今年放送の春ドラマの中で最も話題をさらっているのが、朝ドラでも大河ドラマでもなく、テレビ朝日×ABEMA共同制作ドラマ『M 愛すべき人がいて』（毎週土曜23時15分～/ABEMAでは24時5分頃～）であることは間違いない。三浦翔平、水野美紀、田中みな実ら“鈴木おさむ劇団”による斜め上をいく演技合戦と度肝を抜く展開で描かれる歌姫・浜崎あゆみの半生は、すべてが衝撃的だった。放送毎にSNS上はお祭り騒ぎとなり、毎週のようにトレンド入り。『M』熱が高じて副音声出演した伊集院光をはじめ、ドはまりする著名人は数知れず。
そんな話題作で演技初挑戦にして主人公・アユ役で初主演を飾ったのが、歌手の安斉かれんだ。ダイヤの原石であるアユを真っ直ぐに表現する安斉の姿は役柄との親和性が高く、逆境の中でこそ輝きを増す“負けないヒロイン”像を無意識のうちに体現している。一夜にしてその名前と存在を知らしめた現代のシンデレラに、ドラマ放送後の反響や怪演に対峙する心境を聞いた。
『M』を取り巻くリアクションは、すべてが想定外だと安斉は打ち明ける。「強烈なセリフも多いので、たくさんの方に見てもらえればいいなぁとは思っていましたが、撮影中は演技に必死過ぎて放送後の反響を考える余裕さえありませんでした。まさか毎週のようにトレンド入りするとは思わず」と驚きを隠せない。ドラマに対するSNS上のコメントには「すべて目を通しています。Twitterを見るとみんな大喜利のようにツッコんでいたりして、それを読むのも面白いです。注目を集めていることに対してビックリすると同時に、ありがたいという気持ち。今の状況は本当に不思議です」と感謝しきりだ。
新型コロナウイルの影響で5月末現在、新作放送も撮影も一時休止中。その状況下で再放送された第1話の副音声版やNGシーン集は、ドラマファンにはたまらない内容だった。安斉自身も再放送を楽しんだようで「NG場面で忘れられないのは、スパルタトレーナー・天馬先生役の水野さんとのシーンです。水野さんは予想外の言葉でアドリブを入れてくる方で、レッスンシーンで『イノシシを殺るくらいのパンチ！』と言われた時は『!?』状態。でもNG集を見たら翔平さんも田中さんとのシーンで笑っていたので『私だけじゃないぞ！』とちょっと安心しました」と照れ笑い。
その田中演じる眼帯秘書・礼香からは「泥棒の手をしてる！」「許さなーーーい！」との呪詛をかけられ恐怖した。それを受け止めるアユ（安斉）の怯えた表情も抜群なのだが、当の安斉は「リアルにビビっていました！」。セリフは台本に書いてあるので心の準備はあったが「田中さんがどのような演技でくるのかわからず、それがあのトーンと表情でいきなり言われたので本当に怖かったです。普段は凄く優しい方なのですが、本番になるとスイッチが入ってガラッと礼香に変わる。怯えた顔はアユではなく私そのままが出ています」と告白する。
バケツの水を全身に浴びたり、頭からオレンジジュースをかけられたり、毎話のように襲いかかる受難。安斉は「バケツのシーンは天馬先生からの愛と喝が込められてるけれど、ジュースはイジメなので気持ち的に全然違います。しかも撮影スケジュールが一日いじめ場面ということもあって、本当に悲しくなりました」というも、辛ければ辛いほど「その間にマサさんとのシーンの撮影が入ったりすると『もうこの人しか助けてくれない！』と本気で思う」とアユとの心情のリンクを感じている。ちなみにライバル役の久保田紗友らは「役に入るとガチで怖いけれど、普段はメチャメチャ優しい」とのことだ。
近々再開される撮影に向けて「クランクアップの際には心の底から『やりきった！』と思いたいので、気合を入れなおして頑張りたい」と鼻息荒く「アユを演じ切ることに必死なのでまだ先のことは考えられないけれど、お芝居の経験は今後必ずいい形で活きてくるはず。音楽面でも幅広く活躍していきたいです」。『M』での様々な初体験を糧に、安斉はさらなる飛躍を誓う。
テキスト：石井隼人
▶︎動画：『Ｍ 愛すべき人がいて』はABEMAで配信中
