ましいというか、ビックリしています(笑)。
―今後、バンドと声優の組み合わせはさらに盛り上がるでしょうか?
上松 あると思います。いわゆるアニメ業界、ゲーム業界、コンテンツ業界と一般層は少し相反していたのに、最近はTVCMもアニメが増えているじゃないですか。アイドル文化からもう一つ違う世界が注目され始めている感じがしていますし、一般層に刺さるバンドも出てきている印象があるんですよ。「バンドリ!」の盛り上がりのタイミングと一般層とのピントが合い始めているのかもしれません。
―最近はアニメで流行ったものがリアルで売れる傾向があります。「バンドリ!」では楽器屋さんからの反響などはありましたか?
上松 多分すごいでしょう。やっぱり楽器屋さんからしたらとても嬉しい状態なんじゃないですかね。実は、僕の実家は楽器屋なんですよ。もうないんですけど。その視点から見てもアニメで扱っているものは売りやすいんじゃないでしょうか。
若い人が楽器に以前ほど興味を持たなくなっている状況で、「バンドリ!」では女の子たちが楽器を弾いている、その楽器ってなんだろう? 楽器屋にあるの? お年玉を集めれば買えるのかな?そういう形で僕らが若いころに夢中になっていたように「バンドリ!」をきっかけに興味をもってくれるようになったら、楽器屋さんからすればすごくありがたいんじゃないかと思いますね(笑)。
―バンドと声優をミックスした「バンドリ!」は、若い人には魅力でしょうね。
上松 今は「なりたい職業ランキング」トップ10に必ず声優が入っています。ネットが普及したことによって、「バンドリ!」というコンテンツを盛り上げるのに必要な様々な要素が上手く重なってくれている気がしますね。
(C)BanG Dream! Project