東京高等検察庁の黒川検事長が緊急事態宣言のさなかに産経新聞の記者や朝日新聞の元記者と賭けマージャンをしていたことが報じられ、黒川検事長は賭け麻雀を認め辞表を提出。政府は22日の閣議で辞職を承認した。
朝日新聞は「緊急事態宣言中だったこととあわせて、社員の行動として極めて不適切。皆さまに不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけしたことを重ねておわびします」、産経新聞は「相手や金銭の多寡にかかわらず賭け麻雀は許されることではないと考えます。極めて不適切な行為。などとコメントしている。
23日のABEMA『NewsBAR橋下』では、橋下徹氏とジャーナリストの堀潤氏がこの問題について議論した。
橋下:検察もメディアも、このまま進んで行ったら終わってしまうと思う。そのくらい重大な問題だ。
僕はもともと賭けマージャンはそれほど非難されるような問題じゃないと思っているが、お菓子やラーメンを賭けるのは良くても、現金は1円であってもダメですよ、という建前になっているのは、お金が反社会的勢力に流れる可能性があるから。
賭けマージャンは絶対ダメですよ、というルールにしておきながら、取り締まる組織のナンバー2がやっていた。しかも“お咎めなし”って。まず取り調べをして逮捕して裁判にかけないと。それなのに法務省の内部調査だけ。ふざけんじゃない、と。政府は「1000点100円だからいいじゃん、問題は無い」と言うのなら、ゴルフでの握りや家庭内・友人間の賭けマージャンについては良いですよ、と閣議決定してから言わないと。中国や北朝鮮のようになっちゃったんじゃないの?。
堀:メディアに関して言えば、検察とここまでの関係を築いておいて、いざというときにきちんと刺せるような特ダネが取れていたんですか?と言いたい。緊急事態宣言の中でも黒川さんと麻雀をすることで何かの情報が取れて、記事に書いた、ということだったらいいけれど、仮に『週刊文春』が書かなかったとしたら、“ダマテン”、黙ってたままだったんじゃないか。
許しがたい不正義があって、それを国民に知らせたい、そのためには取材相手と関係を築かなければいけない、ということで、時には手法として様々なことをやる必要はあるかもしれない。だけど“いつかポロッと出るかも”くらいで、なあなあでやっているだけだったとしたら良くないと思うし、実際、ほとんど“発表もの”に頼ってしまっている。だから厚生労働省の村木厚子次官が逮捕・起訴されたときも、それが冤罪だったことを全く暴けないまま、あそこまで行ってしまった。
僕は経産省の元次官の方に「新聞やテレビからしか情報を得てない人は、本当のことが分かんないんだよね」と言われた。官僚組織から情報を引き出して、都合の悪いものほど世に出せるマスコミであってほしい。官庁の記者クラブだって、そのためのものだったはず。それが“互助組織”になってしまっていると思う。
橋下:取材をするための付き合いは必要だけれど、こういう形でメディアが得られる情報って、本当に黒川さんたちにとって不利な情報だろうか。結局、それらはリーク情報だ。
カルロス・ゴーンさんの事件でも、裁判が始まる前に“こんなに悪い人だ”というような話がどんどん報道に流れてきたが、あれも検察からの情報としか考えられないし、それらをメディアがただ垂れ流しているだけだったと思う。検察は自分たちに有利な情報を流して、世論誘導する。メディアは捜査機関しか知り得ない情報を得る。そういうことで報道が成り立っていたことが改めて明らかになった。
そして今回のことについて言えば、産経も朝日も、時代遅れも甚だしい。なんでこの記者たちを実名報道しないのか。もし僕が同じことをやったら、家の前にカメラを並べられ、連日ワイドショーに取り上げられ、社会的に抹殺されるだろう。どうしてワイドショーは朝日や産経に押しかけないのか。社長に会見を開かせないのか。それは、メディア同士がなあなあになっているからだ。
僕は『週刊文春』のことが大嫌いだし、記者たちの目は僕からみたら“悪魔の目”だ(笑)。本当に厳しい。でも、彼らは裏を取って、情報をきちんと調査して出してくる。これが政治とメディアの関係だと思う。
堀:誰がこのタイミングで文春に垂れ込んだのか、ということもポイントだと思う、検察庁内、あるいは新聞社内の権力闘争や刺し合いなど、色々な関係があると思う。