昨年、大手芸能事務所ワタナベエンターテイメントに所属し、いよいよ本格的にタレントとしての活動をスタートした大御所ラッパー・Kダブシャイン。今後は、これまでライムスター宇多丸とのトーク番組『第三会議室』などで見せてきたチャーミングな一面を、ヒップホップシーン以外でも見る機会が増えて行きそうだ。 とはいえ、彼が日本語ラップシーンのゴッドファーザーであることには、何ら変わりがない。

そこで今回は、あらためてラッパーとしてのKダブシャインにフォーカスを絞ったインタビューを敢行し、ニューシングル「化学反応」、今年発売予定のニューアルバム、そして所属する「KGDR(ex.キングギドラ)」の今後について語ってもらった。

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■Zeebraは俺とやる時は手を抜かない

―4月27日に新曲「化学反応」をリリースされるそうですね。おめでとうございます!この楽曲はどういった内容になるのでしょうか?

去年、KGDR(ex.キングギドラ)が20周年を迎えたということで、もう一度3人体制で動き始めることは、みんな予想してたはず。で、それより先に俺のソロアルバムを出そう、と。そこに収録すべく作った曲だね。3人の化学反応を感じて欲しい。

―やっぱり2016年も、KGDR(ex.キングギドラ)としての活動があるんですね!ところで、この曲のトラックはどなたが担当したのでしょうか?

トラックはHABNERO POSSE(※BINGOとGUNHEADによるゲットーベース・ユニット)のGUNHEADが担当してる。

―早く聴きたいです! KGDR(ex.キングギドラ)の3人でレコーディングを行うのは久々ですよね?

Zeebraの曲に俺が客演したりとか、その逆とか、まあ2~3年に一度くらいのペースでは、お互いの音源に参加してはいるんだよ。あと、去年KGDR(ex.キングギドラ)としてライブをやりまくったんで。昔の感覚が戻ってきてるよ。

―いつ頃レコーディングを行ったんでしょうか?

去年の年末くらいだったかな?俺が先に録って、それを渡して。で、ウチのスタジオにZeebraが来て。

―KGDR(ex.キングギドラ)の3人で曲を作ってみての感想というのはいかがですか?

Zeebraは色んな所で色んなユニットをやってるじゃない?その中には、やっつけ仕事もあったからさ(笑)。でも「今回のは本気でやってるじゃん?」って。やっぱ「俺とやる時は手を抜かないんだな」って喜びがあったよね。本人も「バレてた~?」って言うと思うよ(笑)。

―今回の「化学反応」は、ケーダブさんの2016年ソロ・プロジェクトの第1弾との事ですが、年内にアルバムをリリースされるそうですね。

今年中に。あと2、3曲で終わるんだよね。まあカニエみたいに、後から「コレは入れない」とか「タイトル変える」とか色々やるかもしれないけど、秋までには完成させたい。秋以降はギドラで動き出したいので。

■ニュー・アルバムに込める思い ~「これから先は今までと時代が変わってくる。自分の中に革命を起こそう」

―オリジナル・アルバムをリリースされるのは久々ですよね。どんな内容になるのでしょうか?

アルバムで言えば、Radio Aktive Project(※K DUB SHINEとDJ OASISのプロジェクト)の『neworlder』が2009年で、ソロでは『自主規制』という半分がグレイテスト・ヒッツみたいな音源が出たのが2010年。だから6~7年ぶりのリリースになる。やっぱり以前とは考え方とか物の見方も大きく成長したとは思うので、それが曲にも反映されてると思う。ただアルバムを作ってる時って、頭の中が抽象的になってるんだよね。

だから最初からコンセプトがキッチリ出来ていたかというと、そうでもない。何曲か作ってるうちに、次第に見えてきたという感覚だね。 最近で言えば熊本で地震があったし、5年前には東日本大震災もあった。海外に目を向ければ、世界中で紛争やテロが起きている。そういう状況を見て「キングギドラのリスナーたち、もっと言えば我々日本人って、今の世の中をどう考えているんだろう?」っていう気になった。

だから俺が考えていること、例えば「こういう風に生きていく」っていうのを曲にした。聴いてくれた人たちが刺激を受けてくれれば良いな、と。とにかく、これから先は今までと時代が変わってくる。従来のやり方だと通用しない場面がいっぱい出てくる。だから若い人たちは新しい感覚や価値観を持って、世の中に向き合わないといけない。今までみたいな古い考え方をしてると、押しつぶされて行ってしまうんじゃないかな。だから「自分の中に革命を起こそう」みたいなメッセージを込めて作ってる。

―客演も気になります。若手の起用などはありますか?

その辺の曲は、これから作ろうと思ってるんだよね。現状だと「化学反応」ではZeebraとDJ OASISをフィーチャリングしてる。あと宇多丸、DELIと一緒に出した「物騒な発想(まだ斬る!!)」も入る。2012~13年に出してきたシングル曲は、基本的に全部入る予定。

―アルバム全体を俯瞰してみると、トラックの傾向はどのような感じになりそうですか?

