新型コロナウイルスによる経済危機に竹中平蔵氏「ベーシックインカムのような、個人への保障を」
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 エンタテインメント業界や旅行業界を始めとして、様々な業種が苦しい状況に陥っている中、政府はイベント等の自粛要請を継続することになった。3月19日のAbemaTV『NewsBAR橋下』では、経済学者の竹中平蔵氏と橋下徹氏が新型コロナウイルスの経済への影響、そして支援策について議論を深めた。

■政治がリーダーシップを発揮し、責任を負わなくてはいけない

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竹中:橋下さんもそうだと思うが、私も講演がいっぱいキャンセルになっている。政府が自粛を要請するのは仕方ないと思うが、それに対する民間の反応が異常だと思う。まるで“魔女狩り”みたいになっていて、“これをやったら後で文句を言われる”からと萎縮しているところが気になる。日本の場合、右にならえ、政府の言うことを聞いていれば安心だというのが行きすぎていると思う。申し訳ないが、またそれをテレビのワイドショーが煽っている。

橋下:学校を一斉休校にし、イベントをドーンと止めたが、高齢者施設で働く人や高齢者本人にも外出を自粛してくださいねというも入れるべきだったと思う。もちろん時間稼ぎのために人の活動や接触を抑制することは必要だが、いろんなことがわかってきたら解除していくべきで、僕はそのことを考えていく段階に入っていると思っている。だから選別高校野球の中止は残念だった。換気が悪い密室の中で人が接し、大声で喋るようなところでクラスターが生まれると専門家会議が言ったのであれば、そうならないような形でイベントをやることを考える段階だと思う。

竹中さんは“要請に対して民間が右にならえすぎる”と言われたが、僕はこれが権力の要請の怖さだと思う。本来は法律に基づいてやらなくてはいけない話だ。そして、解除した後に感染が広がれば責任を問われることになるので、そこは専門家と政治家が役割分担をしっかりしないといけない。今、政治家がそこを専門家会議に投げているような気がしてしまっているし、メディアも何かあればすぐ“専門家会議に聞いたのか”と言う。しかし、一斉休校や自粛、その解除は政治家の判断だ。

竹中:その通りだと思う。“客観的にここまで言える。ここまでは言えない”というのを明確にするのが専門家で、最後は政治がリーダーシップを発揮し、責任を負わなくてはいけない。

橋下:感染症の専門家に自粛期間はいつまでがいいかと尋ねれば、それは安全な“来年まで”とか、安全になるまでの期間を言うだろう。しかし、経済とのバランスを考えて、どこまでリスクを引き受けるかということについては政治家がやらなくてはいけない。ウイルスが広がるのをゼロにするという雰囲気になってきているが、社会で生きている以上、政治家は“ここまでのリスクは負いましょうよ”ということを言うべきだ。これは暴論かもわからないが、感染者数がどれだけ増えても、治ればよい。そこで死亡率をこのぐらいにするにはこういう対策をしなければいけないということを専門家会議に考えてもらう。そういう目標を置いていないから、対策、対策、対策となってしまう。

■将来の社会保障改革にも繋がっていく経済政策を

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竹中:中国や韓国から人が来なくなったことによる影響はものすごく大きい。また、小企業で人手不足で困っているところや、外国人技能実習制度が止まったことによってビジネスができないという分野もすごく増えている。あるいはイベントで仕事をしている人たちも直接的な打撃を受ける。それに対して政府はどのように対応するのか。予算審議が3月に終わったら、4月にはかなり大型の補正予算を組むと思うが、その時に、どういう考え方で対応していくのかが試される

今のままでいけば、困っている中小企業に無利子融資の支援が行われると思うが、極論を言えば、この際、徹底して個人を助けるべきだ。企業を助けても、芸人さんやアーティストは助からない。いわゆるベーシックインカムのような形で、最低限のことは保障するから安心してくださいということをやれば、将来の社会保障改革にも繋がっていくと思う。

少し飛躍した例かもしれないが、関東大震災の後に震災手形を出した。実はその時に変なのがいっぱい紛れ込んでいたために不良債権化し、後の金融恐慌に繋がった。今こういうことを言うと批判されるかもしれないが、コロナショックはいつか終わる。絶対に終わる。その中で本当にきちっとやっていける企業は、金融機関等で、ある程度の融資が受けられるはずだ。政府による多少のサポートもある。だから私はそこで働いている人たちの生活が守られるような政策を思い切って打てたらなという思いがある。例えば全員に対して月6、7万円を配り、一定の所得以上は確定申告の時に返してもらうというようにすれば良い。

橋下:2009年の新型インフルエンザの時も企業救済でかなりのお金を出したが、融資を一度やると、止める、引き上げるという判断ができなくなり、だらだらやってしまった。

竹中:“雇っておいてください。そうしたら企業にお金を出します”という雇用調整助成金を出した。これが結果的に人の流動性を妨げ、本来は存続できないような企業にも人を縛り付けるような補助金になってしまった。結果的に“コロナ危機の時は大変だった。でもあの時をきっかけに経済社会はむしろ前進したよな”と思えるようなことをやっていきたいということだ」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:竹中平蔵氏を迎えて新型コロナウイルスの経済への影響を議論

竹中平蔵氏を迎えて新型コロナウイルスの経済への影響を議論
竹中平蔵氏を迎えて新型コロナウイルスの経済への影響を議論
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