「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが拡散、ネット上で激しい議論を呼んでいる検察庁法改正案の問題。野党が追及する東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年延長と次期検事総長就任の関係性について、「三権分立していないのではないか」「政権のための改正なのではないか」といった声が上がり、自民党内から「強行採決は自殺行為」と訴えた泉田裕彦衆院議員が内閣委員を外されることになったとツイートした。
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国会では15日、反対デモの声が響く中、内閣委員会に森まさこ法務大臣がようやく出席したが、質疑は紛糾。採決は週明け以降に持ち越しとなった。
今回の問題について、政治学者の岩田温氏は「私はウーマンラッシュアワーの村本大輔さんとこの番組で共演し、友達になった。もうちょっと調べてよと思う時もあるが、正しいか正しくないかは別として、自分の意見を率直に発信されている。私は政治学のプロフェッショナルとしてやっているが、いわゆる素人の方の発言が間違っていたとしても、だからといって発信すべきではないと言うことには絶対に反対だ。基本的に民主主義社会においては、法律についても政治についても自由に意見を言うことができる。どんな職業に就いていたとしても、どんな発言をしたとしても、それは認められるべきだ。誰もが全ての分野の専門家ではないわけだし、だから“あなたは歌手だから、あなたは芸能人だからこういうことを言うんじゃない”というような発言は差別だし、断固拒否した方がいい。ただ、影響力が大きい人が誤解したまま喋ってしまうと、その誤解が拡散されてしまうという問題はある。疑問を発することは大事だが、ちょっと考えてから発信してほしいと思う」と話す。
その上で、「黒川さんの定年延長はすでに閣議決定で決まっていたので、今回の法改正がなくても黒川さんは検事総長になることができる。だから、“今回の法改正は黒川さんを守るため”というのはデマだと思うし、“自分の友達に長くやらせるため”といった陰謀論のようなものが出てきているのは問題だ。ただ、この閣議決定そのものに反対するのは筋が通っているし、内閣は理由について説明すべきだ。そして、この閣議決定を追認するような法改正に見えるような政治的判断も内閣としては上手い判断ではないし、時期も悪い。だから安倍内閣を攻撃するなら“閣議決定を後付けするための法改正だ”という言い方の方が正しいと思う。私は基本的に自民党を支持しているが、やはり森法務大臣の説明はいい加減すぎると思うし、野党は徹底的に追及すべきだ。私が野党だったらこれを第一にやる」との見方を示す。
15日には、松尾邦弘・元検事総長らが「黒川氏の人事は違法で解釈が成り立たない」「改正は違法人事を後追い容認するもの」「役職定年を内閣が延長できるのは問題」「検察人事へ政治権力の介入を正当化し、政権の意に沿わない検察の力を殺ぐ」とし、「フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる“朕は国家である”との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢」と安倍政権を厳しく批判する意見書を法務省に提出。会見を開いた清水勇男・元最高検検事は「いち内閣の判断をもって決めるということは、はっきり言うと、これは明らかに憲法違反だという考えだ」と訴えた。
こうした批判について、岩田氏は「これは解釈の違いということになるが、“三権分立が破壊される”“違憲だ”“違法だ”と決めつけてしまうような批判の仕方では、前向きな議論にならない」と指摘する。
「日本は議院内閣制の国なので、三権分立といっても行政と立法が非常に近しい関係にある。最高裁判所の長官についても内閣が決めて、天皇が認めるという形になっているわけで、司法と立法と行政が常に闘い合っているような三権分立だと厳密に言えるかというと、それは言えない状況にある。検察についても、例えば法務大臣が検察に捜査を止めさせる“指揮権発動”があり、佐藤栄作元総理はこれで救われた部分がある。有り体に言ってしまえば、行政の方が司法よりも強いのが現実だ。指揮権の発動を認めておきながら、今回の法改正で三権分立が壊れるという議論は本質を外していると思う」。
2ちゃんねるの創設者・ひろゆき(西村博之)氏は「国民の代表が人事権を持つことには賛成だ。ただ、閣議決定で定年を延ばすという、あり得ないことをやっているし、“今までも内閣が決めているのだから問題ない”と言うのであれば、改正法案もいらないという話になるのではないか。なぜこの時期にわざわざ問題を起こす形で改正案作ったのかとならざるを得ないと思う。時間が経てば経つほど、そもそも閣議決定に関する文書がないとか、森大臣がなぜ委員会に出てこないのかといった、説明できない、おかしなことが出てきてしまう」とコメント。「今、コロナ以外のニュースがあまりないので、メディアはこのテーマを取り上げたがる。だから国民が余計に何かおかしいと感じてしまう。でも、種苗法改正とか、今やらなくてもいいけど本当は話し合うべきじゃないの、というテーマは他にもあるし、それらは放っておかれている。結局、新しい話題が出てくると皆の興味がそっちに移るだけで、来年になれば忘れている。だから与党は強行採決してしまったほういいが思っているのだろう」と苦言を呈した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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