◆ TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』制作アニメーションプロデューサー A-1 Pictures・金子敦史氏インタビュー
2020年7月11日(土)より放送スタートするTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』(SAO アリシゼーション WoU)最終章。シリーズ最長のボリュームを誇り、全4クールに分けて描かれた《アリシゼーション》編がついに最終章を迎える。アンダーワールドで繰り広げられる《人界》軍の整合騎士たちと“闇の軍勢”との戦争の結末は、いったいどうなってしまうのか。
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今回、ABEMA TIMESでは同作の制作アニメーションプロデューサーを務めるA-1 Pictures・金子敦史氏にインタビューを実施。制作の現場で感じている『SAO』シリーズの魅力を聞いた。
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―― 金子さんから見た『ソードアート・オンライン』(以下『SAO』)シリーズの魅力について教えてください。
金子:先見性がすごくある作品ですよね。僕もアニメ・実写問わずいろいろな作品を観てきた上で企画を考えることがあるのですが、『SAO』みたいな作品に惹かれることが多いんです。それは「ゲームの世界が好き」とかではなく、「現実の世界の中に、ひとつだけ大嘘のフィクション」を入れた作品が好きなんです。
たとえば、『プラネテス』や『機動警察パトレイバー』は個人的に大好きな作品なんですけど、『プラネテス』は僕らと同じ会社勤めをしている同じ感覚の若者たちの物語なんだけど、スペースデブリという宇宙のゴミを拾う仕事という大嘘のフィクションを入れている。『機動警察パトレイバー』も東京で働く公務員の話にレイバーと呼ばれる架空の産業機械を大嘘のフィクションとして取り入れている。それを考えると『SAO』も、実は僕の好きな作品のルックに似ていると思うんです。僕はあまりネットゲームには詳しくないですが、『SAO』の世界観って、「未来に発売されるであろうゲーム」と言うフィクションを限りなく現実感の有るものとして説得力を持たせて表現出来ていると思うんですよね。
―― 設定がとても効果的に働いていますね。
金子:ああいうゲームが発売されたらやりたくなりますよね。でも以前『ソードアート・オンライン レプリケーション』というVRゲームを体験させていただいたとき、ほんの10分ちょっとだったのですが、すごく酔ってしまって……(笑)。作中の《アルヴヘイム・オンライン》(※第1期の15~25話《フェアリィ・ダンス》編で登場したゲーム)では、みんな空を飛んでいましたが、あれはどんな感じになるんだろうと想像したりもしました。そんなことを考えながら毎日仕事をしています(笑)。
―― ゲームの世界の中で物語が展開するという世界観は、今でこそよくある設定です。
金子:そこはもちろん『SAO』シリーズ全体の魅力だと思っていますが、《アリシゼーション》編に出てくる仮想世界の《アンダーワールド》に関しては、少し感覚が違いますよね。なぜ開発されたのか、どういう理由でキリトがあそこにダイブしていたのか。そこがこれまでのシリーズとは大きく異なりますし、「アインクラッド編」の生死が掛かっていたデスゲーム感とはまたベクトルの違う重いテーマにもなっています。
―― AIをどのように作り上げるか。《アリシゼーション》編のテーマについてはどのように思いますか?
金子:「人工的に作られたAIに人権はあるのか?」というところですよね。僕は『SAO アリシゼーション』第6話のアスナと菊岡誠二郎のやり取りがすごく好きなんです。菊岡は自衛隊の人間なので、最終的には躊躇なく人を殺せるAIを作り、それを軍事利用することを考えている。でもアスナは「そういう非道なことはしてはいけない」「人工知能=人工フラクトライトにも権利がある」と言うわけです。
でも菊岡は何万の人工知能の死よりも、たった一人の実際の自衛隊員の命のほうが重いと主張する。そこのやり取りには考えさせられるものがありますよね。
▲『SAO アリシゼーション』第6話「アリシゼーション計画」
金子:でも、昏睡状態のキリトが再び《アンダーワールド》に行ったときは、周りが全部NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)でAIだから、どんな気持ちで街を歩いているのかを想像すると、ちょっと怖いですよね。
他の作品ではNPCは端役になることが多いと思いますが、《アリシゼーション》編に出てくるキャラクターたちは、新しい形の触れ合いを体験している感じがするんです。仮想世界の扱い方をこれまでとは違う形で描いているのが《アリシゼーション》編なんだと思います。
―― 《アリシゼーション》編のほとんどは《アンダーワールド》内の話ですよね。菊岡とアスナのやり取りがあった現実世界の話は、ほんのわずかなシーンですが、とても興味深いです。
金子:魂の在り方や人権の在り方のテーマって、個人的にはすごく好きなんです。だから物語の中で『SAO』を開発した茅場晶彦が「最初にあんな多くの人間を巻き込んで何をしようとしたのか」は気になります。(アニメを制作する上で)僕なりの考えは持っていますが、ここでは言わないです(笑)。でも実はある打合せの場でキャラクターデザインの足立慎吾さんが川原さんにズバリお聞きした事があり……川原さんが答えて下さったんですが、その答えは今後展開される原作で明かされると思うので是非期待してお待ち下さい!
■『SAO』シリーズとの出会いは「巡り合わせだった」 フィルム数は1万枚超え
――金子さんご自身は今まで『SAO』シリーズにどのように関わってきたのでしょうか。
金子:これは巡り合わせなんですが、2012年にTVシリーズが始まってから僕はずっと関わっているんです。最初は制作進行で、2期からは制作デスク、そして『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(17年作)から、連名ですがアニメーションプロデューサーをさせていただきました。今回の《アリシゼーション》編でも、引き続きアニメーションプロデューサーをしていますが、それだけに作品への思い入れがすごく強いということは間違いないです。
―― そんな思い入れのある《アリシゼーション》編の最終章がついに7月からアニメ放送されます。
金子:劇場版は置いておいて、これまでのアニメ『SAO』TVシリーズ全てを通して見ても、間違いなく一番ハイカロリーです(笑)。純粋にアニメのフィルムの話をすると、通常TVアニメは1本(1話あたり)4000~5000枚程度が多いですが、7月から放送開始の最終章の初回からすでに余裕で1万枚以上使っています。
金子:絵の枚数が多ければ、それだけ絵がよく動くことになります。作品に求められているものがそうだからやるしかないと思っていますが、関わっているスタッフはただただ大変です。ここからさらなるクライマックスに向かうということは、戦闘があって、誰かが前へ進み、誰かが敗れるということ。それを考えると、これまでのシリーズを(カロリー的に)完全に超えています。それに応えようと鈴木豪さん・山本由美子さん・戸谷賢都さんら総作画監督陣がとにかく頑張って下さってて……!3人の個性が光る素晴らしいフィルムになっていることは間違いないです。観てくださっている方々がどんな思いを持って観てくださるかは分かりませんが、僕は最終章の2話目でもう泣きそうでした(笑)。
▲ガブリエル・ミラー(暗黒神ベクタ)
―― そのくらいすごいものができていると。
金子:はい。しかも今回の敵に当たるガブリエル・ミラー(暗黒神ベクタ)やヴァサゴ・カザルス(暗黒騎士)はかなり強敵なんですよ(笑)。今回の敵はアメリカの民間軍事会社の最高作戦責任者(CTO)ですからね。彼らの戦闘シーンはぜひ画面の隅までたっぷり堪能していただきたいです。お楽しみに……!
(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
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アニメ『SAO アリシゼーション WoU』迫力あるアクションを創り上げるアニメーターたち/アニメーションプロデューサー・金子敦史氏