授業をサボった2人が偶然出会ったのは体育館の2階。人付き合いが少し苦手な者同士だが、同じ時間を過ごしていくうちに、貴重な友達としての関係を築いていく。ただ、安達の気持ちは、さらに友達とは違う何かに変わっていって…。そんな女子高生2人の関係を、美しく繊細に描いているのが「安達としまむら」だ。原作のライトノベルで描かれている空気感は、アニメでも丁寧に再現されている。安達役・鬼頭明里、しまむら役・伊藤美来は、どの女子高生にもありそうな、でもちょっと不思議な関係を理解し、演じている。アニメ放送に合わせ2人にインタビューを実施。作品への思いや、難しい役どころの演じ方について聞いた。
原作は入間人間氏によるライトノベル。第1巻の説明分には「のんびり日常を過ごす、安達としまむら。その関係が、少しだけ変わる日。今日ものんびり日常を過ごす、女子高生な安達としまむらの二人。一緒に居て安心する二人は、ふとしたことで手をつないでドキドキしたり。……そんなお話です。」と書いてある。鬼頭、伊藤ともに原作を読み込んでから、アフレコ現場に向かった。
鬼頭明里(以下、鬼頭)
女の子同士の友情以上の気持ちを描いた作品をやるのが初めてだったので、すごく新鮮でした。原作も女の子がたくさん出てきて、女子高生の日常を覗き見ている感じが懐かしくもありました。見ていてほのぼのするけれど、2人の距離が縮まっていくのをゆっくりだけど見られるというのが、おもしろい作品だなと思いました。
伊藤美来(以下、伊藤)
オーディションの際に原作を読んで、出演が決まってからまた読みました。すごくきれいな文章がたくさん使われていて、とても文学的な小説だなと思いました。女子高生の日常で、誰しもが感じたことのあるようなキャラクターです。対人関係の悩みとかは私も共感できたし、読んでいる人もたくさん共感できる部分があるんじゃないかなと思います。みんなが通ってきた道なんじゃないかな、と思いながら読み進めていました。安達もしまむらも、思っていることがすごく細かく描かれているので、アニメで演じる上でもすごく分かりやすくてありがたかったです。
安達としまむら、共通点は授業をサボっていること、人付き合いが少し苦手なこと。かといって、アニメでよくデフォルメされるような、とてつもなく性格が暗いわけでもなく、女子高生ものに多い、はしゃぎまくるハイテンションキャラでもない。リアルに“女子高生っぽい”。演じる側にとっては、なかなか捉え方が難しかった。
鬼頭
原作を読んでいる時も演じている時も「すごく難しい子だな」と思いました。人付き合いが少し苦手で、結構クールで、人に興味がない。人に関わろうとしないんですけど、しまむらに対してだけはめちゃめちゃ積極的に行くんです。「誰!?」っていうくらい変わっちゃうところも、演じていてすごく難しかったですね。人付き合いが苦手ではあるけれど、コミュ障ではないんですよ。それを音響監督さんにも言われたんです。暗い子ではないと。人付き合いは好きじゃないけど、できないわけじゃない。暗い印象に映らないように気をつけましたね。性格は私と真逆なんですよ(笑)。掴むのにすごく時間がかかった気がしますね。
伊藤
しまむらも、他のキャストさんと一緒に掛け合いしながら作っていきました。作品の雰囲気も掴みながら演じていましたね。しまむら自体、髪の色が明るいし、ちょっと不良っぽい見た目をしていて派手めで、実際にサボりがち。でも見た目に反して、淡々として冷静な部分があるし、でも女子高生らしく振る舞う時は振る舞う。心の中では人付き合いの苦手意識もあって、リアルな女子高生じゃないかなと思います。
単なる“サボり仲間”の2人だったが、安達の心に仲のいい友達とはまた違う気持ちが芽生え始めるあたりは、作品を通しての大きなポイント。抱いたことのない感情と、ぶつけられたことのない感情。戸惑いの中で少しずつ変化していくあたりも、とても繊細に描かれている。
鬼頭
2人の関係が、どう近づいていくのか、いかないのか。それから作品全体の雰囲気がすごくきれいなんです。背景、作画、音楽、どれも見ているだけで心が浄化されるというか。癒やしになる作品になるんじゃないかなと思います。
伊藤
しまむら的には、どんどんアタックしてくる安達に対して、最初は自分の苦手意識から「ちょっと…」ってなるんですが、安達のおかげでしまむらも精神的に成長していく姿が細かく描かれているので、そこも見ていただきたいです。ドキドキするシーンが全体的に多くて、私はラブコメだと思っているので、2人にキュンキュンしてもらえるんじゃないかなと思います。
人と接することが苦手で、誰もいない場所を求めていた2人が、少しずつ距離を詰めていく物語。エピソードごとに、どのくらい近づいたか、変わっていないのか、むしろ離れたのか。微妙な変化を鬼頭・伊藤の演技とともに敏感に感じ取ってもらいたい、そんな作品だ。
(C)2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会