7月11日(土)より2ndクールが放送開始されるアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』(以下『SAO アリシゼーション WoU』)。綿密なキャラクター描写や世界観に年齢・性別を問わず多くの視聴者が惹きつけられている『SAO』シリーズの《アリシゼーション》編最終章であり、前シーズンで怒涛の展開を迎えた物語の続きが描かれる。
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ABEMA TIMESでは今回『SAO』原作小説刊行10周年を記念したテーマソング『Till the End』、そしてアニメ『SAO アリシゼーション WoU』2ndクールのオープニング主題歌『ANIMA』を歌うReoNaへのインタビューを実施。シンガー人生を歩む起点となった「音楽」、そして「アニメ」について想いを聞いた。
■キリトの「ケロイド化した心の傷」に寄り添った『Till the End』
―― 『SAO』原作小説刊行10周年記念のテーマソング『Till the End』は「消えない傷 ケロイドに変わって」「赤い 赤い 赤い血で 流せたなら」「もういっそ 獣にでもなれたら」といった、痛みや苦しみ、闇を感じる歌詞になっています。
ReoNa:最初に『Till the End』の制作にあたり、体感型展示イベント『SAO -エクスクロニクル-』の4面シアター映像に合わせて流れる楽曲だと聞いたんです。楽曲制作を担当したLIVE LAB.のハヤシケイさん・毛蟹さんが4面シアター映像のラフを見ながら作った曲で、『SAO』の今までの10年間の道のりに対して、『Till the End』=「いつか来る終わりまで」という意味合いのタイトルになっています。これまでの足跡はもちろんのこと、これからもキリトたちと一緒に歩んでいく未来に対しての想いも込めています。
『Till the End』はキリトが抱える闇、ケロイド化してしまっているような心の傷にフォーカスを当てた歌で、ひとりですべてを背負い込もうとするキリトに寄り添う楽曲です。『SAO』のゲーム世界では被弾エフェクトだったり、HPバーが減っていったりといった表現のみで、本物の血は流れないんです。現実の身体は傷まないけれど、それでも心は痛む。ゲーム上で描画されるロストを突きつけられるくらいなら、現実で血を流せて苦しめたほうが、キリトはよっぽど楽だったんだろうなって。そう考えたハヤシケイさん(作詞担当)が「赤い 赤い 赤い血で 流せたなら」と表現してくださっています。
■「心が折れているのがデフォ」「弱さは克服していない」
photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
―― そもそもReoNaさんがシンガーを目指したのは、どういったきっかけがあったのでしょうか。ご自身について教えてください。
ReoNa:私はいろんなものに向き合えなくて、逃げてきた人生を送ってきました。学校にはあまり行けないまま辞めてしまって、家にも居場所がなくて、アニメやゲームの世界を好きになったのは「現実から目を背けるため」だったんです。周りで起きる辛いことから目を背けて、いろんなことを諦めて生きてきました。
でも、お歌とアニメが好きということは何があっても止めてこなかったんです。「自分は何も持ってない」って思ったときも、お歌とアニメだけは自分の人生から手放せない。そこからシンガーを目指したんです。当時は、ライブのチケットを売るために山手線の各駅で降りて手売りもしていました。だから今は本当に夢物語のようです。お歌とアニメが私のお仕事であり続けて、これから生きていくための芯になれば良いなって思っています。
――『SAO アリシゼーション WoU』最終章のプロモーションビデオ(PV)でアスナ(CV:戸松遥)が「この身体が倒れるのは心が折れたときだけ」と叫んでいますが、ReoNaさんの心が折れた経験について教えてください。
ReoNa: 私は、もう「心が折れているのがデフォ」みたいな感じです(苦笑)。『Till the End』の「もういっそ 獣にでもなれたら」というフレーズと同じように、好きで居続けていることより、いっそ嫌いになれたり諦めたりしたほうが楽なんだろうなって。何かを好きで居続ける、何かをやり続ける、何かを大切にし続けるって、それだけでものすごく大変なことです。今でも自分自身の弱さや後ろ向きな気持ちは常にあって、それらを抱えてでも前に進むことを意識しています。
―― 自分の中の弱さを克服したいと思うことはありますか?
