差別に貧困、家庭内暴力…様々な“分断”を目の当たりに ビン・リュー監督が12年間撮影し続けた“ラストベルト”の現実
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 11月に行われるアメリカの大統領選挙で、トランプ氏の再選のカギを握るといわれる地域がある。アメリカの東部から中西部にかけた地域で、繁栄から見放された土地として知られる「ラストベルト」。2016年の大統領選では、この地域の人々による投票がトランプ大統領の誕生に大きな影響を与えた。

【映像】ビン・リュー監督インタビュー

 その中の街の1つ「ロックフォード」で育った若者たちを12年間にわたり撮影し続けた映画監督を、『ABEMA Morning』の住田紗里アナウンサー(テレビ朝日)が取材した。

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 かつて栄えた自動車や宇宙航空などといった重工業が衰退し、廃墟も立ち並ぶ街、イリノイ州ロックフォード。この街を舞台に、それぞれに鬱屈した思いを「スケートボード」にぶつけ、成長していく若者たちの姿を記録したドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』。手掛けたのは、これが初めての監督作となったビン・リュー監督だ。

住田アナ:あなたにとってスケートボードはどんな存在?

リュー監督:10代からスケートボードを始めたんだけど、自分の人生のベースを作ってくれたと思います。実際に、映像や写真を撮ることや多くの人との出会いなど、スケートボードは10代という成長過程の僕に色々な世界を見せてくれました。

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 リュー監督は8歳の時に移り住んだロックフォードで、母親が再婚。その再婚相手から暴力を受け、13歳の時に逃れるようにスケートボードを始めた。

 そこで出会ったのは、同じような境遇で育った仲間たち。“豊かさ”を失い、虐待や暴力があふれたこの街で、リュー監督はスケートボードを支えに暮らす仲間たちとスケートビデオの撮影を始め、その後も12年間にわたってカメラを向け続けた。

リュー監督:スケボーをする人に出会って、面白いと思ったら話を聞いていて、その中で『大人になること』『自分のアイデンティティ』『家族との関係』についてオープンに話してもらうということをしていました。全部が全部面白くて、グッとくるというわけではなかったけど。

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 親しい関係性を生かし、飾らない本音や時にみっともない姿まで、カメラを通して友人たちを見つめ続けたリュー監督。それぞれの悩みも変化していく中で、仲間の1人がパートナーに暴力をふるっていた事実を知り、自身や母親が義理の父親から暴力を受けた過去を持つリュー監督は、初めて自分自身や母親にもカメラを向けることを決断した。

リュー監督:理由は2つあって、一つ目は自分と母親の歴史。2人の関係性を見せることによって、(この映画を)作っている人はどんなキャラクターで、誰なんだと想像するからです。そしてもう一つ、暴力を振るわれるような状況でありながら、(パートナーは彼のもとに)とどまったのかということを踏み込めるんじゃないかと思って。

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 閉塞感のある環境、差別、貧困、家庭内暴力。様々な「分断」を目の当たりにしてきたリュー監督。

住田アナ:この映画に込めた思いを教えてください。

リュー監督:大人になる過程で、『自分がそういう目に合う理由が何もなかったんだ』ということをしっかり理解することと、実際に起きたこととして罪悪感を持つことなく受け入れること。それが今の行動にどのように影響を及ぼしているかを理解することで、自分や周りの人たちに一番思いやりのある形で触れることができる。大変なことではあるけれど、あなただけじゃなくて、そういう人がたくさんいる。僕もそのうちの一人だし。でもそういう経験をしたから違った見方ができるし、より強くなることができると信じている。経験値も増すしね。

 『行き止まりの世界に生まれて』は、4日から全国の映画館で順次公開。

ABEMA/『ABEMA Morning』より)

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