国語力が著しく低下しているといわれる日本の若者たち。経済協力開発機構(OECD)が加盟国の15歳を対象に3年に1度実施する学習到達度調査(PISA)の2018年の結果において、日本の「文章を読み解く力・読解力」は一時上昇していたものの、今回は過去最低の15位となっている。
その要因として指摘されるのが、読書量の減少、そしてSNSの利用だ。確かにこの30年、読書量は小学生でおよそ3分の1にまで減少しているとの統計もあり、反対にSNS、短文でやりとりするチャットツールは普及している。ネット上には「SNSの癖なのか、取引先とのメールに句読点もなく、文書も読みづらい。『ここ改行して』と言えば、“改行ってなんですか?”って」といった指摘もあり、中高年からは「大事な商談のときに不安を感じるわけ。ここで決めなきゃいけないってときはさすがに連れて行くのは難しい」(50代、会社員)、「こちらが長文を送っても“了解”“わかりました”、もしくはスタンプ1つというのが多い」(40代、会社員)とのボヤキも聞こえてくる。
お茶の水女子大学の浜野隆教授は「長い文章にじっくりと接したり、自分の考えを表現したりする機会が減ってきていると思う。しかし、言語能力はあらゆる学びの基礎なので、他の分野や仕事の知識を身に着ける上でもマイナスになるのではないかと思う」と話す。
武蔵野大学の藤本かおる准教授は「原因をSNSに求めるのは乱暴な話なのではないか」とした上で、PISAの結果について「今回のテストに関しては、日本の子どもたちコンピューターを使ったテストの形式に慣れていなかったのではないかという見方もあった。ただ、やはりその時の教育や社会的なものに影響していると言われているし、例えば、薬の説明書の飲み方を間違えるといったことがあると思うと怖い。生活の中でも影響が出てくる部分もあると思うので、深刻に受け止めた方がいい」と話す。
他方で、国語力に伴って知識量も減ってしまうという指摘もある。ただ、若者たちに聞いてみると、「ググればいいやみたいな感じ」「世間のニュースとかツイッターで調べることが多い。Twitterが1番早い気するよね」「記憶力は正直必要ないと思うけど」と、「検索」することで補えるとの意見を持った人が多いようだ。
これについてモデルのケヴィンは「分からないことは何でもすぐにググってしまう」、アイドルユニット「Black Diamond -from 2000-」のともちんも「すぐググってしまえばいい。とりま、秒でなんでもわかる時代。必要なのは“ググり・タグり力”。マジ大事。知識を得ることは本当に必要かな?」と話す。
教育分野においても、従来のような知識だけを問うものよりも、得た知識をどう活用するのか、という点に重きが置かれるようになり、入試会場へのスマホ持ち込みを許可する学校も現れている。
藤本氏は「正直言うと、私もすぐにググる。確かに、これからは調べる力がすごく大事だ。ただし、それをどのように人に伝えるのか、という問題だ。ググって出てきた文章をそのままレポートに使ってしまえば盗用・剽窃になってしまう」と指摘。
「ケヴィンさん、ともちんさんのTwitterを見ると、とても丁寧で心のこもった文章を書いていると思うしうまくコミュニケーションも取れていると思う。しかし、それらは明らかに話し言葉の文字化だ。問題は、論理的な文章を理解し、論理的なアウトプットがどれだけできるのかだ。特に日本語は話し言葉と書き言葉が異なっているので、レポートを買うときに“である体”で書けというような教育を受けていると思うが、話し言葉と書き言葉は明らかに違っている。やはり文章同士がきちんと接続されていて、起承転結、どう論を展開していくのか。そういう部分はSNSとは違う」。
議論を受け、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「こういう議論をすると、すぐに若者の問題にされてしまうが、大人であっても言葉の一部だけを切り取ってクソリプしてくる人はいる」、ふかわりょうは「むしろSNSなどによって言葉に触れる機会は多いので、言葉に“瞬発力”がある若い人もいると思う」と、若者論やネット悪玉論に違和感を示した。
また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ネットが普及していなかった90年代に新聞記者だったが、読者から寄せられる文章は酷い物が多かった。それからフリーで文章を書く仕事を始めたが、この10年、もはや文章力では素人に敵わないと感じることもある。つまり、普通の人の文章は上手くなったと言えると思う。SNSが無かった時代はテレビを見ていただけであって、“SNSによって長文読まなくなった”と主張している人たちが本当に長文を読んでいたとは思えない」と指摘。
さらに「LINEやTwitterなどの短文中心のメディアにおいては短い方が理にかなっているし、マナーにも合っているとういうこと。会社のメールの返事が一言だけというのも、文化が衝突しているだけの話で、結局はTPOに応じた適切な文章を書くことができ、それによってどれだけ円滑にコミュニケーションが図れるかが重要だ。最近でこそプレゼンテーションなどで論理的な文章が求められるようになったが、昭和のサラリーマンがそこまで論理的な文章を求められていただろうか。いわば格差が可視化されたということだと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:SNSは人を馬鹿にする? 若者の国語力が低下しているらしいけど正直どうなの?
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