「7回落ち続けて、『もうやめた方がいいんじゃない?』『まだやってるの?』『時間の無駄だから』って言われたこともありました」
5年の期間、8回のチャレンジを経て去年、悲願の「気象予報士」資格を取得したAKB48の武藤十夢。そしてこの度、気象予報士として自身初のレギュラー番組出演も決まった。AbemaTV『AbemaMorning』(平日朝7時~7時40分)で、4月3日(金)放送回から毎週金曜日のお天気コーナーを担当する。
気象予報士を目指したのは、“自分にしかない武器を見つけたい”という思いから。そして今は“自分にしかできないこと”が見えてきている。そんな“アイドル×気象予報士”武藤十夢の現在地とは。
■「難しいし大変だけど、見えてくるものがあったらいいなって」
やっぱり一番は天気予報の原稿を自分で書いている時ですね。資格を持っていなくても原稿を読むことはできるんですけど、原稿を書くのは気象予報士じゃないとできないので。それを書いて自分で読んでいる時は「あぁ気象予報士だな」と実感がわきます。
――合格するまでの5年間はAKB48の活動に大学・大学院、資格の勉強と相当お忙しかったと思いますが、特に大変だった時期はありますか?
試験は年に2回(8月と1月)なんですけど、1月は「リクエストアワー」という毎年恒例のAKB48グループのイベントがあるんです。年末年始にかけての歌番組の流れから、リクエストアワーがあって、そのあと1週間以内に試験があるみたいな(笑)。その時期は大変でした。
――AKB48 53rdシングル世界選抜総選挙で“神7”に入ったのが2018年6月、それから2019年1月の試験で合格。怒涛の日々だったんじゃないでしょうか。
待ち時間があるお仕事もあるので、そういう時間に勉強をしていました。(AKB48は)人数が多いので、レッスン→2時間空き→レッスンみたいな時もあって。学科試験は60分なので、2時間あれば過去問をひとつやって解説も含めて丸つけできるなとか、自分の中で計算しながら「今日はこれやって、あれやって」と。あと劇場公演が終わったあと、夜遅くまでやっているカフェに行って勉強したりしてました。
――気象予報士は平均合格率5.5%の難関資格ですが、7回落ちても乗り越えたかったのにはどのような思いがあったのでしょう?周りの人から何かアドバイスはありましたか?
たくさんのAKB48メンバーがいる中で、自分の強みってなんだろうなと思った時に出てこなくて。自分にしかない武器がほしいなと思った時に、気象予報士はどうかなって思ったんです。難しいしその分大変だろうけど、それをやることによって見えてくるものがあったらいいなって。そう思って始めたんですけど7回落ち続けて、「もうやめた方がいいんじゃない?」「まだやってるの?」「もう無理だから、時間の無駄だから」って言われたことも結構ありました。それでもスタッフや先生、メンバー、ファンの方が「頑張れ」と言ってくださって、応援してくださる方がいたから頑張ろうって思いましたし、ここまで来たらやるしかないなというのはありました。
周りはみんな「取った方がいい」とは言うんですけど、やっぱり難しいものなので「絶対やった方がいい」と言う人はいなかったですね。資格が取れる保証が特に少ないものだったので、「やめてなかったんだ」っていう方が多かったです。
――実際に問題を見てみると素人にはさっぱりでした。気象予報士というイメージはあっても、何を勉強してどこが難しいのかということは伝わりづらい気がします。
番組の企画で始めたものだったんですけど、スポーツをやるとか例えば船舶の資格を取るとかなら、練習して頑張ってる様子が伝わりやすいと思うんです。でも勉強って実際に何をやってるか伝わりづらい部分があったので、それは難しいって言われたりもしました。
資格を取ってからソロのイベントを開催した時に、使った過去問にサインをしてファンの方に配って「こういうことをやってたんだよ」って説明したりしたんですけど、みんなキョトンとなってしまって(笑)。だよね、って思いました。
■資格を取って見えてきた“景色”
――レギュラー出演にあたり気象予報士の飯沼孝さん(※合格まで5年間指導してきた“天気の師匠”)の下で研修も受けられましたが、自分で原稿を書くことの大変さは感じますか?