ReoNa:克服しないまま、傷を持ったまま歌っている私だからこそ、立ち向かえない・克服できない何かを持っている誰かに寄り添うことができると思っています。「大丈夫だよ」って無責任に言わない、頷くだけの優しさもあって良いんじゃないかなって。
失恋を慰めてくれる曲はいっぱいありますが、日々のつらさやすごく身近な不安を代わりに言葉にしてくれるものって、頑張って探してもなかなか見つからないなって感覚が自分の中にありました。「失恋した時には失恋を慰める失恋ソングがあるのに、なんで絶望した時に聴く絶望を歌った曲がこんなにないんだろう」というのがデビュー前からReoNaの主軸としてある言葉です。シンガーとして歌える立場になった今、「ReoNaとして歌いたいものって何だろう」とあらためて考えたとき、過去の自分がお歌に救われたように、“あなた”にとっての「自分の絶望を代わりに言葉にしてくれた」を今度は私が歌えたらいいなと思います。
■ReoNa「誰かの絶望を代わりに歌えたら」 ライブは「あなたに届けてるんだよ」
photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
―― ライブではどんなことを考えて歌っていますか?
ReoNa:ライブって、“届けられるあなた”が目の前にいる状態で、本当に大切な機会なんです。会場に来てくれている“あなた”の中には、本当にこれが最初で最後の機会という気持ちで来てくださっている方もいるのだろうと、毎回心に留めて歌っています。
もしかしたら実生活で本当につらいことがあって、ものすごく勇気を持って会場まで足を運んでくれた人がいるかもしれない。友達に連れられて「あんまり興味がないけど来てみた」という人もいるかもしれない。ひとりひとりの人生から時間をいただいている空間で、どれだけ「これはあなたと私、1対1で伝えているんだよ」ということを届けることができるか。歌ひとつひとつの言葉や想いをどれだけ“あなた”に届けられるか。そういうことを強く意識しながら歌わせていただいています。
過去、ライブを観に行ってアーティストと目が合うだけでうれしい体験を私もしてきました。自分がうれしいと思った体験を拡げていきたいんです。最後列や2階席の人でも、同じ空間にいる限りは顔を合わせたいですし、目も合わせたい。「あなたに届けているんだよ」という気持ちを受け取ってもらえて、ハッと気づいてもらえる瞬間があればいいなって思います。
―― その言葉に救われる人も多いと思います。
ReoNa:私は他人とも馴染めず、家族ともうまくいかなくて。本当に自分自身の殻にこもっていたとき、アニメや音楽に没入することで、初めて呼吸ができた感覚があったんです。学校に行けなくて、身近にいて顔を合わせることがある人よりも、画面を通して触れる人のほうが優しいって感じることもあって。逆に今までアニメや音楽という存在自体に救われてきましたから、本当に良かった、救われたなって思います。今度は誰かの逃げる先にReoNaのお歌があればいいなと思いながら歌っています。
■「できることなら本当に“果て”まで、いつまでもあの世界が続いてほしい」
photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
―― 楽曲の話に戻りますが、『Till the End』は「いつか来る終わりまで」という意味合いのタイトルだと聞きました。
ReoNa:実はその意味だけではなくて、作詞担当のハヤシケイさんは「『SAO』が終わらないでほしい」という願いも込めて書いてくださっているんです。いつか来てしまう物語の終わり、つまり最終話や最終章って、私もあまり得意ではないんです。世界に置いていかれてしまう感じというか、取り残されてしまう感覚があって。『SAO』に対しては「できることなら本当に“果て”まで、いつまでもあの世界が続いてほしい」という願いが私にもあります。タイトルもそうですが、「君と見たい未来」という最初のフレーズにもそれは表れています。
実は『ANIMA』(アニメ『SAO アリシゼーション WoU』2ndクールオープニング主題歌)の歌詞にも「ずっと」という単語が入っています。今回お伝えしたことを意識して『ANIMA』も一緒に聴いていただいたら、「ずっと」の響きがまた違って聴こえてくるんじゃないかなって思います。
■ReoNa『Till the End』
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【インタビュー後編】
▶ ReoNaが語る『ANIMA』にかけた想いとは――? 『SAO』世界観と共鳴する歌詞
(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project