不思議と教師役がしっくりくる。舞台女優として高い評価を得ている歌手で女優のソニンが、9月17日(木曜)午後11時スタートのABEMAオリジナル新連続ドラマ『17.3 about a sex』に出演する。約10年ぶりとなる連続ドラマは、17歳の女子高生3人が恋にセックスに揺れ動くリアルな心情を描くひと夏の青春恋愛物語。ソニンは、永瀬莉子らが演じる高校生たちの性に対する疑問に、豊富な知識で答えたり、時には前に一歩進む勇気を与える生物学教師・城山奈緒役に扮している。「先生役は初めて。賢い人に見えるか心配」と口にするソニンだが、実は昨年から“先生”の顔も持つようになった。所属事務所が始めた新人俳優向けのワークショップで講師を務めている。そんなソニン先生の目標は「ソニンメッソド」を確立することだ。
講師歴は約1年と新米だが「現役の役者が俳優の卵たちに教えるところに事務所がニーズを見いだしてくれて、お話をいただいたときには“私にできるの!?”と不安でしたが、いざ生徒たちの前に立ってみたら…“私は教えるのが好きだ!”とすぐに思えた」と自らの隠れた資質を発見。自粛期間中は心理カウンセラーの資格を取る勉強に時間を割いた。演劇講師としての立ち振る舞いに、より説得力を持たせるためだ。
「カリキュラムは座学や実践など色々とありますが、まずは講師として生徒の一人一人がどんなタイプなのかを瞬時に見いだして、その人にとっての的確なアドバイスを言わなければなりません。どんな風に言えば相手の心に響きやすく、前向きに導いていけるのだろうかと考えたときに、講師としての自分の精神コントロールも含めて心理学が役立つのではないかと思いました」。舞台女優として名のある演劇賞を受賞しており、ミュージカルに舞台に引っ張りだこのベテランクラス。にもかかわらず、この真剣さ。
ソニン先生のモットーは“いいところを見つけて最初に伝える”こと。「今の若い子たちは自分に自信のない子が多く、基本的に優しい。その分、ちょっとしたことで心が折れやすい。まずは全員をフラットな視線で分析して長所を見つけて褒める」とアメを渡す。そして“得意分野に逃げ道を作らせない”ことでムチを振る。「泣くのが得意な子には、悲しいシーンを演じさせたときに泣きの芝居をさせない。クールな表現が得意な人には、ひょうきん者を演じさせる。若い頃は経験値が低いので、自分の得意な方向に逃げがち。するとそれだけに頼ってしまい表現の幅が広がらない。得意なことを封じることで新しい気づきや表現力、広い視野を与えたい」と責任感を持って育成に取り組んでいる。
ワークショップのカリキュラム資料も自ら作成。「ソニンメソッドを確立するのが目標です!」と笑うが、教えるという行為が女優ソニンにとっての復習作業のような効果ももたらしている。「今まで感覚的にやっていたことを生徒に教えるために言葉にしたり文章にまとめたりすると、自分の頭も整理されて凄く勉強になります。どうすれば相手に伝わるのかを考えることは、観客に伝えるという芝居の基本にも繋がる」。
『17.3 about a sex』での先生ぶりが板についている理由もわかった。しかし演劇講師と生物学教師では勝手が違うようで「学校では教えてくれない性教育の教科書を説明するようなセリフが多くて大変でした。しかも長回しでの撮影が多いので、私がセリフを間違えたら終わり。専門用語や硬い表現も多いので、たまにあれ?なんだけ?発明?発案?開発?どっち?と混乱します」とさすがのソニン先生も苦戦。ただ「監督からは“白衣が似合う”とお褒めの言葉をいただきました」と嬉しそうだ。
生物学教師の役作りにはワークショップ講師経験が活きているようで「生物学教師という役職ですが、保健室の先生のようなイメージ。教師ではあるけれど堅苦しくなく、生徒から親近感を持ってもらえるような空気作りを意識しました。そういった意味では去年から役作りは完璧」と笑う。
ドラマは高校生の恋愛、そしてキスの先にある性に対する疑問や興味を赤裸々に描き出す。「性教育としっかり向き合うドラマは私自身初めてで、かなり踏み込んだ内容です。赤裸々な内容だけに話題になるのではないかと思う一方で、話題目的だけではなく、性教育の中身を身近に感じてほしいというメッセージを受け取りました」と語る。
その内容に対する抵抗感はなく「私たちの世代は性に関する話自体がタブーのように扱われていました。誰も教えてくれないし、家族や友達にも聞きづらい。私が17歳くらいの時に見たかったと思うくらいの素晴らしいドラマ。いい時代になったと思います」と羨ましそうだ。
テキスト:石井隼人