又吉直樹の恋愛小説を原作とする映画『劇場』(4月17日より全国公開)より場面写真が一挙解禁となった。
又吉が芥川賞受賞作品となった「火花」より前に書き始めていた、作家の原点とも言える恋愛小説「劇場」。“恋愛がわからないからこそ、書きたかった”と又吉が語る2作目は、劇作家を目指す主人公・永田と、彼に恋をして必死に支えようとする沙希の、生涯忘れることができない恋を描く。監督を務めるのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)『ナラタージュ』(17)等、時代ごとに新たな恋愛映画のマスターピースを贈り続けてきた行定勲監督だ。
主演を務めるのは山崎賢人(※山崎の崎は正式には「たつさき」)。演劇に身も心も捧げながら、実生活では社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年・永田を演じる。撮影前に何度も監督とエチュードを重ねて役を作り上げたという山崎は、これまでに見たことのない表情で挑んでいる。ヒロインを務めるのは松岡茉優。葛藤や迷いを抱えながらも、純粋に彼を愛そうとする健気な沙希を、儚くも愛しく演じている。
行定監督は本作について「美しいものと醜いものが映っている青春映画にしたいと思った」と語っており、完成した映画を観た又吉も「“生々しさ”とか“痛み”みたいな、そういう部分を小説でも描いたつもりだったので、それが映像になると、よりいい意味で“いるな”っていう感じがしました」とコメント。その言葉通り、劇中では恋をして幸せそうな二人の姿と、その一方で夢を追う中ですれ違っていくやりきれなさが容赦なく描かれており、今回解禁となった場面写真でも、永田と沙希のそうした2つの側面を垣間見ることが出来る。
永田は“表現者“であろうとして虚勢を張っているが、沙希の前では安心しきった笑顔や純粋無垢な瞳を見せる。その一方で創作を生業として生きていくことへの不安や孤独も見せて、しばしばその苛立ちを沙希にぶつけてしまうのだが、山崎が演じるとどこか憎み切れない男に見えてしまう。可愛らしい笑顔と生気がない目で近寄り難い空気を発する時のギャップは凄まじく、髭を生やした外見もさることながら、演技の面でも今まで見たことのない山崎の姿を見ることが出来る。
そして沙希も、厄介な永田の全てを受け入れるような慈愛に満ちたほほ笑みを見せる一方で寂しい表情で涙を流したりと、劇中で多彩な表情を見せる。過去様々な恋愛映画を手掛けてきた行定監督による演出の冴えはもちろんだが、『勝手に震えてろ』、『万引き家族』、『蜜蜂と遠雷』と近年様々な作品に出演し、その度に映画賞を受賞してきた松岡がその演技力を遺憾なく発揮している。
ストーリー
夢を叶えることが、君を幸せにすることだと思ってた—
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、彼を支えたいと願う沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った。
中学からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想。そのはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけ声をかける。女優になる夢を抱き上京し、服飾の大学に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。お金のない永田は沙希の部屋に転がり込み、ふたりは一緒に住み始める。沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し続け、永田もまた自分を理解し支えてくれる沙希を大切に思いつつも、理想と現実と間を埋めるようにますます演劇に没頭していき―。
(c)2020「劇場」製作委員会