卒業で損害賠償、SNS投稿や生配信は“ノーギャラ”も…コロナ禍で浮き彫りになるアイドルの法律問題
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 今月4日、地下アイドルの橋本愛夢さんがTwitterで「突然、運営側から損害賠償するよう求められたので、信頼関係を維持することが困難になり、卒業を早め 脱退することになった」と暴露した。5人組グループに所属していた橋本さんは、卒業の意思を事務所に告げたところ、「契約上、辞める際には何らかの損害賠償が発生する」と言われたのだという。

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 事務所は『ABEMA Prime』の取材に「彼女が辞めることで、イベントのキャンセル料や収録済の作品の撮り直しなどの経費が発生する。契約上、これを損害賠償として請求するかもしれないと説明した」と回答した。その後、弁護士を通して話し合った結果、事務所側が損害賠償請求を行わないことで和解。橋本さんは10月卒業予定のところ、今月、事務所を退所した。

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 NGT48メンバーの暴行事件や農業アイドルの自殺、そしてネットの誹謗中傷など、アイドルと事務所、ファンにまつわるトラブルは跡を絶たない。そんな中、7月に発売された『地下アイドルの法律相談』という本が話題を呼んでいる。

 著者のひとりである深井剛志弁護士は「辞める時にお金を請求されたといったトラブルが多い。中には数百万単位の金額を請求してきたケースもある。誤った法律論を振りかざすなど、経営者、事業主として備えるべき法的知識が事務所側に足りていなかったり、アイドルの側も法律に対する知識が乏しかったりする」と話す。

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 「契約期間が残っている時に辞めたいというアイドル、“これで解決するなら”と、払ってしまった後で相談してくるアイドルもいる。また、何百万円もの額を請求されているケースもある。相当と認められる範囲に賠償額は制限されるべきだが、普通に働いている人が辞めるというだけで100万単位のお金を請求されるのはおかしい。きちんと話し合って辞めた以上、そこまでの損害は生じないということが普通だ。取り返すことが可能でも、事務所との縁を切りたいとか、次の事務所が決まっているのでと諦めてしまう子もいる。そして難しいのが芸名だが、最近ではそれぞれのアイドルや芸能人に固有の人格的な利益だという説が主流になってきていて、裁判でも芸名を継続的に使ってよいという判決が出ている」。

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 また、深井弁護士はコロナ禍に伴う活動の自粛によって経済面で厳しくなった事務所やアイドルの間で今後トラブルが増えると考えている。

 そのひとつとして挙げられるのが、ネット配信のギャランティに関する問題だ。これまで出演費や特典会を歩合給で受け取っていたが、契約で配信はプロモーションの一環で無給という規定になっていため、配信での活動が増えても給料をもらえないという相談があったそうだ。「全く想定していなかったことだと思うが、事前に話し合って“こういう場合のネット配信の給料はこういうふうに決めよう”等と、覚書で決めておくべきだった。そういうことをしなかったために、ずるずると事務所に悪いように使われてしまって、無給になってしまっていた」。

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 こうした問題について、アイドル歴10年の寺嶋由芙は「“お世話になっているから…”と思えば思うほど、“言ってはいけないのかな”となってしまう。追い詰められて精神面や体調面に出てしまい、とにかくお金を払ってでも辞めたい、と言っていなくなってしまう子も確かにいる。そういう状況は正していかないといけない」と話す。

 「私は事務所を3社渡り歩いてきたが、ルールがそれぞれ違っていた。ギャランティとしてもらえるところもあれば、配信ライブのチケットがいくらであろうと、投げ銭がいくらであろうと固定給というところもあった。やはり最初のうちは“売れないと給料ないよ”と言われることもあり、“自分たちの頑張りが足りないので、お金がもらえないんだ。実際にお客さん少ないしな…”と感じてしまう今なら“コロナで事務所も大変。ライブができないからしょうがない”と言われてしまうと、“そっか”と落ち込んだまま終わってしまうアイドルもいると思う」。

 深井弁護士は「本にも書いていることだが、長時間拘束され、激務であるにも関わらず、売れていなければ給料を出さなくていいのかという問題提起だ。もちろん独立事業主のように働いているアイドルもいるが、やはり多くの地下アイドルたちは事務所の指揮下、命令下で働いている場合が多い。やはり労働者として働いているのに近いので、売れていなくても給料はきちんと払わなければならないという裁判例もある」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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SNS投稿や生配信はノーギャラ!? コロナ禍で浮き彫りになったアイドル業界の"グレーな契約問題"
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