それまでのお笑いテイストから一転、感動の大団円を迎えたテレビ朝日系連続ドラマ『M 愛すべき人がいて』。田中みな実扮する独眼竜秘書・姫野礼香の右目の真相も明かされ、マサ(三浦翔平)への愛に悲しくも美しいピリオドが打たれた。
しかし“眼帯ロス”になるのは早い。礼香の半生と初恋を描くABEMA限定配信の連続ドラマ『L 礼香の真実』がまだある。『M』とは違い、最後の最後まで異才・鈴木おさむによる斜め上を行き過ぎる衝撃のみが待ち受ける。そして新たなる才能も開花した。高校時代の礼香が一途に想いを寄せるもう一人の“マサ”こと、正幸に扮した若手俳優の中尾暢樹だ。
クラスのカースト下位にいた小学校時代、礼香(中川梨花)はクラスメートの正幸に親切にされたことから、高校時代も正幸の敵になるものをすべて地獄に突き落としてきた。成績優秀でイケメンの正幸を毛嫌いする芥川先生は半殺し。成績1位の座を奪おうとしたガリベン・真一には色仕掛け。マサを狙う学園のマドンナ・ルイには接着剤攻撃で傷を負わせた。影に日向に頼まれてもいないのに、すべては愛する“マサ”のために。だが正幸も身の回りの異変に気付かないわけがない。『L』最終話となる第7話で、ついに二人は対峙する。
「会って確認したいことがある」。正幸から手紙を受け取った礼香は、放課後に指定された音楽室へと向かう。正幸に対してこれまでの出来事をすべて告白した礼香は「正幸君がずっと好きだった」と初めて自分の気持ちを伝え、正幸を殺して自分も死のうと花瓶を手に取る。礼香の正体に恐怖する正幸!…かと思いきや、正幸は我が意を得たりとばかりに礼香への愛を口にする。
礼香を思い続けるあまり毎日体を熱くさせていたことを打ち明ける正幸は、あっという間に白ブリーフ一枚の姿に。数年にわたる熱が一気に冷めた礼香に向かって「わかるだろぉ?俺が好きだってこと、わかるだろお!?礼香ちゅわあんっ!」と股間の高ぶりをアピールしながら突進していく。
白ブリーフ姿で礼香を押し倒し、馬乗りになった体勢からの「ひとつになりたいよお~!」と大絶叫する中尾の顔には、本格的俳優デビュー作にして初主演ドラマ『動物戦隊ジュウオウジャー』(テレビ朝日系)での爽やかさはない。あるのは鈴木おさむが作り出した異界に対して忠実に奉仕する姿勢だけだ。
オアシスのような爽やかな青年の顔から一転、緩んだ表情を浮かべる変態顔に。この中尾の俳優としての力量なくしては、数年にわたる礼香の一途な恋の破壊は成立しなかった。テレビ朝日系の特撮ドラマで俳優として本格的に走り出した中尾は、古巣が生み出したドラマのスピンオフ作品で俳優としての成長を見せて恩を返した。田中みな実に中川梨花、そして中尾暢樹。『M』や『L』から飛び出した新たなる才能の飛躍に今後期待大だ。
テキスト:石井隼人