「全員に“期限付きのベーシックインカム”を検討してもいい」政府の緊急経済対策では困っている人たちを救えない?
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 緊急事態宣言に併せて政府が示した緊急経済対策。6日のAbemaTV『AbemaPrime』では、その問題点について、当事者の声を交えて考えた。

 安倍総理は会見で「今でも多くの中小・小規模事業者の皆さまの事業継続に大きな支障が生じている。世界経済だけでなく、日本経済が今まさに戦後最大の危機に直面している。そう言っても過言ではない。そういう強い危機感の下に雇用と生活は断じて守り抜いていく。そのためにGDPの2割にあたる事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策を実施することとなった。困難に直面しているご家族や中小・小規模事業者の皆さんには総額6兆円を超える現金給付を行う。一世帯あたり30万円に加え、次の児童手当支払いに合わせ、1人当たり1万円を追加することで、お子さんの多いご家庭の家計も下支えする。皆さんの声は私たちに届いている。皆さんの努力を決して無にしてはならない」と表明。

 また、東京都の小池百合子知事は会見で、緊急事態宣言を受けた「緊急事態措置」のうち、事業者に要請する施設の使用制限などについては「国との間で調整を行っているところだ。引き続き、具体的な内容については国との調整を行って、都としては4月9日までに、現状を鑑みて、できるだけ早く明確、都としての成案を得たい。それから、外出自粛の効果も踏まえながら、翌10日の発表、11日からの実施というスケジュール感でいきたいと思っている」との見通しを示した。

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 都府県による休業要請の対象施設に含まれる可能性のある「坊主バー」(東京都)の善念さんは、8日以降の営業について「自粛要請が出た3月末くらいからはお客さんがほとんど来ない状況だったが、感染が起きた時の方が大変なので、自分の判断で休もうと思っている」と話す。本業は僧侶の善念さんだが、法事などもキャンセルが相次いでいるという。

 「バーの方は収入がゼロになるので、あまり期待はしていないが、多少なりとも補償が出ればありがたい。4月に入ってからはスタッフ全員にお休みをして頂いているので、補償でバイト代などをお支払いできたら。固定費の家賃などもかかる。区民税、都民税、消費税などについても考慮していた頂けたら」。

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 また、理美容店の営業についても注目が集まっている。理髪店「麻布山本」(東京都)店主の山本常弘さんは、すでに来店者は減っているものの、対策をしながら営業を続けてきた。「換気を良くして、あとは、お店の中での消毒を徹底している。一人ひとりお客様が終わる毎に席をしっかり消毒するなど、常に消毒は心がけるようにしている」

 その上で、東京都の緊急事態措置について「時短営業で対応しようとは思っていたが、6日の東京都の案と7日の国会中継での案と7日の小池さんの案では内容が異なっているので対応に困る。6日の時点ではスタッフを集めて“もうすぐに休業も致し方ない”と話した。しかし7日の朝刊を見ると、除外ということになっていた。ただ、仮に除外になったとしても喜んで営業するかといえば、感染拡大がそもそも目的。線引きが難しい」と難しい判断を迫られているようだ。

■経済アナリストの森永康平氏「経済対策としては微妙だ」

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 安倍総理が表明した「108兆円」の内訳は「現金給付・6兆円」「事業者の納税や社会保険料の猶予・26兆円規模」「その他・76兆円」となっている。ただ、このうち財政投融資を含め、国及び地方から直接支出される“真水”について、菅官房長官は39兆円としている。また、「30万円の現金給付」には(1)住民税非課税の水準まで落ち込む世帯(2)収入が半分以下に急減し、住民税非課税水準の2倍以下まで落ち込んだ世帯という条件がある。

 経済アナリストの森永康平氏は「“世界的に見ても大きい”として108兆円という数字が先行しているが、あくまでも事業規模だ。額面通りに受け取って、すごい対策が出てきたと喜ぶのは違うと思う。“真水”の39兆円についても細かいところがわからないので何とも言えない。報道で見る限り、実際はもっと下ぶれるのではないかと予測している」との見方を示す。

 また、安倍総理が「これらの対策は十分か」という記者からの問いに対して「個別に補償していくということではなく、困難である皆さんに現金給付を行いたいと考えている。30万円の給付については、自民党内で一律給付した方がいいのではないかという議論があった。私たちも検討した。例えば、私たち国会議員や公務員などは収入には影響を受けていないわけだ。そこに果たして5万円や10万円の給付をすることはどうなのかという点も考えなければならないと思う。本当に厳しく、収入が減少した人たちに直接給付がいくようにしていきたい」としたことについても、森永氏は次のように指摘する。

 「経済対策としては微妙だなと思う。所得制限とか、給付する対象を個人ではなく世帯にするのは間違いだ。額を多少下げてもいいので、個人一律で給付した方が良い。私の周りにも、“対象になっていると思っているが、実際にはなっていない人”や、逆に“対象になっているけど気付いていない人”がいる。分かりづらいし、申告せずに受けられない人が出てくるのは目に見えている。また、財源について問題にするひとがいるが、これは戦争みたいなものだという人がいるくらいの緊急事態だ。ここで出し渋ったことで会社がバタバタ潰れ、人が死んでいってしまったら、コロナ問題が終わった時に税収も回復しない。財源がないから一部の人にしか渡さないというのは明らかにおかしい発想だ」。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「メッセージとして、仕事がなくなる人、休まなければならない人に対しては国が面倒を見ると言った方がいい。そういうコミュニケーションが安倍政権は下手だと思う。また、“1カ月”と言っているが、イタリアやスペインの状況を見れば数カ月はかかるだろうという印象を持っている人が多いと思う。そういう絶望感について、もう少し政治が引き受けて欲しい。いま皆が欲しいのは安心感だ」と話す。

 「今回の経済政策は、“いかにして絞り込むか”という発想で、お金持ちにはお金が行き渡らないようにするという発想になってしまっている。安倍さんが“私たち国会議員には影響がない”というようなことをおっしゃっていたが、数百人の国会議員に30万円を配るのは大したコストではないと思う。今回必要なのは、全員に行き渡るという発想だ。また、個人事業主やフリーランスに100万円と言っているが、一律給付は1回で継続的には渡らない。しかし、来年のオリンピックの時にもまだ終わっていないかもしれない。ここは“1年間、月10万円ずつ配る”ということで120万円にしたほうが、より多くの人の生活の不安が収まるのではないか。いわば期限付きのベーシックインカムを検討してもいい」。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「基本的には基礎疾患のある人の方がかかった時に死にやすいということは、低所得者層はコロナウイルスに対しても非常に厳しい状態にあるだけでなく、経済的なダメージも受けやすいというダブルパンチが襲いかかっている。そう考えれば、事務手続きのコストも少ない一律給付の方がいいというのは理解しやすいのではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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