河野太郎防衛大臣は15日夕方、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の停止を発表。さらに「北朝鮮のミサイルの状況に鑑みて、いつまでもイージス艦だけに頼っていくわけにはいかないということが導入を決めた根本にありました。その状況はいまだに変わっておりません」とも説明した。
・【映像】河野防衛大臣、陸上イージス計画を停止「コストと配備時期に鑑み」
今回の発表について、ロシアや東アジアなどの軍事政策・安全保障問題に詳しい東京大学先端科学研究センターの小泉悠・特任助教は「非常に驚いた。確かに揉めてはいたし、5月の段階で“新屋白紙”という話が出た時に、河野大臣は“フェイクニュースだ”と強く反発したこともあった。しかし、水面下で議論があったということだろう。ただ、“プロセスを停止する”という言い方をしているので、計画そのものが無くなったというわけではないと理解している。やはり日本を守るという意味において、私はイージス・アショアそのものの軍事的な合理性は高いと思っている」と話す。
仮に北朝鮮から日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合、まずは日本海上のイージス艦が搭載する迎撃ミサイル(SM3)で、次いで地上に配備された地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段構えで対処するというのが従来の日本の弾道ミサイル防衛システムだ。今回、ここに山口県と秋田県に配備したイージス・アショアのSM3ブロック2Aを加えることで、より強固な態勢にしようという構想だった。
「確かに、当面はイージス艦だけでもやれると思う。しかし、北朝鮮に何かあれば沖合に張り付けておかないといけないし、修理や訓練をしているものも含めると、増やせても8隻という態勢ではカツカツだ。さらに言えば、そもそもイージス艦の本体任務は弾道ミサイル防衛ではない。もともとソ連によるミサイルの集中攻撃から空母を守るために作ったものであって、海上自衛隊にとっても中国の集中攻撃からヘリ護衛艦を守るために必要なものだ。そうした本来任務に張り付けるためにも、やはり陸の上に置くことのできるシステムを持たなければならない。それはざっくり日本列島の東と西に一つずつ置くことになるし、やはりそのうちの一つは東北のこの辺りに置くことになると思う。だからこれはアメリカのためではなく、日本のためだったということも疑っていない。ただ、このまま置くのはどう考えても理解を得られないと判断したのではないか」(小泉氏)。
河野防衛大臣が見直しの理由として説明したのは、ミサイルを発射した際にブースター部分を自衛隊演習場内に確実に落とすことができず、地域住民に影響が及ぶ可能性があること、また、その対処のためにはソフトウェアとハードウェアの改修が必要で、追加のコストと時間が大幅にかかるため合理的ではない、という点だった。
これについて小泉氏は「ちぐはぐな話だと思う」と指摘。「最初に秋田県の新屋演習場に置くという話になったときにも、“ここじゃなきゃダメなんだ”と説明したはずなのに、後で“資料に間違いがありました”といった話が出てきて問題になった。そして今度は“ブースターが落ちてしまうから”、と言う。新屋演習場が便利だったからこだわったんだろうが、結局は地元からの信頼も失い、運用上も危ないということになってしまったわけで、迷走の結果、一旦白紙にせざるを得なくなったということだと思う。進め方が悪すぎたのではないかと思うし、本当に安全で、国民の理解も得られて、軍事的にも意味のある場所を選べたのではないか」と疑問を呈した。
また、韓国との緊張が高まる北朝鮮の脅威については「確かに11月にはアメリカ大統領選挙も控えているので、これから北朝鮮が弾道ミサイル発射も含めた強硬な行動を取ってくる可能性は高いと思う。ただ、少数のミサイル攻撃であれば、今までのミサイル防衛システムでも十分抑止することができる。その意味でも、あまり拙速なやり方で整備するよりは、きちんと国民の総意として“日本の安全保障はこういうものを持っていないとだめだよね”と合意を固めることが大切だし、その過程で防衛省が適当なことをしているのがわかったのであれば、一度白紙に戻した方が筋も通っていて良いと思う。イージス・アショアはもうやりません、というのであれば弱気なメッセージになってしまうが、あくまでも日本が民主的に国防をやっていくための見直しです、ということで、あれば決して弱気のメッセージにはならない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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