11月5日、映画『私をくいとめて』(12月18日より全国公開)の完成披露舞台挨拶が都内にて実施され、のん、林遣都、橋本愛、大九明子監督が登壇した。
脳内に相談役「A」を持つ、31歳おひとりさま・みつ子。悠々自適におひとりさまライフを満喫していたみつ子が、年下営業マン・多田くんと出会い、久しぶりに訪れた恋に戸惑いながらも一歩踏み出していくさまが描かれた本作。
監督は、『勝手にふるえてろ』(17)、『美人が婚活してみたら』(19)、『甘いお酒でうがい』(20)など、女性の生き方や恋愛にスポットを当てた話題作を次々と発表し続けている大九明子。
みつ子に扮するのは、劇場アニメ『この世界の片隅に』(16)で主人公・すずの声を演じ、YouTube Originalsドキュメンタリー「のんたれ」では『おちをつけなんせ』(19)の脚本・監督・編集・主演他を務めるなど、活動の幅を広げる女優・創作あーちすと のん。みつ子が恋する腹ペコ年下男子・多田くん役を演じるのは、この秋放送される「姉ちゃんの恋人」(カンテレ・CX)出演のほか、映画でも多数公開待機作を控え、今最も熱視線が注がれる実力派俳優・林遣都。さらに臼田あさ美、片桐はいりといった実力派役者陣や、本作で映画初出演となる若林拓也も存在感を発揮!令和を生き抜く女性たちに容赦なく突き刺さる、わかりみが深すぎる崖っぷちのロマンスを彩る。
第30回東京国際映画祭で観客賞を受賞した『勝手にふるえてろ』に続き、原作・綿矢りさ×監督・大九明子の黄金コンビが再タッグを果たした本作。監督が原作を知ったのは、ちょうど『勝手にふるえてろ』を仕上げている最中、周囲から“綿矢さんの新作読んだ?”と聞かれる機会が増えたことがきっかけだったという。「『勝手にふるえてろ』では、主人公をモノローグで描かれている小説を会話劇にして映像化させていただいたのですが、本作ではまさにそのようなことが行われていると。主人公が脳内相談役“A”としゃべってるよ、と聞いて、すぐさま書店に走りました」と当時の様子を振り返る監督。さらに「最初は映画にするつもりはなく読んでいたのですが、もし他の誰かがこの作品を映画にして、私の好きな綿矢文学の世界が、私の期待しているものとは違う形で映画化されたらいやだなと思い、すぐにシナリオを描いた次第でした」と“綿矢愛”全開で告白していた。
そんな綿矢ワールド炸裂する本作で、脳内に相談役=“A”を持つ、31歳おひとりさまヒロインを演じたのんは、「みつ子を演じられたのは、すごく楽しい時間でした」と振り返り、笑顔を見せる。「台本を読んだり、原作を読んだりしながら、みつ子の“痛み”はどこにあるのか、いつも探していました。原作を片手に台本を読んで、大九監督が書かれたみつ子のセリフや感情を探るために、原作本は攻略本のようにして、セリフを解釈していきました」と熱心な役作りを明かした。さらに「みつ子が買いそうな雑誌も買ったりしました。カフェの本や旅行の本も読んだりして、みつ子の好きそうなものに丸を付けたり…。おひとりさまを楽しむ実感という作業も大切にしました」と語り、充実した撮影ぶりをうかがわせていた。
みつ子がひそかに想いを寄せる年下男子・多田くんに扮した林は、のんとは本作が初共演。のんとの共演について、「一緒にお芝居をしてすごく楽しかったです」と振り返る。「普段おだやかな印象から、お芝居が始まり本番スタートの声がかかった瞬間、一気に目の色が変わるというか。吸引力があって、常にのんさんのそういう部分に突き動かされていました」と“初共演”で良い刺激を受けていた様子だった。
また、多田くん役を演じるにあたり、林は「原作では“多田くん”のことがたくさん描かれているわけではないので、ヒントが少ない脚本から少しずつ想像して膨らませながら、大九監督の演出を楽しめるように現場に挑みました」と当時を回顧。さらに“大九組”についても、「自分の想像を上回る演出が毎日飛んでくるので、それが楽しくて。“もっと演じていたい”という気持ちがピークに達したところで撮影が終わってしまってたので、思わず“僕もっといろいろやりたいです”と口走ってしまった気がします」と告白し、会場の笑いを誘う場面も。そんな大九組のもとで演じた多田くんについて、「本編の映像を見たときに間違いなく、 “見たことのない自分”だったので、それがとても嬉しかったですね」と語り、手ごたえをにじませていた。
そしてみつ子の親友・皐月役に扮したのが、のんとは“朝ドラ”以来7年振りの共演となった橋本愛。すでにSNSではふたりの共演に歓喜と期待の声が続出しているが、撮影について橋本は「(のんと)久しぶりにお会いした日が、ラストシーンの撮影で。そのシーンでは二人の役どころ、関係性がエンディングを迎えているのに、私たちは久しぶりすぎて照れてヘラヘラしてしまって段取りどころじゃなくて(笑)」と笑いを交えながら当時の様子を告白。「でも、“これは大変だ!”と思って、ふたりで本読みをしたのですが、軽くやっただけなのにものすごいスピードでふたりの関係性が埋まっていく実感があって…、魔法のようだなと思いました」と笑顔を見せた。さらに「のんちゃんの瞳からいろんな感情がたくさん伝わってきて、セリフ以上に心の言葉で会話するような瞬間をたくさんすることができて。電気が走るような快感でした!」と語り、“盟友”との久しぶりの共演を喜んでいた。
対するのんも「撮影前日は“明日は愛ちゃんと撮影だ…”とワクワクしていたのですが、実際に会ってみると恥ずかしくて緊張して、目が合わせられない!みたいな(笑)数年ぶりにお会いしてみて“美しさが増してる!”と思って、全然呼吸ができなかったです」と相思相愛ぶりを見せる。さらに「本読みは愛ちゃんから誘ってくれて、みつ子と皐月として心を通わすことができて、あれだけ緊張していたのに、自分の中では愛ちゃんとお芝居することがすごく自然なことだったんだなって気づくことができて。本当に楽しかったです」と語り、楽しそうに振り返り、絆の強さを見せつけた。
イベントの最後には、映画を心待ちにしているファンに向け、キャスト陣が「たくさんの苦しみや痛みを乗り越えながらも、周囲の人々と“繋がっていく”みつ子の姿に勇気をもらって、お帰りになってもらえたら嬉しいです」(橋本)、「一度では味わいきれない面白さがある大九監督ワールドとユーモア、遊び心が満載な作品です。ぜひ何度も見ていただきたいです」(林)、「自分の中にあるみつ子的な部分を全肯定してもらえる作品になっていると思うので、気分よく会場を後にしていただける映画に仕上がっていると思います。ぜひ楽しんでください」(のん)と一言ずつコメント。
そして監督も「この映画には、みつ子と多田くんのラブストーリーという側面もありつつ、妊娠してイタリアに飛び立った皐月、上司の澤田など、色々な人との出会いや別れがある作品です。いろんなことがあって撮影が中断することもありましたが、今日この日を迎えることができて本当に嬉しいです。どうか旅するような気分で楽しんでもらえたら」とアピールし、イベントを締めくくった。
(c)2020『私をくいとめて』製作委員会