コロナ禍でさらに厳しい状況に追い込まれるホームレス…給付金10万円が受けられないケースも
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 8年ほど前から日雇い・派遣の仕事で収入を得ながらホームレス生活を送ってきたAさん(38)。最近ではオフィス移転の仕事をしていたものの、新型コロナウイルスの影響を受け、この1カ月、収入はゼロ。新宿区から支給される乾パンなどで飢えを凌いでいる。バックの中から取り出したのは生の人参。「もちろん、生で丸かじり。日持ちも腹持ちもいいし、体にもいい」。

・【映像】給付金10万円 "住所がないと受け取れない?" ホームレスの実態は

コロナ禍でさらに厳しい状況に追い込まれるホームレス…給付金10万円が受けられないケースも
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 路上で『ビッグイシュー』を販売している島田肇さん(49)も、緊急事態宣言が出されて以降、人出が少なくなったため売り上げが激減。雑誌がたくさん売れれば路上の代わりにネットカフェに泊まることもあったというが、今はそのネットカフェも営業していない。

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また、コロナ禍で仕事や住まいを失い路頭に迷う人も現れている。吉田修久さん(48)は派遣会社を雇い止めになり、家も職も失った。カプセルホテルに1カ月滞在したものの、所持金が少なくなり、本当はダメだが、知人の紹介で何とか辿り着いたの部屋。「5月末まではここにいられるのが、その後はまだ決まっていない」と話した。タイムリミットまで1週間。次の仕事の目途も立っていない。「『タウンワーク』も今まで見たことないくらい薄くなっている。何軒か派遣会社にも行ったが、全て断られて本当に困っている」。

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 一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は「実はここ数年、公園などで工事が行われていて、路上生活ができる場所、夜に寝られる場所がどんどん狭くなっているという問題があった。私たちは東京オリンピックの影響だろうと考えていたが、今度はそこに緊急事態宣言が加わったため、公園の一部が封鎖されたり、図書館にいられなくなるといった問題が生じていた。派遣や日雇いの仕事もなくなってきているし、炊き出しをしている団体も一部は継続しているが、屋内のものは休止になっているので、生活が苦しくなっている人は多いと思うし、支援団体への補助も必要かと思う」と話す。

 「都内ではネットカフェの休業要請に合わせて東京都がビジネスホテルの提供を行っていて、現在約1000人の方がビジネスホテルに入居されている。ただ元々、都内のネットカフェには約4000人の方がいらっしゃったと言われている。一部の方は路上生活、あるいは他県に移動されたのではないか」。

■自治体ごとに対応が分かれるケースも

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 総務省では、一律10万円の特別定額給付金について、「住居を得て住民登録を行うのが困難な場合は自立支援センターで住民登録:生活の本拠となる住所に認定される場合がある」「ネットカフェなどで住民登録:利用の長期契約&店舗管理者の同意が必要」との見解を示している。

 しかし、彼らの住処を住所として認めるのかどうかは自治体の判断に委ねられており、20年近く都内の路上で生活をしているTさん(40代)は「俺、役所に聞きに行ったの。そうしたら、渋谷区では区の基準ではそこに住民登録があって、そこに住んでいないと基本的には払わないって」仕事をしたいが、バイクにはねられて手の骨が折れているのと、足場から落ちて足首も治療中の状態だ。建築業を20年やっていたが、誘いもなくなった。窓口では“掃除ぐらいはできるでしょ?箒ぐらいは持てるでしょ?”と言われちゃって」、約5年路上で生活しているNさん(30代)も「公園の橋の下に住んでるって言っても絶対受け入れられない」と明かす。ネットカフェなども休業中の今、まさに八方塞がりの状況だ。

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 実際、渋谷区では「住民登録がなければ支給対象者とはならない」「路上や公園に住民登録することはできない」「住民基本台帳への記載がなくても支給する特別な判断を一部の自治体で行うことは困難」「ホームレスに給付金を支給するには国において統一基準を定める必要がある」としている。

 稲葉氏は「日本の公的サービス、福祉サービスは住民票に基づいて各自治体がサービスを提供する仕組みになっているので、2009年のリーマンショックの時の定額給付金1万2000円もホームレスの人たちはが排除されてしまった。今回も同じことが繰りかえされているということが言えると思う」と指摘する。

 「様々なホームレス支援団体が各自治体と交渉をしているが、支給対象者は4月27日時点で住民基本台帳に記載されている方だと総務省が言っている以上、住民票がなければ出せないと言われている。住民票がなくても、各自治体がホームレスの方の状況を把握しているのケースがあるので、本人確認ができれば支給できるようにしたらどうかとも言っているが、自治体としては総務省がうんと言ってくれないとゴーサインは出せない状況だ。もちろん東京では相部屋の施設は感染のリスクがあるのでビジネスホテルを用意し、そこで生活保護を受けられるようにしている自治体もある。一方、23区の中にも、隣の区の方がきちんと対応してくれるからと言って交通費を渡すということが綿々と引き継がれている自治体もある。首長次第というところもあるし、住所のない人たちはサービスの対象外だという考えを持った職員もいるのではないだろうか。どうしても住民票要件が外せないのであれば、せめて希望するホームレスは住宅に入れるように支援してほしい。例えば東日本大震災の時には行政が民間の空き家を借り上げ、被災者に提供した。それと似たような枠組みについても提言しているところだ」。

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 さらに生活保護についても「住まいがなくても申請ができるのが生活保護だ。しかし“水際作戦”といって、自治体の窓口で“あなたは住まいがないからダメですよ。まだ働けているでしょ”といった違法な運用をしているところも多い。“最後のセーフティネット”と言われているのに、まだまだ使いづらい。例えば生活保護を申請すると家族に連絡がいくという仕組みがネックになって申請をためらう方もいらっしゃる」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:給付金10万円 "住所がないと受け取れない?" ホームレスの実態は

給付金10万円 "住所がないと受け取れない?" ホームレスの実態は
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