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 「もう迷子です…」20年以上のキャリアを持つ俳優・田中圭が困惑した表情を見せている。その理由は、田中が主演を務める10月31日よりテレビ朝日系で放送のドラマ『先生を消す方程式。』にあるようだ。田中はこの作品で主演の“笑顔の教師”義澤経男(よしざわ・つねお)を演じる。何度も一緒に作品を作り、絶大な信頼を寄せる鈴木おさむが脚本を務めるこの作品、プライベートでも仲が良い鈴木の脚本は、演じる田中からすればむしろ“演じやすい”“理解しやすい”方なのかと思いきや、役者人生で初といっていいほど、その異色ぶりに戸惑いをみせていた。

▶特報:10月新ドラマ『先生を消す方程式。』

 IQが高いトップクラスの進学校クラスの担任となった義澤。しかしこのクラスはメンタルを蝕まれ退職を余儀なくされる担任が後を絶たない、問題児だらけのクラスだ。そんな生徒たちの嫌がらせにも、弱音を吐かず自ら笑顔を振りまく義澤に対し、生徒たちは徐々に嫌がらせをエスカレートしていく…。それでも不気味な微笑みを浮かべる義澤の目的は一体何なのか。学校という閉ざされた空間で、教師と生徒たちの壮絶なバトルが始まる。あまりに謎が多い主人公と先が読めない展開に、「おもしろいか、おもしろくないか分からない(笑)!」とまでボヤいてしまうほど、俳優・田中圭にとってもかつてない問題作。撮影中の合間に話を聞いた。

何をされても“笑顔”の主人公、役作りに凹み中?「わけのわからないドラマ」「鈴木おさむコノ野郎!(笑)」

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――義澤という役は常に笑顔でいる変わった役どころですが、キーとなる笑顔でこだわっているところは?

田中: もう迷子です…。久々にわけのわからないドラマだなと。鈴木おさむコノ野郎!と思っています(笑)。昨日役について悩むことがあり、1年ぶりくらいにおさむさんに連絡しました。そしたらおさむさん、「成立してないところも分かっている」と認めていました(笑)。でもせっかく僕と組むということで、“普通じゃないことをやりたい”と仰ってくれて、「普通じゃないにもほどがあるだろ!」とは思いますが(苦笑)。

笑顔が多いのですが、ずっと笑顔でいてもおもしろくないし、作り過ぎてもうまくいかない。“強烈な笑顔”と脚本に書いてあるのですが、「なんだソレ?」と思ってしまう。その時に湧き出る感情で演技をしているのですが、自分でもまだ迷っていて、監督や共演者のみなさんを信じて演じるしかないと思っています。何が正解かわからないので、後になってトイレの鏡で思いっきり笑ってみたりするんです。すると「これもアリだったか?」と思ったりとか(笑)。でもそれは完全に作っている笑顔なので、本当の意味ではお芝居ではない。改めて役を作る作業が苦手だと痛感させられて、今若干ヘコんでいる感じです…(苦笑)。

そんな現場で、僕がすごく助かっているのは、ずっと傍にいる(山田)裕貴(※副担任役)です。芝居を任せられるし、全く気を使わないでぶつかりあいができる関係性で、自分が芝居でこうしたいなと思ったときに、素直に提案できるし、裕貴も同じタイプなので、とても助かっています。

生徒役の若手俳優らに刺激「先輩として何かを響かせることができれば」

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――先生役として教壇に立った感想を教えてください。

田中:  「生徒が若い!」と思いました(笑)。まだ撮影して3日目くらいですが、今日が最終日か?と思うくらい、疲労感が…、本当は生徒の皆さんと和気あいあいと話したいのですが、重いシーンや長台詞が多く、僕自身がそこまで余裕がなくて。先日、丸1日ずっと教室のシーンを撮影したのですが、もう10時間くらいみんな座っていて、台詞がない生徒たちも当然いるので、ちょっと居眠りする生徒を見つけたりして、「眠いよね」と思いました(笑)。

でも教室でのシーンは1人では練習できないし、その場で感じるまま演じることが多いので、みんながいてくれて、より一層“義澤”という役を掴むことができました。今回は、本当に過酷なスケジュールで、瞬発力が問われる現場なのですが、生徒役の子たちはすごく丁寧にリアクションしてくれるのでとても嬉しいです。

――そんな生徒たちの演技から刺激を受けたりしますか?

田中: ものすごく受けています。みんな思った以上に果敢にトライしてくれるので、とても楽しいです。自分が二十歳くらいのときは監督の言いなりだったのですが、みんなすごく一生懸命で、貪欲で、本当に真面目だなと思いました。みんな僕の余裕のなさを感じ取ってくれて、いい子で座ってくれているので…僕、逆だったら絶対寝ているだろうから(笑)。あと、どうしても若手の子たちが集まると…やっぱり先輩として頑張らなきゃいけないなと思うんです。ちょっとでも俳優としてみんなに響かせられるような出会いになればいいなと思って、そんなプレッシャーも感じつつやっています。

無頓着な性格は高校時代から?「髪型を自分でセットした日が人生で20回もない」

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――若い世代の役者さんと絡んで当時の自分を思い出したりはされますか?

