新型コロナウイルスの感染が拡大を続ける中で注目を集めているウェブサービスが、厚生労働省や全国の自治体の報告を集約・提供している「最新感染状況マップ」だ。都道府県別に感染者数を確認できるだけでなく、その推移を1日ごとに見ることも可能で、2月中旬のリリース以来、利用者が増加している。
開発したJX通信社の米重克洋代表は「我々は“報道ベンチャー“として、テクノロジーで報道分野の情報を伝えることをやってきた。データジャーナリズムも非常に重視していて、その文脈で新型コロナウイルスの問題を見てみると、課題が非常に多いと感じていた。例えば、厚生労働省や自治体や企業が感染の状況を日々発表しているが、データの定義や種類がバラバラで、それらを市民が見ていくのは非常に難しいと思う。そこで全国統一して、視覚的にわかりやすく確認できるものが重要だと思い、2月16日から提供を始めた」と話す。
10日のAbemaTV『AbemaPrime』では、「最新感染状況マップ」のデータから見えてくる最新の新型コロナウイルスの状況について、米重氏に話を聞いた。
米重氏は緊急事態宣言の対象に大都市・名古屋を含む愛知県が外れたことについて、「ダブリングタイム」という指標に注目する。「感染者数、もしくは死者数が2倍になるまでの時間を示す数字がある。それを見ると、だいたい首都圏、例えば、東京や埼玉、千葉などでは概ね1週間前後というのが状況だ。10日の数字でいっても、例えば、埼玉県や東京都、神奈川県で7日間、大阪は9日間だ。これらに比べ、愛知県は宣言が出た時で約21日、10日現在でも17日間と、比較的長い。つまり感染者数の増加ペースが緩やかであると言える。因みに、ヨーロッパやアメリカで、いわゆるオーバーシュート、感染爆発を起こしている都市では、このダブリングタイムが2、3日だと言われている。もちろん感染経路が分からない人がどのくらいの割合いるかといった指標も大事ではなるが、緊急事態宣言が出された首都圏に比べれば、愛知県はまだまだ緩やかだということは事実だ」。
その一方、「地方の部分でも感染者が多く増えているところがある。ダブリングタイムの最新の数字を見ると、1番短いのが沖縄県、石川県、福島県で4日間、山形県、山梨県、静岡県で5日間と、緊急事態宣言の対象になっている首都圏よりも短い。感染者数自体はまだ少ないこと、クラスターを掘り当ててしまって、そこから芋づる式に感染者が見つかっていくという現象を捉えているケースもあるが、孤発例が少し目立ち始めている県もある。全体としては地方も含めて油断できない状況だ」と分析した。
では、一斉休校要請の効果は見えてきているのだろうか。東京大学大学院特任研究員の坂元晴香医師は「世界的に子どもの感染者は少ない。ただ、子どもの感染者はゼロではないし、子どもを介して感染が広がる可能性は否定されていないので意味はあったのではないか」との見解を示している。
米重氏も「全国での年代別の累計感染者数、あるいは亡くなった方の数を見ていくと、実は10代と20代でかなり差があることがわかる。具体的には10代以下は非常に少ない。そして、10代から20代になった途端にコロナウイルスにかかりやすくなるということでもないように思うので、10代未満に関しては何らかの要因によって感染者が抑えられていると考えられ、それが休校要請・休校措置にあるのではないかと推測できるのではないか」との見方を示す。
これに対し、2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「10代が重症化しづらいということとは別に、日本では症状がある程度出ている人でないとPCR検査を受けられないという問題がある。本当に正しい状況を把握するために必要なデータが足りていないという可能性もあり、休校する前後での10代で検査を受けた人数と陽性率のデータを比較できればいいが、それができないので時期尚早だと思う」と指摘すると、米重氏は「あくまで仮説で推測ということにはなるし、陽性率の変化などは見ていく必要がある。例えば大阪などでは陽性率が上がってきているが、都道府県によっても、どういう人に対して検査をするのかということも微妙に違うというように言われている。こういう部分のキャパシティやパーセンテージの変化は当然注視しなければならないと思う」と話した。
1万人あたりの感染者数の国際比較では日本は0.42人、31番目という数字になっているが、日本の危機レベルはどのくらいの所にあるのだろうか。
米重氏は「世界中の国々の感染者数や死者数を横に並べてフラットに比較できればいいが、それぞれの国でそれぞれの前提があり、結果、数字の意味するところも微妙に違ってくるというところもある。そのあたり頭に入れながら、一つひとつの国を見ていくというのは、根気がいる作業が必要だと思う。ただ、検査の数とは当然影響する。皆に検査を受けてもらい、感染者数を正しく炙り出すという方針を取っている国もあれば、そうでない国もある。後者の代表格が日本だ。なかなかキャパシティを増やせていないので、その分どうしても検査の数が少ない。その意味では、市中に多くの感染者がいる可能性があり、実態よりも少ない数字が出ている可能性が高いというのが現状だと思うし、東京都でも連続して200人弱という数字が出ているが、もっと多くの陽性者が出る可能性は非常に高いと思う。一方で、ニューヨークでは死者数が5000人以上に達している。これは日本全体の感染者数に近い数字だ。その点では、死者数は相対的に少ないという事実はあるので、日本がアメリカやヨーロッパのようにはなっていないということも言える」との見解を示した。
ひろゆき氏も「アメリカやフランスはガンガン検査していく形なので感染者数も増えるが、人口に対する検査率が低い状態で感染者が少ないと言ってしまうと、北朝鮮が最強になってしまう。つまり、検査していないから誰も感染していないことになるということだ。日本は必要な人だけ検査してクラスターを見つけるということでやってきたが、東京都では孤発例の7割8割がどこから感染したか分からないという。日本も検査数を増やし、孤発例をどう減らすかということに方針転換した方がいいと思う」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)