新型コロナウイルス対策について積極的に意見発信を続けてきた神戸大学の岩田健太郎教授が22日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演。約3700人の乗客・乗務員のうち、712人が感染、13人が死亡(2020年8月20日0時時点)したダイヤモンド・プリンセス号の乗船について、改めて振り返った。
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乗船の経緯について岩田氏は「3000人の乗員・乗客の方がいるので、何人が感染しているかわからない。そういう不明瞭な状況で、横浜に近づいてきた。当時、政府も厚労省も、どうしようかとだいぶ悩んだようだ。とりあえずは降ろさないという判断をしたが、これは日本に感染者がほとんどいなかったので、国内で広げるのが嫌だったというのがあったのかもしれない。いずれにしても今よりもはるかにPCR検査の能力がなかった。ただ、厚労省も“陽性者はそんなに出ないだろう”と高をくくっていた。しかし蓋を開けてみたら、どんどん陽性者が出てきて、困ってしまった。船の中で何が起きているかわからないので、私はすごく不安になり、“なんとしても船に入りたい”とメッセージを出していた。すると厚労省の官僚の方から“入れてやってもいい”というメッセージを頂き、2月18日に入ることになった」と説明。
「まずDMAT(災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム)で救急のお手伝いみたいなことをやり、顔を覚えてもらったら、ちょっとずつ感染症対策をやりなさい、というのが厚労省の官僚の方の作戦だった。しかし連絡が行き届いておらず、DMATの隊長から“君は救急医療なんて何も知らないだろう。感染対策が専門なら、感染対策をやってくださいよ”と言われた。実際、船内の感染対策のやり方は非常にまずく、厚労省の方が背広を着てやらざるを得ないなど、専門家の目から見ると悲惨な状況だった。そこで感染対策をやり始めたが、厚労省サイドのある人物が気に入らなかったようで、“すぐに出ていきなさい”と追い出されてしまった」と振り返った。
岩田氏は下船後、内部の状況をYouTubeで発信。この映像が大きな話題を呼んだ。「ルール違反というわけでも、動画の中身が間違っていたということもない。ただ、世界中がダイヤモンド・プリンセス号に注目する中、私が日本語だけでなく英語でもメッセージを出したことで再生回数が増えてしまった。単に船内の感染防御策の基本ができておらず、船内の人がかわいそうですよ、という話をしたかっただけだが、国内では野党とそれを支持する方々、そして自民党政権を支持する方々たちが場外乱闘を起こしてしまった。YouTubeにアップした翌19日に厚労省でも感染症対策を格上げし、やり方を変えた。感染の対策をきちっと変えるという目的は果たしたし、私も含め色んな方への誹謗中傷が見るに堪えなかったということもあった、動画は削除した」。
その上で、「船に乗っていた方を降ろすかどうかは重大な決断だし、どちらが正しいかは即断できないので、船から降ろさないという厚労省の判断も全否定されるものではない。ただ、3000人以上の方を留め置くのであれば、船内で感染が起きないよう最善をつくすべきだったということ。現場が頑張っていたのは事実で、非常に危機意識高くやっていたので、全力を尽くしていたということについては全く異論はない。ただ、感染防御の技術や知識といった専門性が不十分な素人が指揮を執ってしまった。現に色んな国の方が帰国後に発症している。隔離期間が終わって、降りていいですよ、自由にしてください、と言われて降りた方も発症している。さらに厚労省の官僚の方、検疫所の方、DMATの方も感染している。こうしたテクニカルな失敗は、昔から日本にある失敗の構造、システムの問題だ。しかも厚労省も政府も、二次感染が起きた、という事実を否定している。なぜかといえば、外国籍の方が帰国してから発症したのは二次感染にカウントしてないからだ。感染症研究所の報告も二次感染があまり起きていないという途中経過のデータで、続報は出していない。ダイヤモンド・プリンセス号以外の問題も含め、政府や厚労省はデータを直視していない。もっと言えば、なかったことにしているところもある。そこが残念だ」と話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)
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