思春期真っただ中の女子高生3人組が、性への疑問・悩みに思いきりぶち当たっていくABEMAオリジナルの連続ドラマ『17.3 about a sex』。第7話ではヘテロセクシュアル(異性愛者)以外の性指向を持つ人々が抱える生きづらさを、主要人物の一人であるアセクシュアル女子高生・紬(田鍋梨々花)の視点を通して考える。
▶︎︎︎︎︎︎動画:アセクシュアルの女子高生が訴える日本社会での“生きづらさ” 『17.3 about a sex』
他者に対して恋愛感情などを抱かないアセクシュアルの紬。親友にはカミングアウト済だが、父親・光男には内緒にしている。その光男は紬に対して、恋愛や結婚について期待するような発言を度々してしまう。その都度、紬は自我を否定されるように感じていた。早く自立して実家から離れたい、そんな思いを抱く紬は奨学金目当てでスピーチコンテストに出場しようとする。
その紬のスピーチ内容が第7話のハイライトであり、多様性を考える上で大変重要なメッセージだ。「女性はいつか結婚し子供を持つ将来を暗に示される」。たしかに映画やドラマ、小説、CMなどで提示される家族像はヘテロセクシュアルを前提にしたものが多い。紬は訴える。「なにげないそれらが全て、わたしの存在を否定する。世の中にはアセクシュアルと呼ばれる人がいて、恋愛感情などを抱かない性質を持っている」と。
かつて紬は父・光男に「そろそろ彼氏できたか?もう17歳だろ?ひとりやふたりできてもおかしくない」と言われた。光男にとっては、思春期娘との会話の糸口を探そうとする他愛のない話題のつもりだ。しかしアセクシュアルである紬は、それができない自分という存在を否定されているように受け取ってしまう。思春期という複雑な時期も相まって、光男に対しての諦めを抱いてしまう。自分の本当の想いを打ち明けるどころか「悪いけど、わたしお父さんの思うような将来歩めないから。だから、もうほっといて!」とついに拒絶宣言である。
親へのカムアウトは、当事者にとっては高すぎるハードルだ。現代日本社会は決してヘテロセクシュアル以外の人にとって生きやすい社会とはなかなか言えない。紬はスピーチで口火を切る。「自分で選んだわけではないのに、生まれながらにそういった性質を持つ人たちにとっては、この世界は地獄」と。
それでは希望の光はないのだろうか?いや、紬は知る。たった一人の愛娘の危機を救おうと奔走した父・光男の姿を。紬は「一生分かり合えないと思っていた人は、ただただ私の幸せを願ってくれていることがわかりました。ただ逃げるために、この場所を出ていくのではなく、わたしを大切にしてくれる人と向き合って、この社会をどう生きていくのかを考えていこうと思います」と共存を期待して結ぶ。果たして紬の指す「社会」はこのスピーチをどう受け止め、応えていけばいいのだろうか?じっくり鑑賞して、身近な人と語り合ってほしい。