俳優、MCなどマルチに活躍する井ノ原快彦と関西ジャニーズJr.で人気沸騰中のユニット「なにわ男子」メンバーの道枝駿佑が初共演。11月6日(金)より公開される映画『461個のおべんとう』で性格の違う親子を演じている。原作は、今年結成30周年を迎える「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美のエッセイ。高校生の息子のために毎日お弁当を作り続けた、親子の実話だ。
同じ事務所の先輩後輩でもある二人は、リアルな“親子”を目指しどのように信頼関係を築いていったのか。そして、世代を超えてお互いの姿、そして作品から学んだこととは。
道枝「井ノ原さんが話すと現場の空気がすごく明るくなる」
――お互いのキャスティングを聞いたときはどのように感じましたか?
井ノ原:まさか同じ事務所の子と親子役を演じるとは思いもしませんでしたが、年齢を聞いたら、全然あり得る年齢差だから、あぁそうか!と思いました(笑)。グループを組んでいる子でそんな歳が離れている子がたくさんいるんだなと。最初はどういう子か分からなかったので、恐縮されっぱなしだと困っちゃうなと思っていましたが、すごく彼はナチュラルなんです。積極的にくる感じもないし、かといって気を遣う感じもないし。彼なりに気を遣っているんでしょうけど、自然にその場にいてくれたので助かりました。
――そんな道枝さんは“息子”として可愛がりやすかったですか?
井ノ原:そうですね。ただ男同士なので、父と息子ってそんなにベタベタしないですよね。自分がこれくらいの年齢のときも、父親とはなんとなく距離感があった気がしたので、自然にしてれば距離感もちょうどいいかなと思いました。同じように小さい頃から歩んできた道があるので分かり合える部分もありますし、変な気の遣い方はお互いしないほうがいいんだろうなと思いました。
道枝:僕も先輩と兄弟役をやらせてもらったことはあったんですけど、親子役というのはなかったので緊張しました。息子役とは、どうすればいいのだろうというのがありました。
映画の話を聞いた後、井ノ原さんと初めて会ったときに「映画の話聞いた?」って声をかけていただいて、「よろしくお願いします」と。その後に、マネージャーさん経由で連絡先を交換して、そこからやりとりをさせていただきました。
「親子役だから敬語じゃなくてタメ口でいいよ。そっちの方がやりやすいし」と言ってくださいました。大先輩にタメ口で話すというのには慣れてなかったので、最初はすごく気を遣ったんですけど、撮影していく内にだんだん慣れていきました。いい意味で緊張がほぐれて行きました。ほぐしていただいて、ありがとうございます。
井ノ原:いえいえ(笑)。
――2人のメールはどんな感じですか?
井ノ原:なんかね、こういうポーズ(グーポーズをとる)をよく送ってくれる(笑)。
道枝:思いっきり初期からあるやつです(笑)。
井ノ原:24時間テレビのときも送ってくれたりして。「お疲れさま」って(グーポーズ)。嬉しかったです。
「恐縮しすぎちゃうかもしれないから…」後輩へのプレゼントの渡し方にも配慮する井ノ原
――共演して気づいたお互いの共通点はありましたか?
道枝:共通点はギターを弾くことです。現場でもたくさん話させていただきました。
井ノ原:一軒家で撮影していて、僕の部屋にはギターがたくさんあったので、それを触りながら話したりしました。「次のライブでやるんだー」って練習してたよね。
道枝:はい。 ライブでギターを弾くので、アルペジオの弾き方や、井ノ原さんが持ってるギターのことを教えてもらったりしました。あと、井ノ原さんからギターをいただきました。
井ノ原:ライブに1本だけ持っていくっていうから、「何かあったら困るからもう1本持っていったらいいんじゃない?」って。でも最初から「あげる」と言ったら、すごく恐縮しすぎちゃうかもしれないから「使ってていいよ」と言ったんです。そしたら「え!いつ返せばいいんですか?」って(笑)。
道枝:(笑)
井ノ原:それで「よかったらあげるよ」って言ったら、「いいんですか!?」って、すごく喜んでくれた。親から人にものを貰っちゃいけないって言われているかもしれないし、「いや、それは…」と断る人もいるから、(断られて)引っ込めるとき寂しいなと思ったので「使ってていいよ」という言い方がいいかな思ったんです。
道枝:いつ返せばいいか迷ったので、「じゃああげるよ」と言っていただけて嬉しかったです。
井ノ原:僕も素直に喜んでくれてすごく嬉しかったです。ほっとしました(笑)。
――お互いに子どもっぽいところや大人っぽいところはありますか?