アベモニの(天気の)原稿は大体2分前後と言われているんですけど、最初はその2分に届くまで何を言ったらいいかわからないということがよくありました。そういう時先生に「こういうことを言ったらいいんじゃない?」と教えていただいて、言葉のレパートリーや言い回しを増やしていくことができて。ちょっとずつではありますし、今でもまだまだなところはありますけど、段々と書けるようになってきたのはうれしいなって思います。
天気予報は台風などの時はしっかり見ますけど、今まで、普段はなんとなく見ていることが多かったので、「みんなどういう言い回しをしているんだろう?」ってそこまで気にかけなかったというか。例えば、「全国的に雨が降るでしょう」と言う時、降らないところがあれば全国的ではないから「降るところもありそうです」とか、細かい表現は難しいなと思います。低気圧が九州地方でも中国地方でも四国地方でもないところにある時に、「西日本って言えばいいんだよ」って言われてなるほど!って。頭ではわかっていても、言葉にして伝えるのは難しいなって思いました。
――「アイドル」として、どのように気象予報士を生かしていきたいですか?
AKB48の中の1人として、武藤十夢らしさのひとつとして気象予報士という色がより濃く出していけたらなと思います。歌が上手な子や話が面白い子、その中に“お天気予報ができる子”みたいな。直接的にアイドル活動に結びつけるのは難しいかもしれないですけど、それこそ握手会とかで聞かれたりするので、その話で盛り上がれたらいいなと思います。
――「気象予報してよ」なんて言われることもあるんですか?
あります、あります!まずファンの方は、握手会に来ると「明日の天気は?」って聞いてくださったりします。そんな急に聞かれても!って(笑)。東京の天気なら私も住んでるのでわかる部分もあるんですけど、「明日の福井の天気は?」って聞かれてもわからないので、「ちょっと後で調べるね」っていうのはあります(笑)。
あと妹(武藤小麟、姉妹でAKB48のメンバー)が隣の部屋なんですけど、「ねえ今日寒い?」「今日の天気は?」って、私に聞いてくるようになりました(笑)。
――他のメンバーの方は「明日の天気は?」とは聞かれないですもんね(笑)
握手会に何かの試験を受けている人が来てくださるようになって。気象予報士の試験もそうですし、「どう勉強していましたか?」「どう頑張っていましたか?」って聞いてくださるんです。中には別の試験を受けていて「十夢ちゃんを見て頑張ろうって思ったんだよね」「自分も何か受けてみようと思った」って言ってくれる方もいて、自分ではそんなつもりはなかったんですけど、間接的にみんなのパワーになってるのはすごく嬉しいです。
――武藤さんが5年間諦めなかったからこそですよね。アベモニは過去何度か出られていますが、ライブやバラエティなどと違う緊張感はありますか?
ありますね。私初めてやることって大体緊張するんですよ。歌って踊る、人前でしゃべる感じとお天気予報は全然違ったので。すごい緊張しちゃって最初は「どうしよう?」って。AKB48としてやってきた歴もあるし「ちゃんとしなきゃ」っていう気持ちばっかり先走っちゃって、アワアワしちゃったりしてましたね(笑)。
AKB48の劇場では歌って踊る以外にMCもあるんですけど、MCも3、4年前までは緊張しながらやっててやっと慣れてきたぐらいだったので。「そりゃ天気予報緊張するよね」、って感じでした。だんだん少しずつ慣れてきて、でも噛んじゃったりすることもあるのでまだまだだなって思います。
――最後に気象予報士初レギュラーへの意気込みをお願いします。
現役アイドルをやりながら気象予報士というのはなかなか珍しいと思うので、そういう自分らしさが出せたらいいなと思っています。AKB48らしく元気に、皆さんにパワーをお届けしつつ、気象予報士らしくきちんとわかりやすく、皆さんの生活に寄り添ってお天気をお届けできたらなと思っていますので、毎週金曜日これから見ていただけたらなと思います。頑張りますので、よろしくお願いします。
撮影:野原誠治