ABEMAオリジナルの連続ドラマ『17.3 about a sex』は、元来蓋をされがちな性教育に関してポジティブかつポップに正しい学びを提供する良質な青春ドラマだ。初体験、性病、両親の性事情など性に関する赤裸々なトピックスを、エンターテインメント色濃厚に思春期真っただ中の女子高生たちの視点から見やすく描き出す。Seventeen専属モデルの永瀬莉子、田鍋梨々花、秋田汐梨が演じる女子高生たちが、今まで誰にも聞けなかった性への疑問や知られざる性の世界に試行錯誤しながら踏み込む等身大の姿が話題だ。
第2話『そもそもセックスってしなきゃだめ?』では、アセクシュアル(無性愛)をテーマにする。ガールズトークに対してやや温度差のある女子高生の原紬(田鍋梨々花)は、今まで人を好きになった経験がない。性に興味を抱き始めた周囲とは違い、「セックスってしなきゃダメ?」と疑問さえ抱いている。そんな紬に対して友人たちは「好きな人いないの?つまんない!」「恋をした方が絶対に楽しいって!」と“退屈な人”という印象を無邪気に与える。
そんな紬はある日、イケメンの幼なじみ・康太(藤枝喜輝)と再会する。紬に好意を寄せる康太は紬を恋愛映画のデートに誘い出し、告白。そしてキスをする。「付き合ってほしい」。そう告げられた紬の脳裏によぎるのは“恋をするのは当たり前”という前提で生きる友人たちの姿。そんな“当たり前”に同調したい気持ちとは裏腹に、体は拒絶反応。紬はこらえきれずに嘔吐してしまう。
キスしたことを親友の咲良(永瀬莉子)と祐奈(秋田汐梨)に告げると、二人は「よかったじゃん!」と大はしゃぎ。しかし紬はそんなガールズトークに耐え切れず、本音をぶつけてしまう。「付き合うとか付き合わないとか、キスとかセックスとか、恋をしたら楽しいとか…ほんと地獄!わたし病気だから!」と。
私は普通じゃないの?苦悩する紬。だが生物教師・城山(ソニン)から「アセクシュアル」という言葉がもたらされる。他人に性的魅力を感じないなどの症状を持つアセクシュアルは世界で約7,000万人がいるとされ、パートナーと一緒に暮らしたり、結婚をしている人もいるという。
自分は「病気なんだ」と思い悩んでいた紬に城山は「人と違うのが変?変って誰が決めるの?絶対キスとかセックスをしなければいけない、そんなルール馬鹿みたいじゃない?」。と光を当てる。「みんなちがってみんないい」金子みすゞ的価値観を手にした紬は、親友の咲良と祐奈にカミングアウト。自らの無知を恥じた二人は、ありのままの紬を受け入れる。
少女漫画などでロマンチックに描かれがちな、理想的イケメンからの突然のキス。しかし同ドラマでは、人によっては受け入れることはできないという事実をアセクシュアルの紬の姿を通してリアルに表現。異性からもたらされる壁ドンや顎クイも、アセクシュアルに限らず受け取る人によっては不快になるのかも。これまであまり描かれてこなかったリアクションに戸惑う視聴者もいるかもしれない。しかし紬をはじめ咲良や祐奈がそうであるように、正しい知識を得ることでこれまで知らなかった多様性への理解の幅を広げるきっかけになれば。