井ノ原:(道枝が)インタビューで受け答えしている姿を見ていたら、しっかりと大人な考えを持っているなと思います。この世代の子たちって、「最近の若いものは」とか言えないくらいいろんなことを経験している。I Tに対しても子どもの時からあってネイティブだし、彼は関西出身だから生まれたときから阪神大震災の話とかも聞いてきて、東日本大震災も経験してる。それで今はコロナ禍(も経験している)。いろんなことを当たり前のように突きつけられて乗り越えてきた世代だから、すごくしっかりしています。
でも趣味とかを聞いたら、やっぱり学生なんだなと思います。ドローンが好きで操縦ができるそうなんですけど、僕も興味が湧いて同じものを買って飛行が可能な所で練習してます。まだ一緒には遊べてないんですけど、そういうのを聞くと、最近の学生ってそんな感じなんだなと思います。
道枝: 井ノ原さんとは、毎日お昼を一緒に食べていたんですけど、曲を作れるスマホのアプリみたいなのがあって、僕に「こういうのできるんだよ!」って嬉しそうに説明しているのを見ると、男の子なんだなと思いました(笑)。大人なとこは……
井ノ原:「ちょっとないですね」って言われたら辛いなあ(笑)。
道枝:そんなこと…!(笑)井ノ原さんは、撮影現場でスタッフさんとよく話をされていました。井ノ原さんが話すと現場の空気がすごく明るくなるんです。それは僕にはできないことで、大人だなと思いました。立ち振る舞いがスマートで僕らのことを考えてくれています。
2人の甘酸っぱい小学生時代の恋の思い出
――映画では受け身な息子とストレートな父親、二人のそれぞれの恋が描かれていますよね。その恋愛観に共感する部分はありますか?
井ノ原:ちょうどさっきそういう話をしていたんです。(道枝が)小5のときに、好きな子の席の隣になったのに、向こうから「好きな子誰?」って聞かれて…。
道枝:そうなんです。それで僕が、その子の名前を言ったら「知ってるよ」って言われました。
井ノ原:それで「『じゃあ君は?』って聞いたのか?」と僕が聞いたら、聞けなかったと。
道枝:(苦笑)
――井ノ原さんだったら相手の気持ちを確かめてましたか?
井ノ原:僕だったら聞いていましたね。小学校2年生くらいですけど、僕はバレンタインの数日前から「ちょうだいちょうだい!」って周りに言ってました(笑)。それで誰からももらえなかったんですけど、そんな僕を哀れに思ったのか、一人好きな子が「誰からももらってないならあげる」って義理チョコをくれました。対照的ですね(笑)。
道枝:僕は絶対「ちょうだい」とは言えないです。
――チョコレートをもらったことは?
道枝:本命はもらったことないです。義理チョコを4つとかです。
井ノ原:義理チョコって言ったって、向こうは本命のつもりかもしれないよ?
道枝:カバンに同じのがいっぱい入ってるようなバラマキ用の一つでした(笑)。
井ノ原「久しぶりに参加した映画がこの映画で良かった」
ーー最後に本作のおすすめポイントを教えてください!
道枝: この映画の中には学園ドラマや家族もの、バンドの物語もあれば、いろんなジャンルが入っていて、その中での1日1日の何気ない日々がすごく大切な日なんだなというのがわかるような物語になっています。当たり前に過ごしている日々がとても幸せで二度とこない日々なんだな、当たり前ではないんだなと感じさせてくれる作品です。
個人的におすすめのシーンは、ラストの親子で坂を登っていくシーンです。「身長伸びたな」とか何気ない会話をしているのですが、お互いがいろんな葛藤や悩みがあったけどそれを乗り越えてからこそのラストで、気に入っています。
井ノ原:この映画には大きな事件も起きないし、悪い人も出てこない。そしてとても温かい。道枝くんが言ったように、「何の映画だっけ?」というくらい色んなシーンがあって、様々な要素が入った映画です。監督も「今日まで家族もの撮ってたけど、明日から学園もの撮ります!」って言うくらいでした(笑)。音楽ライブのシーンはPV撮影のようだったし、福島の震災の話もあって、原発の近くで撮影したりもしました。なので、この時代、みんなが共感できることが多い映画だと思います。今日こうやって取材できていることも感謝ですし、毎日が当たり前じゃないんだなということをこの映画で感じられます。久しぶりに参加させていただいた映画がこの映画で良かったなと思いました。
ストーリー
長年連れ添っていた妻と別れることを決意した鈴本一樹(井ノ原快彦)。父を選んでくれた息子・虹輝(道枝駿佑)が15歳と多感な時期を迎えていた時期の離婚なだけに、一樹は虹輝に対する罪悪感に苛まれていた。そんな時、重なるようにして虹輝が高校受験に失敗したという悪い知らせが届く。これまで自由に生きてきた一樹は、虹輝に対し“学校だけがすべてではない。自由に好きなように育ってくれたらそれでいい”と思っていた。しかし、虹輝の出した答えは「高校へ行きたい」だった。
そして翌年の春、見事に高校に合格。ここで一樹はある質問をした。「学校の昼食なんだけど虹輝はどっちがいいの?お金渡して自分で買うのと、父さんが作るお弁当」「父さんのお弁当がいい」。この瞬間「3年間、毎日お弁当を作る!」「3年間、休まず学校へ行く」という“大切な約束”が生まれたのだった。 慌ただしい毎日の中、お弁当を通して交錯する父と息子の想い。 ライブの翌日も、二日酔いの朝も、早出の朝も...、一樹の怒涛のお弁当作りが始まる――。
テキスト:堤茜子
(c)2020「461個のおべんとう」製作委員会