「過去4回総裁選挙に立候補した。直近の2回は水月会の皆様方を中心として、支援して下さる皆さん方とともに戦った。しかし結果は出せなかった。それぞれの同志の皆さん方に、支持して下さった皆さん方に多くのご負担をかけてしまった。その責任を取るということが、私の取るべき道だと考えた次第だ」。
世論調査では「次期総理にふさわしい人物」として名前が度々挙がり、自民党内でも存在感を示してきた石破茂元幹事長が、自身の派閥である「水月会」(石破派)の会長を辞任した。
・【映像】石破氏が突然の派閥会長を"辞任" 記者「思ったよりも早く電池が切れてしまったという感じ」
石破氏を5年以上取材してきたテレビ朝日政治部の村上祐子記者は「一言で申し上げると、思ったよりも早く電池が切れてしまったという感じだ。説明の通り、“ここまで付いて来てくれた他の仲間に対して申し訳ない。責任を取りたい”という形で派閥の長を辞したということだ」と話す。
「今回で4回目の挑戦だったし、“勝てなさそうだから出ない方がいい”という声を押し切って出馬した経緯があった上での完敗だった。“2位も3位も負けは負けだ”という声もあるが、ここまで負けるとは思っていなかったので、本人のショックは大きく、“疲れてしまった”“もう出馬しない”というくらいの温度感だった。それでも知名度は高いし、“せめて次の総裁選までは頑張ってくれ”と応援する人たちもいた。そういう中で、最終的にはご自身で“一旦お休みする”という判断をした。本人は明言していないが、次の総裁選には出ない意向を固めている。とはいえ、周辺には“今は死んだふりをする”と言っている。世の中に求められる時が来たら、再び総裁選に立候補しようという思いはあるということだ。実際、今回でヒットポイントがゼロになり、ゲームオーバーというわけではない」。
また、先月の総裁選で競り合った岸田前政調会長は「突然のことでびっくりしているが、総裁選候補としても派閥会長としても、その豊かな経験、見識をしっかりと示してこられたと思っている」、野党・立憲民主党の福山幹事長は「驚いたが、石破さんらしい責任の取り方だというふうに思う」と受け止めを語った。
これまで“党内野党”的な立場を取ってきた石破氏に対しては、離党すべきではないかとの意見もある。
村上記者は「過去に自民党を出て行った経験があり、“裏切り者だ”と批判されたトラウマがある。おそらく離党という考えまではないと思う。逆に、党内には“権力が肥大し、同じ意見しか言えなくなってしまうのは良くない、自民党の中できちんと批判ができる石破さんのような存在が必要だ”という声もある。ずっと党内野党でい続けるのか、それとも総理になれるかどうかというのは石破さん次第、世の中次第というところだろう。野党からはラブコールも聞こえてくるが、本人としては党を出て行くつもりはないようだ。総裁選に立候補するには20人の推薦が必要なので、水月会だけでは推薦人を集められない状態。政界を引退される方もいるし、選挙が弱い方もいる。本人としては“派閥に留まり、政策集団として理念を引き継ぐ”と言っていて、所属議員を増やしたいと思っているのだろう」。
5年前に党内8番目の派閥として発足した“ベンチャー派閥”だった石破派・水月会。「石破氏を総理大臣にするために集まった集団」として衆参19人の議員が所属。安倍政権では山下貴司議員が、菅政権では田村憲久議員が入閣を果たしてもいる。
突然の辞任表明に、山下議員は「今日の今日聞いたばかり。こういう形で突然聞かされるというのは、納得がいかないという発言もあった。“2日寝ないで今朝5時まで考えての決断”ということだが、誠に残念。派閥内では受け入れがたいとの声もあった」とコメント。今後も会派は存続するというが、関係者の中には「次どうするって、もう崩壊だろう」と話す人いるという。
村上記者は「5年前に発足し、石破さんを総理にしようという夢を抱き、強い結束力で結成された派閥。周りにいるのは能力の高い方々ばかりだが、干されると分かっていても石破さんの味方をずっとし続けた人たちだ。変わっていると言えば変わっているし、優しいと言えば優しい。だから、石破さんが“責任を取る”と言えば、“そうか”となる。優しく“もう少しやってよ”と慰留する声もあったようだが、“会長の決断だから会長の好きにして下さい”という空気感だ」と説明。
今後の見通しについては「水月会や理念は残していきたいというのが現時点の方針だが、誰が石破さんの後を継ぐのかは未定だ。カップルで言えば“永すぎた春”のような感じで、いつまで経っても総理になれない、スターになれないということで、“潮時かな”という寂しい雰囲気もある。担当記者としては、ずっと続けて欲しいなという思いはあるが、すでに水面下では他派閥からのヘッドハンティングも始まっているので、いずれ形骸化し、バラバラになってしまう恐れはある」と話した。
さらに「早くも他の派閥の中での足の引っ張り合いが始まっている。今回の総裁選で菅さんを応援していた人たちは“反石破”で一致団結していた。その仮想敵がいなくなってしまったことで、必ずしも菅さんを推さなくてはならないわけではなくなった。各派閥から“俺が出てもいいだろう”という人たちが出てきて、さながら戦国時代のような形になるのではないか。やはり永田町はドロドロしているし、正しいことを言っているだけでは支持は得られない。人を集めるには、時としてずるい動き方もしていかなければならない。だから“正しいことを言い続ければいずれ仲間は集まるだろう”というまっすぐな石破さんはなかなかそぐわない部分がある。それでも知名度のある方なので、発信を続けていけば、今後も支持の集まる可能性はあると思う」との見方を示した。
23日21時からの『ABEMA Prime』には、渦中の石破氏が生出演、今の胸中や今後の展望を語る予定だ。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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