“カリスマ”トランプがいなくなったら共和党内は股裂き状態に? 米大統領選後も待ち受ける“分断の袋小路”
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 佳境を迎える、アメリカ大統領選挙。バイデン氏の勝利が目前に迫っているが、仮にトランプ大統領がホワイトハウスを去った場合、その後はどうなっていくのか。

【映像】両候補の支持者が一触即発の状態に

 ひとつの懸念が、混乱の先に待ち受ける分断だ。カリフォルニア州ロサンゼルスでは、どちらが勝っても暴動を警戒し、窓などを補強して臨時休業する店舗も。激戦のペンシルベニア州では、バイデン支持者とトランプ支持者が一触即発の状態に。大統領選後のアメリカはどうなるのか。

 そもそも、トランプ大統領により分断は進んだのか。これまで、メキシコとの国境に壁を建設したり、不法移民の徹底した取り締まり、白人至上主義を訴える動画のTwitterでの拡散、医療保険制度の見直し(貧困層が多い黒人やヒスパニックに大きな打撃)などを行ってきた。

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 ノーステキサス大学准教授の前田耕氏は「分断は大変な社会問題だ」とした上で、以前からの問題だと指摘する。

 「トランプ大統領になる以前からの問題。“分断”“分極化”という言葉をよく使うが、民主党主義者と共和党主義者、また民主党と共和党がものすごく離れてきている。何十年も昔だと『2大政党は大して変わりないじゃないか』と言われていたが、それが嘘みたいだ。“Affective polarization”、私は感情的分極化と訳しているが、政策などの対立以前に、民主党支持者と共和党支持者が感情的に“あの人たちは信じられない”“あの人たちは許せない”となってしまっている。長期的な傾向だが、トランプ大統領になってからさらに深まったとも言われていて、前は仲良かった親戚なのにある時政治の話になって大げんかして以来、会わないようにしているという話も近くで聞く」

 一方、早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏は、「問題は基本的には選挙の技術の発達だ」との見方を示す。

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 「選挙のマーケティングをどんどん細かくやっていったら2つに分かれたということだと思う。それもSNSなどが影響している。ただ、トランプ大統領からスタートしたというより、本格的になったのはオバマ時代だ。それまでは民主党側も共和党側も、それなりに相手と話せる中道派という人たちがいた。先にその中道派の数が少なくなり先鋭化していったのはオバマさんの民主党の方で、共和党はトランプさんが出てくるまでは中道派が結構いた。民主党側からそういったことが始まって共和党側もそうなったので、激しさが増したように見えるということだと思う」

 著書に『ルポ 百田尚樹現象~愛国ポピュリズムの現在地~』があるノンフィクションライターの石戸諭氏は、「百田尚樹ファンとトランプ支持者の共通点」を次のようにあげる。

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 「“ああいう人たちはファクトチェックをしても響かないダメな人たちなんだ”“知性がない人たちなんだ”ということを思いがちだが、全然そんなことはない。アメリカの白人ナショナリズムについて本を書かれた慶応大SFCの渡辺靖さんとも話をしたが、トランプさんの支持者にしても、白人ナショナリストと言われる人たちにしても、百田さんのファンを僕が取材している限りでも非常に教養度が高い。一方で、ネットではすごく極端な発言をするというところも共通点として挙げられる。これがなぜ起きるのかというと、特にトランプ支持者は顕著だが、やはり科学的な正しさや政策の正しさの論争で決着をするのではなくて、トランプさんの立ち振る舞いが全て。既得権益にとにかく立ち向かっているんだ、インテリに囚われたアメリカを取り戻そうとしているんだというようなことが響く人たちが増えてきているのではないか。前田さんは分極化、特に感情的分極化という概念を話されていたが、45%ぐらい支持者がいるということで、共和党もなかなか元には戻れないのではないかということも懸念されている」

 石戸氏の指摘について、前田氏は「共和党のこの先の路線は非常に重要だと思う。トランプ大統領はそもそも党内の異端だった。4年前、『この人は一体何なんだ』という目で見られていたのが、選挙で勝ってみたらあれよあれよと。やはり政治家は選挙で勝つ方を選ぶので、トランプさんが国民にいいアピールをするとなるともうトランプ寄りになって、共和党がトランプ一色になってきた。しかし、そのカリスマがいなくなったらどうなるかは難しい問題だ。きっとトランプ路線の後継者になろうとする人が出てくると思う。でもそうではない立ち位置を目指す人も出てきて、党が一枚岩ではないから股裂き状態が起きる可能性が十分ある」と分析した。

 大統領選と一緒に行われているのが連邦議会選挙だ。このまま大統領がバイデン氏になったとして、上院が共和党、下院が民主党というねじれに陥る可能性があるが、どのような影響をもたらすのか。

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 渡瀬氏は「民主党は今47(議席)だが、まだ議席が決まっていないところを踏まえるとマックス50までいく可能性がある。最終的に50対50になると副大統領が裁定投票をするので、事実上民主党が過半数を持っていることになる。さらに、民主党がちょっと少ない49だったとして、共和党の中には“名ばかり共和党員”という上院議員たちがいる。一応共和党に所属しているが、本当に重要な法案、例えばこの間の最高裁判所の判事の承認などになると裏切る。そういう人たちが少なく見ても2人いるので、意外と重要な局面になったらバイデンさんと共和党の上院は協力をする可能性があると思う。特にいま共和党のトップのミッチ・マコーネルさんは寝業師と言われている人で、民主党の人たちとも裏で手を結んで話を進めようという人だ。このねじれというのは、プロレスとしては表面上揉めるかもしれないが、裏では手を結ぶ可能性が高いと思う」とした。

 トランプ大統領は劣勢ではあるが、半数近い人たちが支持している。仮にトランプ氏が負けた場合、この人たちはどうなっていくのか。

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 前田氏は「私はある意味、悲観的。分断、分極化というのは長期的な現象で、トランプさんの時代に深まったとはいえ元々そうだった。バイデンさんは元々上院議員であった時に、民主党と共和党の合意を取り持って政策を進めるということを長くやってきた人。彼もその実績を前面に出して自分だったら癒しができると言うが、彼がそうできていた時代は今ほど分断が進んでいなかった。今は社会状況が違うので、実際にできるかどうかお手並み拝見だ」とする。

 渡瀬氏は「どんどん選挙に対するお金も増えているし、それで使えるマーケティングのお金も増えているので、共和党も民主党も原則“分断させたい”。これは止まることがないというのが1つだ。その中で、ではどうすれば分断を克服できるのか。できるだけ連邦政府、中央政府がやることを減らして、州ごとにやれることを増やしていけばいい。例えば大統領になったバイデンさんが、共和党が強い州の人に『こうしてください』と言うのはちょっとおかしな話だ。州ごとにやれることを増やしていって、バイデンさんがやれることを少なくするというのが、分断を解消するのにいいことかなと思う」との考えを述べた。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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