5月27日(金)から、映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ 」が公開。さまざまなドキュメンタリー映画で体制や権力を批判し、社会問題を斬ってきた巨匠 マイケル・ムーアの最新作だ。
数々の侵略戦争をしてきたものの、一向によくならないことに悩んだアメリカ国防総省の幹部は、天敵ともいえるムーアに相談。ムーアに課せられたミッションは、“侵略者”となり、世界の「ジョーシキ」を盗むこと。訪れた国で、数々のアメリカにはない「ジョーシキ」にムーアがぶち当たる……。
18日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、アメリカ人タレント、デーブ・スペクター氏とイタリア人料理研究家、ベリッシモ・フランチェスコ氏がゲスト出演。映画をもとに、世界の常識についてトークを繰り広げた。
■ノルウェーの刑務所は、何故「快適」なのか
映画では、なんと牢屋が「一軒家」であることに驚くムーア監督。快適そうなリネンが揃えられたベッドに趣味のものでいっぱいのデスク、とまるで「普通の」部屋である独房。壁には女性の水着ポスターが貼ってある。リビングルームもあり、所内では自転車に乗る人も!自由だし、いつでも逃げられそう…。
実はノルウェーの刑務所は「快適」ことで有名。番組では、Skype中継にて、ノルウェーを拠点に活動しており、刑務所事情にも詳しいジャーナリスト・鐙麻樹(あぶみ・あさき)さんに話を聞いた。
――ノルウェーの刑務所は、全てこういった感じなのか?
あぶみ)
マイケル・ムーアが行ったのはバストイ刑務所。場所によって雰囲気は異なるが、「人間らしい生活ができるように」という点がポイントなので、どこも快適にととのえられている。
刑務所は、「罰するところ」ではなく、「リハビリをさせて社会復帰させる」場所。日本と比べても、相手を信頼することを重視する社会。
――あぶみさんが行ったことのある刑務所は?
あぶみ)
ボトゥセン刑務所に取材したことがある。ここは世界で初めて、刑務所にいる人たちが刑務所の中だけでなく、外にも流すラジオ番組を作った。
――刑務所に「ペナルティ」という意味合いはないのか?
あぶみ)
厳しい環境におくことが刑罰という考えがノルウェーにはない。外国からすると理解し難いシステムかもしれないが、制度を厳しくしようとする動きは(今のところ)国内にはない。
■死刑や終身刑がないノルウェー、77人殺しても判決は「21年」
社会奉仕に理念を置いた刑務所の在り方について世界が注目した事案がある。
2011年、アンネシュ・ブレイビク受刑者は爆破テロと銃乱射で77人の命を奪った。このブレイビク受刑者への判決は、禁固21年。この判決に対して、ノルウェーの国民からはどのような意見が出たのだろうか?
あぶみ)
禁固21年は、国内でもめったに出ない最高刑。死刑や終身刑はノルウェーにはない。この人は特別なので、出所することが議論にはなったが、事件当時は、「憎しみや悲しみにかられて制度を厳しくするのはむしろ彼の思う壺なので、そうしたくはない」という世論があり、犠牲者の家族からも同様の意見が出て、結局現状維持がいいという声が大きかった。
とはいえ、21年後にノルウェーの裁判所がどういう判断をするのかは不明。そのときに危険人物とされたら、まだ刑務所にいることになるだろうといわれている。今の時点で、制度が機能しているとは思うが、これから移民や難民が増えていくなかで維持できるかはわからない。
■国によって異なる「刑罰」の捉え方
デーブ・スペクター氏は
「納得がいかない。彼がいい人間になるために犠牲者を出していいというのは。遺族や関係者にしたら…。刑罰っていろいろあって、更生だけで済むのかという話。1人が亡くなっただけではなく、家族だって普通の生活が送れなくなるなど犠牲になる。これはあまりにも…。」
と言葉を失う様子をみせ、一方ベリッシモ・フランチェスコ氏は、
「イタリアでは、刑務所で殺されるケースもある。国の文化にあわせて、ものの価値観は違う。ノルウェーはそれがベストな方法なんじゃないですか」
と、国によって事情が異なることに対し、理解を示そうとした。
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