2020年7月11日(土)より放送スタートするTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』(SAO アリシゼーション WoU)最終章。シリーズ最長のボリュームを誇り、全4クールに分けて描かれた《アリシゼーション》編がついに最終章を迎える。アンダーワールドで繰り広げられる《人界》軍の整合騎士たちと“闇の軍勢”との戦争の結末は、いったいどうなってしまうのか。
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今回、ABEMA TIMESではアニメ『SAO アリシゼーション WoU』のアニメーションプロデューサーを務めるA-1 Pictures・金子敦史氏にインタビューを実施。金子氏がアニメ制作のプロデューサーという仕事を通して知ったこと、未来の“アニメーションプロデューサー”に送りたいメッセージとは?
【過去記事】
・「AIに人権はあるのか?」アニメ『SAO アリシゼーション』 アニメーションプロデューサー・金子敦史氏が語る可能性
・アニメ『SAO アリシゼーション WoU』迫力あるアクションを創り上げるアニメーターたち/アニメーションプロデューサー・金子敦史氏インタビュー
―― そもそも金子さんは、なぜアニメーションプロデューサーを目指したのですか?
金子:10代の頃から映像作品に携わる仕事がしたいとは思っていたんです。映画が好きでよく見ていたのですが、映画と並行して好きだったのがアニメで、いろいろな作品を観ていくうちに、紙と鉛筆から無限の可能性が広がるアニメーションに魅力を感じ、アニメ業界を目指したんです。
―― どういった作品に触れてきたのでしょうか。
金子:いろいろありますが、影響を受けたという意味では80年代後半~90年代初頭の硬質な劇場アニメが好きでした。押井守さんの「Ghost in the Shell」はとにかく衝撃でしたね。20年以上前のフィルムなのにずっと20年先を走っている。
―― アニメ業界の大きな変化は感じますか?
金子:感じます。僕ですら感じているので、僕より業界歴の長い方々はもっと感じているでしょうね。そもそも僕が業界に入ったころはまだ、アニメオタクってネガティブなワードだったはずなんです。「アニメが好き」と胸を張って言えるようなものではなかったんですよ。当時は配信サイトもありませんでしたから手軽にアニメには触れられなかった。
―― アニメはクラスメイトに内緒で観るもの、という風潮もありました。
金子:誰かに言われるわけでもなく、大人になるにつれ、どこかでゲーム離れ、アニメ離れ、漫画離れをするのが普通という考えが主流だったと思うんです。アニメが作られた歴史を紐解けば、そもそも子供向けだったわけですし、おもちゃを売るために(アニメを)子供に見せるという目的もあったのに、2000年代になってからは「ジャパニメーション」という言葉も出てきて、海外の人にも受け入れられるようになった。僕もこの業界に入って、まだ10年ちょっとですが、多くの方にアニメを見てもらえる様になった反面、それでも扱われ方や取り上げ方に違和感を感じるときはあります。
―― アニメを取り巻く環境が日々大きく変わっていく中、アニメの制作はすごく大変そうです。
金子:僕は自分が“面白い”と思うものを疑うようにしています。なぜなら、僕が面白いと思うものは、周りに「よくわからない」と言われることが多いから(笑)。いろいろな会社でたくさんのアニメが作られていますが、それがどんなに面白いと感じても、(作品が)ヒットするかどうかは分からないじゃないですか。そうなると非常にもったいないし、やっぱり数字で成果を出すのは難しいなって思います。
―― どのような人がアニメーションプロデューサーに向いているのでしょうか?
金子:(アニメを作るには)まずアニメーターを初めとするクリエイターを集めないと始まりません。そこで制作進行の若いスタッフたちには、アニメの設計図ともいえる絵コンテを渡す際に「絵コンテっていうラブレターを配っているんだからな」と言って渡しています。若い子たちがピンと来ているのか不安ですが……。
だってこんなにたくさん制作会社があって、多くの進行の子たちがフリーランスのアニメーターに連絡して、会いに行って「やっていただけませんか?」とお願いする。アニメの本数も増加傾向にある中、そこで「あなたがくれる仕事なら頑張るよ」と言ってもらえるような人にならないと、成立しない仕事なんです。八方美人と言われようと、人たらしと言われようと、自分なりの武器や持ち味を使って多くの人を巻き込める人じゃないとアニメーションプロデューサーは難しいのかなと思います。
それに、プロデューサーや制作デスク、制作進行の仕事は、自分で絵も描かなければ、色も塗らないし、撮影もしない。正直、技術的なところでは何もできないんです。でも、間違いなくアニメ制作の根幹で関わっている仕事なんです。絵は描かないけど、自分の中の感性を信じたり疑ったりしながら良い絵に対しては素直に「良い」と言えること、逆に「今回微妙ですね」と正直に言うことも大事だと思います。
―― 「微妙だな」と思ったときに、それを伝えるのはけっこう勇気が必要ですね。
金子:たとえば、監督や演出から上がってきた絵コンテを見て僕が原作やシナリオを読んだときのイメージと違ったりした場合、「ここのシーンはこういうことだから、この表現だと不自然にならないでしょうか?」と伝えると、直してくれる人もいますが、なかなかうまくいかないこともあります。でも、直してくれたときって、僕がやりたかったことが相手に伝わったってことだと思うんです。クリエイティブなことをやってくれる人に、どうやってもらうかを指示する仕事でもあるので、間違えられないし、ご本人に直接言うのはやっぱり説得力と勇気が要りますよ。そこで相手の考えを尊重しつつ、修正のオーダーをかけるコミュニケーション能力、言葉の選択はセンスが出ると思っています。
―― それは、経験で培われるものなのでしょうか? 学生時代に「アニメをたくさん観た」とかではない?
金子:やっぱり、パーソナルな面からの人付き合いだと思います。たとえばバーで働いていたとしたら、老若男女の不特定多数のお客さんが来て、その方々にお酒を出しながら話を聞くわけで、そのコミュニケーション能力って実はすごいですよね。一度僕もやってみたいくらい(笑)。もちろんアニメを何本も見てきたっていうことも大事かもしれませんが、アニメが好きなだけでは絶対に通用しないです。
――プロデューサーは、本当に強い意志が必要だと思います。
金子:プライドは間違いなく必要ですが、制作やプロデューサーには作品を成功させるために“折るプライド”も時には必要だと思います。「俺はこれをやりたい!」って尖ることも悪くないですが「自分がやりたいこととお客さんが見たいものは違うかもしれない」という思考も持つ。独りよがりにならないように気をつけないといけません。
―― 最後に、7月から放送の『SAO アリシゼーション WoU』2ndクール(《アリシゼーション》編最終章)がどうなっていくのか、話せる範囲で教えてください。
金子:ガブリエル・ミラー(暗黒神ベクタ)とヴァサゴ・カザルス(暗黒騎士)との最終決戦に向けて、物語は更に加速していきます。最終章で気になるのは、何と言ってもキリトくんがこの世界で剣を振るうきっかけになったアリスですよね。彼女が最終話でどうなっていくかも大きな見どころになっていくと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたら幸いです。
(C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project