いつもパートナーとして曲を作っているDJ OASISの色は強い。それは俺のキャラクターでもあるからね。その一方で、例えば「物騒な発想(まだ斬る!!)」は、YAKKO(※DELIとのユニット”AQUARIUS”などで知られる)が、さっきも話したけど「化学反応」はGUNHEADが作ってる。あと、DJ WATARAIとかB.Lからも曲をもらってる。

実は自分で作った曲もあって、これは権利問題がクリアになれば、という感じ。残りの2~3曲は新しめのトラックメーカーが良いかなとも思うんだけど、あまりに新し過ぎることをやると古くからのリスナーが引くからね(笑)。そこは加減が必要かな。

―お話をうかがってると、ケーダブさんのアーティスト人生の中で大きな節目と

なりそうな作品だよね。 まあ、毎年年齢を重ねてくわけだし、世の中もめまぐるしく変わって行くので。そこにちゃんと対応して行かないと…。自分のことだけじゃなくて世の中のことが心配になってしまって、真剣に考えてるよ。そこに関しては、ずっと変わっていない。

■最近の日本語ラップシーンについて~「もっと韻踏め。もっとヒップホップについて勉強しろ」

―変化といえば、最近日本語ラップシーンではTV番組『フリースタイルダンジョン』などの影響もあって、フリースタイルがブームになっています。そのあたりはどう捉えていますか?

いやー、喜ばしいことだよね。『フリースタイルダンジョン』は、AbemaTVでもやるんだよね?

―はい。『フリースタイルダンジョン』に参加しているような、若いラッパーに思うことはありますか?

最近の子達に言いたいこと?うーん、もっと韻踏めってことかな。最近観たファンタのCMなんかも、悪くはないんだけど踏んでないよね。

―Twitterで「古いスプライトのCMを見ろ」的なことを仰ってましたよね。

あ、見た?アメリカのスプライトのCMって、80年代からヒップホップ・アーティストを使ってるんだよね。「スプライトといえばラップのCM」っていうイメージが定着してる。で、ファンタも折角ラップを使ったCMをやるんなら、もうちょっとね…。

 まあラップとヒップホップを勘違いして欲しくないんだよね。どっちが上ってわけじゃないけど、ヒップホップはもう少し大きなものだから。

本気でやるならヒップホップをリスペクトして、学んでください、と。もちろんバトルに関しては真剣に勝負していると思ってるよ。ただ、単にフリースタイルだけ出来てもね。メッセージがあったり、詩的表現として成熟してたりってのがないと。ただただ思った事を口汚く垂れ流すんじゃなくて、韻を踏んで、本当に言いたいことを一行一行にまとめて、それを重ねてくのがラップの面白さだと思うので。三小節くらいにまたいで1個のことを言ってても、俺にとっては全然面白くないし、さらにそこで1回も韻を踏んでなかったら、それはもう「さよなら」って感じ。

―お客さんは、般若さんや漢を知らない世代も多いみたいです。

ええ!?もっと勉強しろって感じだよね(笑)。なんだってタダで聴けちゃう時代なんだからさあ。若いヤツらは「ウゼー」って思うかもしんないけど、やっぱり音楽とか文化は歴史が大事だから。アートがどうやって進化して行ったかを知らないと、次にどっちに進んで良いか分かんなくなると思うんだよね。同じ所をグルグル回る感じになるかもしれない。その辺は日本のヒップホップに対して懸念してるよ。

―単なるラップ・ミュージックとヒップホップの一部としてのラップを分ける物ってなんだと思います?

これね、一言じゃ分かんないと思うんだよね。例えばケンドリック・ラマーとかJ Coleっているじゃん?奴らは多分、誰よりもヒップホップの歴史に詳しいはずなんだよ。オールドスクールから、いわゆるミドルスクールから、ギャングスタラップから全部聴いて、今の自分達の作品を作ってるから。

だから、あいつらはヒップホップなんだよ。ただアメリカも、ポップだったりロックだったりエレクトロだったり、ラップが入ってくる楽曲は沢山あるけど、多分そいつらは自分がヒップホップをやってるとは思ってない。「ラップではあるけど、ヒップホップではない」って。

―そんなケーダブさんが、最近注目している若手ラッパーは?

もう人気があるラッパーだから、「若手」とは違うかもしれないけど、一緒に曲をやったAKLOとかKOHHは可愛がってるよ。

―KOHH、AKLO、SALUなどの若手ラッパーを、ケーダブさんきっかけで知るリスナーもいそうですね。それでは最後になりますが、読者にメッセージをお願い致します。

ラップが生まれた起源の話とかはいつでもしてあげるから!聞きたい人は僕に直接会いに来てくれても良い。でも若者にそういう話をすると「俺、その辺興味ないんすよー」とか言うの。でも、俺の作品に対しては「リスペクトしてんすよー」とか言ってくれるの。もう、何なんだろうなって。おれのことは好きだけど、俺の親は嫌いみたいな(笑)

まあ、みんなニュー・アルバムに期待して。待ちくたびれないように、シングルを連続リリースしていくので、まずはそっちを聴いて欲しい。

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・4月27日(水)に2年ぶりニューシングル「化学反応 #kgdr」をリリース、iTunes Store、amazon music 他、各音楽配信サイトにて配信予定

・『#日本で一番カワイイ女の子をこの番組が、決めちゃうゾTV』はAbemaTVで毎週金曜日20:00 ~ 22:00にて放送中

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