漫画家の花沢健吾氏の累計600万部を超える人気コミックが実写化された映画『アイアムアヒーロー』が4月23日から公開されている。同作品は、人々がナゾの感染によって変貌した生命体「ZQN(ゾキュン)」になり、世界中が感染パニックに陥るという物語。

公開前から、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ポルト国際映画祭、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭という世界三大ファンファンタスティック映画祭にて賞を獲得しており、海外でも話題沸騰だ。サバイバルホラー映画において、不可欠な仕事である特殊メイク・特殊造形統括を手掛けた藤原カクセイさんに、撮影中に印象に残ったエピソードを聞いた。

◆藤原カクセイさん 20年の経験の中でトップを誇る特殊造形の量


——映画の撮影を経て一番の印象に残ったことはなんでしょうか?


藤原:この業界に入って20年になりますが、クオリティが高めで、新規に作成した特殊造形の量が断トツのトップとなりました。それまでの1位は『寄生獣』という映画で、今回はそれを遥かに超えました。さらに、撮影は日本と韓国で行われ、私は両方を行ったり来たり。

撮影中に決定したキャストさんもいたので、とにかく時間のやりくりには苦労しました。本来は、撮影、照明、美術、録音などのスケジュールが優先されます。しかし、もともとのスケジュールでは間に合わないという状態になり、撮影の順番を変えてほしいと申し出ました。これも、この仕事に携わって初めての経験です。

——スケジュールの調整以外に、時間との戦いに勝つため工夫した点はありますか?


藤原:台本を読みながら、実際に撮影している様子を想像します。発注されたものが、例えばZQNの顔1個とか、腕1本だったとしても、撮影方法が複雑になればなるほど、撮影時のトラブルが起こりそうな場面を先に想定して、多めに作るなど工夫しました。それによって、トラブルも少なく済んだと思います。

——強くこだわった部分はありますか?


藤原:すべての造形物、特殊メイクに自信をもって対応していますが、とくに印象に残っているのは、とある人間の頭部がクラッシュするというシーンでの監督とのやり取り。壊れる頭部を作成することになっていたのですが、途中で助監督から「やめる方向になりました」という連絡をもらったんです。何度も打ち合わせをして、ここは必要なシーンだとなっていたのに何故なんだろうと、どうしても納得がいかず、直接監督と話してみることことに。

すると理由は「撮影スケジュールがタイトすぎるのと、過激すぎる」ということでした。でも、私はそのシーンにカタルシスがあると感じていて、必要だと思っていたんです。撮影してみた上で、いらないと感じるならカットしてもいいから、まずはやってみましょうとお話ししました。結果、撮影することになり、やはり監督は「気持ち悪かった」と感想を言っていました。実際に映画でどうなっているかは、観てのお楽しみにしていてください。

(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会

(c)2009 花沢健吾/小学館

映画『アイアムアヒーロー』公式サイト
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