「総合的・俯瞰的」という言葉では分からない 石破氏と橋下氏が日本学術会議の「会員任命拒否」問題に言及
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 10日のABEMANewsBAR橋下』に自民党の石破元幹事長が生出演。橋下徹氏と、菅義偉総理が日本学術会議の新会員候補6人の任命を拒否した問題について議論した。両氏は総理の任命の拒否権はあるとの認識で一致、一方、菅総理が繰り返す「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断をした」という説明には疑問を呈した。

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「総合的・俯瞰的」という言葉では分からない 石破氏と橋下氏が日本学術会議の「会員任命拒否」問題に言及
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石破:私は防衛庁長官、防衛大臣だった頃、ミサイル防衛を一生懸命やっていたし、やはり“ミサイルってどう飛ぶの”という知識がないと撃ち落とせないので、種子島を自衛官に見学させてくれませんか、ロケットを打ち上げる際のデータを教えてくれませんかと言ったら、学者の先生方や技術の関係の方々に見事に拒否された。みなさん立派な方々だが、“戦争の技術だから”ということで。今でも自衛官は入れてないかもしれない。

しかし「戦争反対」と言うことと、「ミサイル撃てるもんなら打ってみな、必ず撃ち落とすからね」、というのは違う話だと思う。みんな戦争には反対なわけだし、軍事に関することは一切ダメよと言われることには、正直言って違和感があった。

一方で、大学生の頃、憲法を勉強していて、思想信条の自由が書いてあるのに、学問の自由をわざわざ書くのはなぜなんだろうと疑問を抱いたことも思い出した。不勉強なことに、日本学術会議法を読んだのは今回が初めてだったが、“政府から独立した組織だけど、国家行政組織に根拠を置く組織で、総理大臣が所轄する”という、かなり珍しい書き方をしている。そして、“学術会議は政府に勧告することができ、政府は学術会議に諮問することができる”としている。

つまり、政府が“どうですか?”と聞いた時に、“おかしいですよ”と言うのも役割だということだ。日本学術会議の先生方に「みんな自民党的な思想でやってくれ」と言うつもりは毛頭ないけれど、総理に任命権はある。ただ、「なんでこの人はダメなの?」というのがわからないと、次の人を推薦もしようがない。だから、“行革なんだ”というのも論点がちょっとずれていると思う。

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橋下:たとえば府立大や市立大の学長は、それぞれの大学の学長選考会議の結果に基づいて知事・市長が任命することになっている。これに関係なく一本釣りしてくるのはアウトだが、拒絶することは認められている。それは学術会議についても同様で、普通、任命権者というのは人事を動かすことができるものだが、こちらはあくまでも推薦に基づく任命だ。一本釣りで会員を選ぶのはアウトだが、拒絶することはできる、というのは、政府と学術会議のバランスを取った、良い仕組みだと思っている。

一部の人は“総理に拒否権は無い”という考え方をしているけれど、どっからどう見ても“拒否権はある”というのが間違いない法論理だと思う。だから1983年の政府答弁についても、“間違いだった”、あるいは“解釈を変えた”とはっきり言えばいい。それをせずに、どうもモゴモゴしている。

石破:私も総理の拒否権まで否定しているとは思わないし、解釈を変えたなら、「変えました」と言えばいい。

今まで政府が何回諮問したのか、学術会議が何回勧告したのかは分からないが、橋下さんだって、審議会が自分の諮問に“橋下市長のおっしゃるとおりでございます”と答えることを期待していたわけじゃなかったと思う。「おかしいですよ」という答えが出てきたっていいじゃない・そういう関係だから。自分たちの政権の思う通りじゃなきゃダメよ、というのはおかしいが、「なんでダメなの」は説明しないと行けない。でも、説明しにくいのかな。

橋下:大抵の場合、審議会のメンバーというのは役人が選んでくる。だから偏り過ぎてるんじゃないかと感じることもある。最近で言えば、国会の法制審議会の少年法部会がそうだ。遺族の会の代表者が委員の中に1人しかいない。これはバランスが悪すぎると思う。だから被害者よりも加害少年の立場に寄った意見ばかり出てくるんじゃないか。

だから学術会議にしても、メンバーを見て「ちょっと偏りがありすぎるな」と思ったのなら、拒否権を行使していい。ただ、“もちろん政府に反対してくれていいんだけれど、こういうところで賛成と反対が50:50くらいにならないといけませんよね”くらい言えばいいのに。

でも、やっぱり外形的に見れば政権に批判的な学者さんばかりを排除しているから、いくら理屈を立てたところでそういう印象は拭えないかもしれないし、実際にそうだから言えないということなのかな。

たとえば防衛大臣にとっての防衛省人事は上司・部下の話だし、“適材適所”だから、他の組織運営と同様、基本的には理由をいちいち説明することはしないと思う。ただ、独立した組織に対して、ある意味での民主的統制を及ぼすために人事をやるときには、理由の説明は必要。今回、任命を拒絶したことが問題にされているわけだし、もっと理由の説明が必要だ。それは“総合的・俯瞰的”という言葉ではない。

そこが森友・加計学園問題、桜を見る会問題のように、違法・不正はなくても外形的に怪しいなと思われてしまうような、同じ構図に見えてしまって残念だ。

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石破:かえって政権のためにならないんじゃないのと思う。「総合的・俯瞰的」って、便利な言葉だけどよく分かんない。

橋下:僕も審議会のメンバーを選ぶときは、なるべき論文などを見てと思っていたが、全ては見ていられないので、役人に「意見のバランスは考慮してね」と言っていた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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