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 殺人、自殺、孤独死、無理心中……などの死亡事故が起きた「事故物件」に住み続ける芸人・松原タニシ。彼の体験談を綴った著書「事故物件怪談 恐い間取り」の映画化が決定。2020年8月28日より、全国公開される。メガホンを握るのは『リング』シリーズ、『仄暗い水の底から』などで知られるジャパニーズホラーの巨匠・中田秀夫監督。主人公の売れない芸人ヤマメ役を亀梨和也(KAT-TUN)が演じるほか、奈緒瀬戸康史江口のりこ、木下ほうかなど、豪華な俳優が名を連ねる。錚々たるメンバーで、華々しくスクリーンが幕を開けるその瞬間も、ジメつく「事故物件」に住み続ける原作者・松原タニシにインタビューした。

「僕が見学に行った日に、助監督用のモニターが急に真っ暗になったそうです」

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――本日はよろしくお願いいたします。まずは今回、映画化のお話を聞いたときの最初の感想から教えていただけますか。

松原タニシ(以下、タニシ): 最初は、「なにを言っているんだろう」って感じでしたね。どうしても自分のこととは思えないというか。素直に「やった!」というよりは疑っていました。

――ドッキリだと思ったんですか。

タニシ:(笑)事故物件に住んでから、疑心暗鬼に陥ることが多くなったんです。なにに対しても疑う癖がついてしまったんですよ。映画化もなにか裏があるんやないかって。

――もしかして、霊の仕業だと思ったんでしょうか。

タニシ:霊の仕業とは思わないです。全く。いや、はっきりした理由はないんですが、とにかく疑ってしまいました。

――現実味が沸いたのはいつごろですか。

タニシ: 1月に全国ニュースになって出たときに「おお、ホンマなんや」とやっと思えました。Twitterのフォロワー数が増えて、何年も音沙汰のなかった知り合いから連絡が来て、実感がわきました。

――信じられてよかったです。監督を務めるのは、Jホラーの巨匠・中田秀夫監督ですね。

これに対しては信じられていますか。

タニシ:今はもう信じています(笑)。率直に嬉しいです。『リング』はもちろん、僕は『女優霊』がめちゃめちゃ怖かったという思い出があるので。その監督に撮ってもらえるなんて、逆にいいんですか? みたいな。とても恐縮しています。

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――撮影現場に見学には行かれましたか。

タニシ:はい。映画が作られていく過程を生で見られたのは面白かったですね。あとは、役者の皆さんの切り替えの早さには驚きました。さっきまで談笑していたのに、カメラが回ったら顔つきが変わって役に入るんですよね。

――ホラー映画には怪奇現象がよくあると聞いたことがありますが、今回もそのようなことはあったんでしょうか。

タニシ:僕が見学に行った日に、助監督用のモニターが急に真っ暗になったそうです。しかも、僕が帰った直後に。別の日にも、僕が見学に行くと、原因不明で照明が一つ切れました。それは、僕が帰った直後に直ったという話です。

――怖いですね。タニシさんになにか憑いているんでしょうか。このインタビュー、録音できてなかったらどうしよう。

タニシ:そしたら面白いですね。へへへ。

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――完成作品を見た感想を教えてください。

タニシ:いや~、ホンマに面白かったですね。いい意味で裏切られました。怖いだけじゃなくて、人間ドラマやラブロマンスがあり、くすっと笑っちゃうシーンもあって、さらに爽快感もある。1つの映画で、こんなにいろんな感情を刺激されるなんて、驚きました。

――エンタテイメントとして楽しんだ一方で、ご自身の体験だと親近感がわくようなシーンはありましたか。

タニシ:随所に散りばめられていました。おお、この体験がここで来たか!みたいな。めっちゃいいところに出てくるんですよ。構成の妙ですね。

「将来も事故物件に住み続けたい」事故物件に住んでいれば、必ずなにかが起きるから……

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――タニシさんご自身のお話も聞かせてください。事故物件に住んだきっかけは、番組の企画だったそうですが、抵抗はなかったんでしょうか。

タニシ:もちろん、ありましたよ。怖かったですね。企画は、一軒目の引っ越しが終わってから始まりました。引っ越しは昼間に終わったんですが、夜から撮影スタートというスケジュールでした。しかし、カメラが回る前にだんだんと日が落ちてきて、なんだか怖い雰囲気が漂っている。今、怖いことが起きたらどうしよう。カメラに残せなかったらただ怖いだけやん、という非常に複雑な恐怖心があったのを覚えています。

――いろんな意味で怖かったんですね(笑)。事故物件は住んでいるうちに慣れましたか。

タニシ:住み始めて1カ月過ぎたくらいから慣れてきました。最初にオーブが撮影出来て、ラップ現象があって、後輩の後ろにニット帽をかぶった男がピッタリとくっついていたり、交通事故にもあいました。いろんなことを一気に体験した後に、「でも自分は生きているな」という、なにかを達観したような気持ちになりました。オーブは飛ぶけど、俺は無事だぞと。そこに至った時に怖いという感覚はなくなりました。

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――怖いこと、悪いことが起きている一方で、タニシさんは本が売れたり、映画化されたり、うれしいことがいっぱい起きていますよね。それに対してはどう捉えていますか。

タニシ:それは単純に誰もやらないことをやっているから注目されているってことでしょうね。

――最後の質問です。将来的に事故物件ではない新築の霊の出ない家に住みたいという気持ちはありますか。

タニシ:しばらくは事故物件に住みたいですね。事故物件に住み続けていて、不思議なことが起きたときって、「新しい発見をした!」みたいなうれしい気持ちになるんです。僕は事故物件で常になにかを待ち続けています。事故物件に住んでいればなにかが起きる。将来的にもいい感じで付き合っていけたらいいなと思います。

――ありがとうございます。今後の恐怖体験も楽しみにしています!

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ストーリー

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売れない芸人が、「事故物件」に住んでみた―

芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)は、中井大佐(瀬戸康史)とお笑いコンビ<ジョナサンズ>を組んでいたが、全く売れず、結成から10年目となり、これ以上続けても無理だと感じた中井から、コンビを解散し放送作家になると告げられる。

突然ピン芸人となり途方にくれるヤマメは、番組プロデューサーの松尾雄二(木下ほうか)からTV番組への出演を条件に「事故物件に住んでみろ」と無茶ぶりされ、殺人事件が起きた物件で暮らすことに。そこは一見普通の部屋だったが、初日の夜、撮影した映像には白い“何か”が映っていたり、音声が乱れたり、様々な怪奇現象が。

OAした番組は盛り上がり、ネタ欲しさにさらなる怪奇現象を求めるヤマメは、不動産屋の横水純子(江口のりこ)に新たな事故物件の紹介を依頼。その後も様々な怪奇現象に遭遇し、ヤマメは“事故物件住みます芸人”としてブレイクしていく。

一方、<ジョナサンズ>のファンで、メイクアシスタントの小坂梓(奈緒)は、人気が出るほど危険な状況に陥っていくヤマメを密かに心配する。だがレギュラー番組も決定したヤマメは、次なる事故物件を求めて再び不動産屋・横水の元を訪れる。

そしてある事故物件で、ヤマメの想像を絶する恐怖が待っていた―

取材・テキスト:氏家裕子

写真:野原誠治

(C)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

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