「県の学習状況調査などを参考にした」として、コンピュータゲームのプレイ時間は1日60分(休日は90分)まで、中学生以下のスマホ利用は午後9時まで(高校生は午後10時まで)などの制限を盛り込んだ「ネット・ゲーム依存症対策条例案」の4月1日施行を目指す香川県議会。
「最近の親は長時間労働なので、子どもがゲームに依存する」「eスポーツ推奨は間違い」「ネットやゲームの過剰利用は子どもたちの学力や体力の低下、引きこもりや睡眠障害、視力低下などを引き起こす」といった問題意識、そして「親子の信頼関係が形成される乳幼児期のみならず、子ども時代が愛情豊かに見守られることで、愛着が安定し、子どもの安心感や自己肯定感を高めることが重要」(条例の前文)というのがその主張だ。
■現役の県職員が告白「議員に直接働きかけるしかない」
この条例案にネット上で強い懸念の声が上がる中、「ネット・ゲームの規制という結論ありきで、当事者たる子どもを交えた議論のないまま委員会内で一方的に話が進められていることに強い危機感を覚え、私はこの条例の制定に反対する」とFacebookで声を上げたのが、現役の香川県庁職員の田口隆介氏(健康福祉部所属)だ。
24日のAbemaTV『AbemaPrime』に中継で出演した田口氏は「条例検討委員会長の大山一郎議長とのつながりが指摘されている四国新聞などの地元紙が“ゲーム依存は危険だ”ということをずっと書いて来たが、その認識は一方的なものではないか?と思っていた。ゲーム規制に対する勉強会に出席されている議員もいるが、現時点では条例賛成派の議員の方が多く、このまま通ってしまいそうな情勢だ」と訴える。
「部活動や学習塾で遅くまで外に出ているような子どもにとっては情報収集のためのツールが無くなってしまうということだし、安心・安全の観点からも夜間に一律でスマホを禁止するのはおかしいと思う。そもそもこういうルールは家庭内で子どもと親が協議、調整して自主的に定めるものだし、そのこと自体が子にとっても親にとっても大事な学びの場になるはずだ。そこに自治体が介入し、機会を奪ってしまうのは非常に問題だと思う」。
庁内での反応について「Facebookで意見表明をしたことがネットニュースにも取り上げられ、他の職員さんたちにも知れ渡った。しかし嫌がらせといったことは一切なく、職場の皆さんも温かく受け入れてくれているという状況だ。むしろ賛同の声も多く、若い人だけでなく、年上の職員たちからも“おかしい”という意見が出ている」と話す田口氏。「もう議会に入ってしまっているので議員に直接働きかけるしかないのが現状だが、今後も発信できるよう勉強会に参加するなど、情報収集に努めたいと思う」と話した。
■音喜多参院議員「一度は反対に傾いた人が巻き返されている」
この問題について「子どもの自己決定権を奪うようなものだ」として、通常国会で取り上げることを目指しているのが音喜多駿参議院議員(日本維新の会)だ。「すでに多くの有識者が指摘している通り、この時間制限には根拠がない。確かに長時間ゲームをする子には成績が悪い子が多いというデータがあるが、元々成績の悪い子が諦めてゲームをやっているという可能性も否定できないし、まだまだ研究しなければならないことがたくさんあるはずだ」。
その上で音喜多議員は「条例というものはその土地でしか効力を発揮しないもの。一方、インターネットやスマホゲームは国境すら越えていくものだ。つまり、香川県民が使ったことで、東京のゲーム事業者まで縛られるといった新たな問題も出てくる可能性があるし、他の自治体にも広まっていく恐れもある。田口さんのお話にもあったが、四国新聞が大キャンペーンをしているので、新聞を読む世代、つまり投票率の高い世代の間に“良い条例だ”と考えている人が多い。県知事も予算を通したい時期なので、議会の機嫌を損ねたくないし、この条例を飲まざるを得ない形になりつつある。本来であれば、周知期間を最低半年は置くのに、何をそんなに急いでいるのかという意見もあるが、“大山議長にこの仕事をやり遂げさせてあげて欲しい”ということで、一度は反対に傾いた人が巻き返されている」と危機感を露わにした。
■夏野剛氏「選挙の仕組みや都道府県の在り方そのものが深刻な事態」
エンジニアとしても活動するタレントの池澤あやかは「先日N高を取材したが、インターネットがあれば自分の好きな時間にどこでも授業が受けることができる制度になっていて、素晴らしいと思った。私は外国語をアプリで学んでいるし、活動時間などが県に定められてしまうと、子どもたちの可能性の芽を摘んでしまうことになると感じる」と話す。
そのN高の理事長も務める夏野剛氏(慶応大学特別招聘教授、ドワンゴ社長)は「eスポーツ部などが活動しているが、特にPC上のグループでやるようなゲームはかなりの戦略性が必要だし、普通に勉強するよりもはるかに学ぶことが多い。普通の学校では“ゲームが大好きで”と言うと浮いてしまうかもしれないが、N高にはそういった子たちが来てくれたりしていて、今や国体で優勝したり、世界ランキングに入ったりする例もある。ゲームがダメという話は全くない」と話す。
その上で夏野氏は「これが選挙で選ばれた人たちの中から出てきたということ、僕は選挙の仕組みや都道府県の在り方そのものが深刻な事態にあるんだと捉えなければいけないと思う」と指摘。「確かに40代や50代の親御さんたちが“こんなにスマホ漬けでいいのかな”という不安を抱いていることは事実だ。そういう感情があるところに、この案が出てきた。つまり、良く分かっていない爺ちゃん婆ちゃんたちだけが反対しているわけではないということだ。そして、議会の人たちも、実効性はないと分かっていながら、人気取りでやっているのだと思う。そして、みんな国政には興味があるが、都道府県議会になると投票率が一気に下がる。それは身近ではないからだ。そもそも香川県の人口は96万人しかなく、議員の資質も疑われる中、本当に県議会というものが必要なのかという議論もしたらいい」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:なぜこんな条例が? 反対表明の県庁職員が出演
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