“アジア版NATO”発言の真意は?石破氏が考える、これからのアジア太平洋の安全保障
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 10日のABEMANewsBAR橋下』に生出演した自民党の石破茂元幹事長が、橋下徹氏とアメリカ大統領選後の日米同盟、そして安全保障政策について語り合った。

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 折しも15日に予定されていた2回目の候補者討論会はトランプ大統領がオンラインでの開催を拒否したことなどを受けて中止に。その一方、トランプ大統領は10日にホワイトハウスのバルコニーから参加者数百人に対し、法と秩序について演説する予定で、全員にマスクの着用が義務付けられるという。

 「ケネディ対ニクソンの初めてのテレビ討論ではアメリカや世界の理想を語っていたような気がするし、勝利したケネディは就任演説で“合衆国が君たちに何をしてくれるのかを聞かないでくれ。君たち一人ひとりが合衆国のために何ができるのかを私に言ってくれ”と訴えた。私は感動した。今回、エアフォースワンで誰もマスクをしていなかったとか、本当にこの国は大丈夫か、あれは一体どこに行っちゃったんだろうねと思う」と危惧する石破氏。

 これを受け、橋下氏が「バイデン候補とトランプ大統領と、日本にとってどっちの方がいいのか。そういう思考をしないといけないと思うが、石破さんとしてはどうか」と切り出し、両氏の議論が始まった。

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石破:バイデンさんとは、彼が副大統領の時にホワイトハウスで1時間くらい話をしたことがあるだけで、もちろんトランプさんとは話したことがない。それで評価してはいけないと思っているがが、トランプさんは“サスペンスとディールの大統領だ”と言われていたとおり、ハラハラ、ドキドキ。朝言うことと夜言うこと、大臣と言うことが違っていたり、Twitterにバンバン投稿したり。みんな、何がなんだか分からなくなって恐怖に陥った時に、“ディールだ”と言って取り引きをしてくる。しかも在日米軍の駐留経費が2倍、3倍になるとか、同盟国に対してそういうことを言う大統領は見たことがない。他方、バイデンさんになっても対中強硬姿勢は変わらないといわれているが、ディベートなどでその言行を見る限り安全保障政策についてはよく分からない。

橋下:民主党政権になったとしてもアメリカの対中強硬姿勢は変わらないだろうという認識は甘利さんも示されていたが、政治は“方針”などではなく、“エネルギー”がものすごく重要だ。日本は隣国である中国とはうまくやっていかないといけないが、そこで重石になるのはやっぱりトランプ大統領のエネルギーだと思う。その意味では、日本国民にとってはトランプ大統領の方が安心だという気がする。

その上で石破さんにお聞きしたいのは、総裁選の時に話をされていた「東アジア安全保障」だ。あれは最終的には中韓との軍事同盟も視野に入っているのか。中国の国家体制が変わって、より民主化された場合であればわかるが、今の体制でNATOと同じようなものを作るということになると、自民党が今まで進めてきた外交安全保障や菅さんの方向性とは異なる選択肢を示された感じがした。

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石破:それは私の言い方が悪かった。リアリストのつもりなので、この地域におけるバランス・オブ・パワーをいかにして保つかというだけだ。

私は共産党一党独裁なんて大嫌いだ。一方、アメリカには結構ナイーブなところがあって、豊かになれば民主主義になるという。そんなバカなことはあるわけがないだろうと思う。だから共和党だろうと民主党だろうと、裏切られた感が結構ある。そうではなくて、アジア太平洋で軍事バランスを取ることのために、アジア版NATOみたいなものがあるだろうと。それがアメリカの国家戦略だったはずだろうということで申し上げたつもりだった。

ただ、アジア版NATOと言ったって、5年や10年ではできない。それでもそこを目指してやっていくのと、一対一の同盟だけを考えてやっていくのとでは、見える景色が全然違うはずだ。我々は中国やロシアとは国家的な価値観を相当異にするので、最初から集団安全保障なんてことは言わない。

一方で、世界最大の安全保障のシステムであるユナイテッド・ネイションズ、国連がうまく機能していないのは、中国やロシア、そしてアメリカが拒否権を使って機能しなかった。私はアジア版NATOで拒否権を認めようとは思っていないが、軍事的衝突が起きないためには信頼の醸成が必要だ。バランスを取ること、信頼関係を作ることの両方をやらないといけない。

アジア太平洋には日米同盟、米韓同盟、ANZUS(アンザス)条約、台湾関係法と、ベースになるものは結構ある。そこに中国が入ってくるのは構わない。ただ、日米という観点では、私が防衛庁長官をやっていた十数年前から、相対的にアメリカの力が落ち、中国の力が上がって来ていて、アメリカもブッシュ政権の頃から「もうハブ(中心」があってスポーク(放射状)に伸びていくような同盟はやれん。これからはネットワークなんだ」と言っていた。

だからロシアと親しくすると中国に対する牽制になるというのも、私はあまり正しい考えとは思えない。中国の人民解放軍は中国共産党の軍隊なのであって、国民の軍隊ではないという、成り立ちやシビリアンコントロールの点でかなり異質な軍事組織だ。そして中国の国境観は「戦略国境」といって、中国の力に応じて変わるものなんだという“魔術”とのような話だ。だから最初から中国が同盟に入ってくるという話にはならないと思う。つまり、バランス・オブ・パワーをどう取るかということだ。つい10年くらい前まで、中国の力は日米同盟に比べればまだまだ、と言っていたが、今は質、量ともにすごい。

橋下:自分たちを上回るんじゃないかとアメリカが、危機意識を持ち始めたくらいだ。

石破:なんせ人口が13億人くらいいるから。中国はロシア、インド、北朝鮮など十数カ国と国境で接しているので、日本のことだけ、尖閣のことだけを見ているわけではない。それでも船と飛行機、ミサイル、サイバーは怖い。バランスを取らないと、何が起こるか分からないのが安全保障の世界だ。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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