今最も旬の女優・伊藤沙莉は、小学校時代の子役デビューと同時にエゴサデビューも果たしたという強者。売れっ子になった現在も「ケータイを触ったらすぐにTwitterでエゴサ」というルーティンは変わらないという。好意的な書き込み同様に、匿名ならではの辛辣なコメントもあるだろう。近年はそこでのやり取りが社会問題として取り上げられることも多い。SNSとの距離の取り方は現代においては大きな関心事の一つだが、伊藤の場合は「もはや悟りの境地」と達観の領域にある。一体なぜ?

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 10代の頃に苦手だった言葉がある。「子役から長くこの仕事を続けてきて、現場が終わるときに製作の方から聞かれる『次何があるの?』という言葉が大嫌いでした。なぜならその後の仕事が決まっていないから。一つの仕事が終わると、また一からオーディションを受けるという日々でしたから」と安泰までには長い道のりがあった。

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 11月13日公開の『ホテルローヤル』も含め、今年は映画出演作が9本も公開。コンプレックスだったハスキーボイスを活かした声の仕事も増えている。オーディションの日々だった数年前とは一転して、大ブレイクだ。

 「売れたぞ!とは思いませんが、夢見心地でフワフワしているのはあるかもしれません。オーディション生活を長く続けてきたので、なによりもコンスタントにお仕事をいただけているということが本当に嬉しく、私という存在を知ってもらえていることが嬉しい。次の仕事があるということは当たり前のことではないと知っているので、『みんな!私を視界に入れてくれてありがとね~!』という感謝しかない」と破顔する。

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 作家・桜木紫乃による直木賞受賞作を映画化した『ホテルローヤル』では、久々の女子高生姿を披露。「子役時代に『制服姿の君しか想像できない。大人の役はきっと来ない』と言われたことがコンプレックスで、ずっと制服を遠ざけていました。でも久々に袖を通してみたら感慨がありました。実年齢は20代後半ですが、童顔なのでギリOKかな?と思った」と嬉しそう。

 撮影中は走馬灯すら巡ったという。「ちょっと大げさかもしれませんが、『これで制服も見納めだろう』と思ったら走馬灯が…。自分が女子高生を表現できる最後の作品であり、この作品で締めくくるのは一番綺麗だと思った。撮影場所も北海道という地方ロケだったので『イエーイ!』みたいにテンションが上がりました。ただ現役時代に比べて、女子高生とは?と考えて過去をなぞる時間が多かったです」と制服卒業を実感。

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 仕事量もメンタル面も、それだけの変化があっても「手癖」というエゴサ趣味は変わらず。「ケータイを触ったらTwitterでエゴサ。数分しか時間が経っていなくて検索結果も変わらないとわかっているのに暇さえあれば…。中毒の領域かもしれません」と自省する。中には傷つくような心無い言葉の書き込みもある。「ブスだとかつまらないだとか書かれていることもありますが、それを目にしても『そうですか…』くらいにしか感じない。小学校からエゴサデビューしていると、もはや悟りの境地です」と我関せず。

 それもそのはず、暗い感情に対峙した時に湧き上がる思いは『私を視界に入れてくれてありがとね~!』だからだ。どんな意見でもモチベーションのガソリンにする。「ポジティブな感想に対しては、ものすごく嬉しい感情がありますが、嫌な言葉での書き込みに対しては、痛みでいったら予防注射のチクリ程度しか感じません。ただどんな反応であれ、私が視界に入ったのならばこっちのもんです。それが原動力になる」。中毒と自嘲しつつも実は依存せず。無駄な感情に引っ張られることなくSNSと上手く付き合っている。

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テキスト:石井隼人

写真:You Ishii 

ヘアメイク:AIKO

スタイリスト:吉田あかね

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