きのうから始まった、レジ袋の原則有料化。世界で問題となっている、プラスチックゴミによる海洋汚染を少しでも減らそうと実施されたもので、経済産業省のホームページでは「ライフスタイル転換の象徴としてのレジ袋有料化。普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」と説明されている。
・【映像】7月1日から"レジ袋有料化"プラゴミ削減対策の効果は?
有料化の対象は持ち手のついたプラスチック製の袋で、フィルムの厚さが50マイクロメートル以上のものや紙・布製のもの、植物由来のバイオマス素材を25%含むものなどは対象外とされた。
■メーカーにとっては厳しい状況に
今回の有料化について、レジ袋メーカーからは「売上が20%下落。レジ袋が悪者になっている」「東京五輪の際に海外にPRしたかったのでは?」「消費者の利便性を支えてきたレジ袋メーカーとして忸怩たる思いがある」「代替品も原料(バイオマス)が不足している。想定通りには新素材を開発できない」といった声が上がっているという。
プラスチック製品の製造を手掛ける野崎治雄・ハウスホールドジャパン社長は「工場の方では今までの3分の1から半分くらいまで減るんじゃないかとも言われているので、レジ袋を作っている立場からすれば厳しい。ただ、これだけ地球環境のことが言われているし、不要なものはお金を取ってでも減らした方がいいと思う」と話す。
コンビニエンスストア大手の対応を見てみると、セブン-イレブンが3円(特大サイズ5円)、ファミリーマートとローソンが一律3円、ミニストップが2円(特大サイズ4円)となっている。「大きさによって製造コストは変わるが、小さい物で1~2円、大きな物だと3~4円はかかる。ただ、コンビニの場合は本部が調達し、それをフランチャイズに有償で販売していた。つまり、フランチャイズの皆さんが製造コストの何倍ものレジ袋を買って負担をし、本部が利益を上げていたというのが実態だった」。
また、従来のポリ袋に代わる環境にやさしい製品には「生分解性プラスチック」「バイオマスプラスチック」等があり、野崎氏の会社でもポリエチレン使用量を従来比で40%カットした風呂敷様包装資材(弁当袋の代替品、商品名「スリムロック」)を開発している。「リユースされていたレジ袋がなくなるということは、ゴミ袋の消費が増える可能性がある。当社としても、トータルとしてプラスチック使用量を下げていこうと考えている」。
ただ、代替品の原料となるバイオマスの不足問題もある。「バイオマス原料を25%入れた場合は無料で配布可能となっているが、ポリ袋に使用されているバイオマス原料はほとんどがブラジルで作られたものだ。もともと生産量が少ないところにコロナの影響で輸入量が減っているので、作りたくても作れないという状況だ。その他素材についてもメーカーが開発しているが、価格面の問題や、うまくフィルムと混ざらないといった問題もあるので、しばらく時間がかかりそうだ」
■漂着ゴミで多いのはペットボトル…レジ袋だけが問題なのか?
一方、2018年に日本は約891万トンのプラスチックゴミを排出しているが、このうちレジ袋が占める割合は2~5%に過ぎない。また、「漂着プラスチックゴミ」の種別をみると、こちらもポリ袋の割合は非常に少なく、むしろ飲料用ペットボトルが多いことが分かる。
また、「有料化に反対ではないが、スーパー、コンビニ、ホームセンターなど、店舗によって対応を変えてほしい」「自治体がレジ袋でも家庭のゴミ出しOKと言ってくれたら抵抗なくお金を出せる」といった消費者の声もある。タレントの池澤あやかも、「コンビニはふらっと入って買い物をするところなので、レジ袋が無いと不便だ」と話す。
野崎氏は「ビーチを歩いていて、レジ袋、ましてやストローはなかなか見つからないと思う。アメリカなどではペットボトルを持っていけば10セント、州によっては20セントくれる。こうした取り組みによって、例えばニューヨークではペットボトルのゴミはほとんど見当たらない。プラスチックゴミ全体を減らすという観点でいえば、日本でも同様の仕組みを取り入れた方が現実的ではないか」と指摘。
その上で、「実際、タイではレジ袋が禁止になったことで、ゴミ袋の使用量が増えていて、トータルではプラスチック袋のトン数は減っていないのではないかと言われている。日本の場合、特にスーパーで購入した場合はかなりの家庭がリユースしていると思うし、逆にコンビニの場合はその確率が低くなってしまうと思う。ケースバイケースにするのもありだと思うし、一概にレジ袋が悪だというふうに考えない方がいいのかなという気はする」とした。
■キャッシュレス還付金の売上減対策?目当て?海外では
海外に目を向けると、コロナ対策のためにレジ袋に回帰する動きもあるという。アメリカ・カリフォルニア州では2016年にプラスチック製レジ袋の提供を禁止したが、マイバッグの感染リスクを考慮し、4月にレジ袋が無料になった。イギリスでは2015年からレジ袋が有料化されたが、感染対策として一時的に無料提供されている。関西福祉大学の勝田吉彰教授は、「マイバッグの生地に付着したコロナウイルスの生存期間は24時間程度なので感染リスクは高くない」「ただ、肉汁などが付着すると食中毒を起こす細菌が増殖する恐れもあるので注意」との見解を示した。
パックンは「世界中では70以上の国が有料化ではなくて、完全に廃止している。レジ袋を禁止すれば、結局は丈夫だがコストが高く、環境への害の大きい袋の売上が上がる可能性があるが、実際、カリフォルニアではそうなったものの、レジ袋類のゴミは70%も減った。一方、日本では燃やしたり埋めたりして処分をしているが、そうでない国があるから海に流れたり、有害な物質が流れたりする。むしろプラスチックゴミの量よりも処理方法の方が課題かもしれない。その意味では、日本はお金を払えば手に入るという政策を取った。僕はフラットでバランスが取れていると思う」とした。
元経産官僚の宇佐美典也氏は「業界の理解もあって進んだ政策ではあるが、審議会の議事録を見ると非常に不自然で、突然降って湧いたもののように感じる」と指摘する。「施行時期が7月1日というのも露骨で、キャッシュレス還元の期間が終わり、小売りの売上げが減るから、その分の利益を確保させてあげようという意図があると思う。本来の目的に沿ってどういう効果があるかを検討すべきだったのに、その資料もなく、政策として、非常に議論も決め方も雑だ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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