田中: 生徒たちを見ていると、自分の新人時代というか、駆け出しの頃を思い出します。たまたま(山田)裕貴が、今回の小松さん(小松隆志:演出担当)が以前担当していた『GTO』(2012年に放送されたテレビドラマ)で生徒役として出演していたんです。今回は先生役なので「感慨深い」と言っていて、僕はもう少し年を重ねたので、「感慨深い」と言っている裕貴を見ながらさらに感慨深くなりました。

――当時の自分が今の自分を見たら、どう思うと思いますか?

田中: …信じないと思います。当時は僕がこんな風になるなんて、全然想像ついていないと思います。

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――今回、一癖も二癖もある生徒たちがたくさん出てきますが、子ども時代はそういう反抗的な時期はあるとは思います。田中さんにはそういう時期はありますか?

田中: 今思うと、昔から自分勝手に生きてきたなと思います。朝起きて学校に行く、そういう当たり前のルールをあまり重要視していなかった気がして。もちろん学校には行きますが、例えば「ヤバい!遅刻する」と焦ったことがあまりないんです。「遅刻しちゃった…」くらいの(笑)。また、高校生のときは周りのみんなは髪型をちゃんとセットしていたのですが、僕一回もしたことないんです。学校も寝グセのままで行くし、寝グセがあまりにひどいときはニット帽を被っていました。同級生は結構鏡の前でいろいろ髪型をいじって、腰パンとか穿いていましたが、僕は全く興味がなくて、ズボンもそのままはいて…、でもみんながやるからちょっと下げてみたりとか(笑)。とにかく本当に無頓着でした。今もオフの日はそんな感じで、僕、髪型を自分でセットした日が人生で20回もないと思います。そういう性格は振り返れば学生のときからだろうなと思います。

鈴木おさむさんは「僕にとっていつでも挑戦させてくれる人」

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――過去に何度もご一緒されている鈴木おさむさんですが、今回どんなことを期待されていると思いますか?

田中: 単純に今までみたことのない田中圭をやりたいのだろうなと思います。もちろんそこに対してのやりがいはあります。ある程度のキャリアも積んでいるので、役を把握して取り組む作品がほとんどなのですが、 今回のような“これはどうしたらいいだろう”と迷子になるような作品はなかなかない。

僕にとってのおさむさんは、いつでも挑戦させてくれる人。ただその挑戦のさせ方や発想がぶっ飛んでいるので、たまについていけないというか、天才の考えていることは常人には理解できないみたいな(笑)。プライベートでも仲が良いので、普通に話していると自分の人生においてヒントになる発言をサラっと言ってくれる人で、そういう方は僕にとって貴重ですし、すごく尊敬しています。仕事でご一緒させていただくときは、本当に一度も楽をさせてくれないですから(笑)。

今回の作品は、おもしろいかつまらないか、どちらかです。そういう脚本を書いてくる人はなかなかいなくて、鈴木おさむという人間性や才能があるから信じてついていきたくなる。生意気な話ですが、僕が脚本をいただいて、「これは絶対おもしろい!」だったら「やる」と決められるし、「絶対つまらない」だったら「やらない」と決められるのですが、今回は「どっち?」なんです(笑)。下手したらすごく面白いけれど、下手したら超スベる。21年間この仕事をやらせてもらって、こんなに頭抱えるような経験ができるのは、幸せなことだと思います。

鈴木おさむ企画・演出「田中圭24時間テレビ」は「僕にとって大きな宝物」

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――鈴木おさむさんが田中さんへの無茶ぶりと言えば「田中圭24時間テレビ~24時間生放送しながらドラマは完成できるのか?!~」(2018年にABEMAで放送された番組)ですが、もうあれから2年経ちます。

田中: 本当に一生に一回できるかどうかの経験で、あの経験ができたことは僕のなかで大きな宝物になっています。やっぱり、おさむさんがなんだかんだ僕をひとつ強くしてくれているので、今回のドラマはどういう結果になるかわかりませんが、僕にとっては良い経験なのだろうと。そこに関しては確信があるので、あとは単純に見てくれる人たちにとってもそうであればいいなと思います。

――ちなみに未だにDVDを待ち望む声が寄せられます。

田中: 僕もしてくれと言いました。あんなにやったのに、DVDがないの寂しいじゃないですか!そしたら「25時間もあるからすごい量になる」と言われて、まあそうだな、と(笑)。もし次本当に同じ企画をやりませんか?と言われたら僕はやりますが、おさむさんは「二度とやれない」と言っていましたから、もうないと思います(笑)。

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 テレビ朝日・土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』は2020年10月31日(土)よる11時より放送。なお、2020年10月31日(土)夜11時35分より本作のフライングドラマがABEMAにて独占配信される。

テキスト・インタビュー:編集部

撮影:You Ishii

ABEMA『先生を消す方程式。』フライングドラマ番組概要

初回配信日時:2020年10月31日(土)夜11時35分~

視聴URL:https://abema.tv/video/episode/87-388_s478_p2

ABEMA『先生を消す方程式。』フライングドラマ
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10月新ドラマ『先生を消す方程式。』
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