安倍晋三総理大臣が1日、全国5000世帯のすべてを対象に1住所あたり2枚ずつ布マスクを配布することを表明。洗濯して繰り返し使える布マスクを日本郵政の全住所配布のシステムを利用して再来週以降、配布する見通しであることを明かした。心配される費用やその効果の問題について菅官房長官は1枚200円程度になると説明しているが、この対応についてネットでは「マスク2枚でごまかすな」など波紋が広がっている。
マスク2枚およそ400円が5000万世帯で費用は約200億円。さらに5000万世帯分の送料がかかる懸念も指摘されており、中には布マスクそのものの効果について疑問視する声も。東邦大学看護学部教授で感染制御学の専門家である小林寅てつ氏は「一般的なマスクよりも(効果は)低くなりますし、しないよりはした方がいいと考えて活用するべき」と話す。
6人家族のある女性は「お父さんとお母さんに疾患があるので使用することになる。感染しちゃうと重症化しやすいので」と、マスク使用の優先順位について考えを明かした。
テレビ朝日政治部の前田洋平記者はマスク配布の決断に至った経緯について「マスク不足は2月の初めから問題になっており、政府は頭を悩ませていた。通常7割を占める中国からの輸入が止まったために一気にマスクがなくなった。当初は経産省から国内の各工場に増産を要求して月6億枚、普段はマスクを作っていない工場にも『補助金を出すから』などお願いして月7億枚など策はいろいろ講じたが、どうしても市場に出回らないことに政府高官も頭を悩ませていた。そんな中で、国民の不安を払拭したいと注目されたのが、再利用可能な布マスク。3月上旬に経産省の方でも『使い捨てマスクは限度がないが、布マスクであればどうにか持ちこたえられるのではないか』と各工場にお願いをし、約1億枚程度の生産見込みが立ったとして全国の5000万世帯に2枚ずつでちょうど1億枚。その準備が整ったことで今回の配布に至った」と説明した。
さらに前田記者は「官房長官会見に毎日出ているが、毎日『マスクはどうなったんだ』と聞かれ、そのたびに官房長官も『今頑張っているところだ。需要がかなり多いようで供給が追いついていない』と繰り返していた。少しでもお店に殺到することを回避する方法を模索する中で再利用可能な布製マスクの配布に至った。家族内でだれが使うのかなど難しい問題もあるが、『これが今できる限度だ』と政府関係者は話している」と補足した。
一方、与党内や政権内からも懐疑的な声が上がったことについては「官邸主導で行われたということがあるだろう。ただ政府はマスクだけに注力し、全精力を注いでいるというわけではない。医療崩壊や治療薬の開発などに主眼を置いていく中で、国民の不安を払拭したいという一つのアイデア。それが突然の発表により、不安を払拭するためにやったことが、逆に不安になってしまっている側面もあるが、実際に届けば安心することもあるだろう。そこは見守っていきたい」と解説した。(ANNニュース)