2002年ごろの下北沢駅~松原駅周辺を舞台とする新アニメ「イエスタデイをうたって」が、4月4日から放送スタートする。漫画家・冬目景の手掛けた独自のタッチによるイラスト・恋愛模様が、アニメでどう表現されるのか。先行して行われた上映会では、原作ファンからも好評を得ている。届かない思いの連鎖の中で、大きなテーマとなるのが「男女の友情はあるか、ないか」。藤原佳幸監督と主人公・魚住陸生(リクオ)を演じた小林親弘に、作品の魅力とともに「男女間の友情」について聞いた。
-「イエスタデイをうたって」はリクオ、ハル、品子、浪といった主要キャラクターの思いが交錯することで進んでいくストーリーです。
小林親弘(以下、小林) みんな叶えたい思いを叶えられないまま、もやもやしていますからね。でも、その中に誰も悪い人がいない。誰かを貶めてやろうという人がいないんです。ハルなんかすごく堂々としているし。そういう作品だと思います。
藤原佳幸監督(以下、藤原) 見る人や自分の心境で、感じ方が変わるタイトルだと思っています。誰目線で見るか。音楽がついていると、一方の気持ちになってしまうこともあるので、他のタイトルより音楽は少なめにつけています。同じ人でも「今なら品子の心情がわかる」とか、そういうこともありますからね。
-作品は単なる好き嫌いの男女ではなく、あいまいな男女の関係も描かれています。
藤原 大学時代の仲間であるリクオと品子ですけど、学生時代はみんなで雑魚寝していたりします。その後、劇中に品子は「昔は雑魚寝していたのにね」って言うんですけど、当時との心境の変化がリアルですね。
小林 アフレコも、もうアニメというより(舞台の)お芝居でしたね。声をあてに行くというよりも、横に立った人と会話をして空気を作ろうと思いました。あんまり狙った演技をしないように気をつけましたね。怒ろうとして怒らない、嫌な空気にしようと思ってそういう演技をしない、とか。
-アフレコ現場の空気感が、そのまま作品のリアルさにつながっているのでしょうか。
藤原 品子役の花澤香菜さんは本当にすごいですね。あるセリフでも、アフレコの帰りの車の中で、みんなして「いやー、あんなこと言われたら後ろ髪引かれまくるよね!」って騒いでいました(笑)花澤さんの声が入ることによって、品子がより魅力的になる。それでさらにハル(野中晴)の健気さが際立つ気がしています。
-ところで、男女の関係を語る上で「男女の友情はあるのか」というのは、どの時代でも大きなテーマになっていますが、お二人はどう思われますか。
藤原 あるわけねぇ!と思っています(笑)だからリクオは真っすぐ言うんですよ。
小林 自分は、恋愛対象として見られない異性となら、割と友情感出せるかなとは思うんですよね。なのに、相手の方から好きに思われたり、全然そんなこと思っていなかったり。そういう気持ちのズレってありますよね。
藤原 僕は全然そんなことないですね(笑)作品について言うなら、原作の冬目先生があると思っているのか、ないと思っているのか。
小林 それも難しいですね。冬目先生は、どちらも答えを出しているような気もしますね。
◆作品情報「イエスタデイをうたって」とは
1998年よりビジネスジャンプ~グランドジャンプ(集英社)で連載、2015年に完結した漫画家・冬目景による漫画作品。コミックスはシリーズ累計140万部を突破。現在も多くのファンに愛されている。
◆ストーリー
大学卒業後、定職には就かずにコンビニでアルバイトをしている”リクオ”。特に目標もないまま、将来に対する焦燥感を抱えながら生きるリクオの前に、ある日、カラスを連れたミステリアスな少女―“ハル”が現れる。彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつて憧れていた同級生“品子”が東京に戻ってきたことを知る。
公式Twitter: https://twitter.com/anime_yesterday
公式サイト: https://singyesterday.com/
※品子のしなは木へんに品が正式表記
(C)冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会